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海月
─ねぇ知ってる?海月の話─
「海月?」
俺の母さんは海月の話に詳しかったんだ。
「海月はね、人間に優しいのよ」
「でも、海月は人じゃないんでしょ?」
「そーね、でも貴方が大きくなった時わかるわよ。きっと」
「大きくなったら?」
「そうよ」
母さんは幼い頃海月にあった事があるんだ
(嘘に決まっているのに)
でも、俺の中で信じている自分がいる。なぜだろう…?
「母さん!!!!!」
母さんは病気で倒れてしまった…
「母さん、俺…」
「司、あのね言わなきゃいけない事があるの」
「なんだ…母さん」
「海月さんの話をしたでしょ?」
「うん…」
「海月さんはね、人のせいで海の中に逃げているの」
「なんで…?」
「人が海月さんを売ろうとするの」
「そ、そんな…」
「司、海月さんを助けてあげて…」
「母さん…」
それから数日経った。母さんは目をつぶったまま目を開けない。母さんは遠くに行ってしまった。
あれから数年後
俺はある夢に悩まされていた。それはある男の子が俺を呼んで助けを求めるという悪夢みたいな夢だ。俺はその夢がなんだかおかしいと気づいた。男の子は怪我を負って日に日に酷くなっていく。なんなんだ?男の子顔が泣き顔に変わっていく。助けて助けてと連呼するその途中で俺は夢から目覚める。たまに聴こえる海の音俺は海へ行くことにした。
海はなんて綺麗だろう。綺麗な月だ。
数分海を見つめて、家に帰ろうとした。
─助けて─
聞き慣れた声が聞こえた。
俺は辺りを見渡した。
─ここだよ─
海を見た。
そこには男の子がいた。まるで月のように綺麗な瞳を輝かせて
「誰だ?」と俺が男の子に問いかけた。
「僕はね、海月なんだ」
海月…母さんが言ってたな…
「なぜ俺の夢に出てくる」
「…」
「僕はね、助けて欲しいだけなんだ」
「誰から?」
「人間から」
「なぜだ?」
「僕を見て、売ろうとしてくる人間が増えてきたんだ。」
「?」
「じゃあなぜ俺の目の前に出てきた?」
「君はそんな事をする人じゃないと思ったんだ。」
「助けてくれないのかい?」
どうすれば良いだろうか、母さんは海月を助けてと言ったが、俺は何か出来るともわからない。
「すまんが無理だな」
「そっか…」
海月は悲しそうな顔をしてたよ。
数日後
俺は珍しく新聞を見た。それは海月が釣れたと書かれた新聞だった。釣られた現場を見に行こうと思った。もしかしたら俺に助けを求めた海月じゃないかと、胸が痛くなった。
海に着いた
野次馬共が沢山いた。釣り上げた奴がうざったい顔で俺らを見下ろす。
釣られた海月は宙吊りになっていた。
月のように綺麗な瞳。その瞳には光なんてなかった。血まみれの顔、体。最後まで泣いていたような顔。
あの時俺に助けを求めた海月だった。
俺は、なんて事をしてしまったのだろう。俺があの時助けていれば。もう後戻りは出来ない。時が戻れば良いのにな。
「俺はなにも出来なかった…」
BADEND「何も出来なかった」