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※創作
※病み系
※自傷行為・自殺表現有
苦手な方は見ないで
『なぜこんなことが出来ないんだ』
『昨日渡された書類のデータ、別の年のだったわよ 』
『先輩って毎回ノルマ達成出来てませんよね笑 』
『これ以上私の仕事を増やさないでちょうだい!』
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コンビニからの帰り。手に持った袋の中にはカップ麺が数個。今にも手紙が溢れ出しそうな郵便受けを開く。
「ガス代請求…セールス…」
中のモノをペラペラとめくり、仕分ける。
その中にやけに綺麗な封筒が1枚、混ざっていた。
「結婚式のご招待…結婚したんだあの人」
近頃、同級生から結婚式の招待状が絶えない。
それもそのはずだ私も気づけばアラサー。
周りの人間は一種の幸せというものを手にする頃だろう。
それだというのに私は今にも廃人になりそうなただの仕事人間だ。出会いの「で」の字も見えそうにない。
仕事で実績を残せば私も少しは幸せというものを感じられるのだろうか。
しかし、現実はそう上手くはいかない。
毎日上司に怒鳴られ、同期や後輩には罵倒され、謝ってばかりだ。
なぜこんなのが生きているのだろうと何度も思った。会社を辞めようともした。しかしその度に『お前は逃げるのか?』と言われて退職願を受け入れてはくれない。泣くことも出来ない。
苦しみを抱えながら死んだような毎日を生きている。
家に入り、手に持っていた袋とカバンを置く。上着を脱ぎ、スカートも脱ぎ捨て、シャツの袖をめくる。椅子に座り、即座に引き出しからカッターを取り出す。
左手に持ち、右手首を一度切りつけた。
傷口から赤く鮮やかの色をした液体が流れ出てくる。
少しだけ痛みが伴うが、心が落ち着くような気がした。
シャツにつかないようにと気を配りながらもう一度切りつける。
先程より少し深く切ったようだ。
これ以上切りつければ明日の仕事に支障が出るかもしれないが正直、今の私にはどうでもよかった。
気がつくと朝になっていた。あのまま眠っていたようだ。
手首を見ると傷はいくつもあるがもう血は止まっていた。
時刻は6時47分。
風呂も入っていなければ、食事も取っていない。まぁ、食欲など全くないのでこのまま何も食べずに死んでもいいのだけど…。
ヴヴッ
スマホの画面がついた。覗くと上司からのメールだ。
すぐに返信しないとまた怒鳴られるためすぐにメールの内容を読む。
『この資料のまとめ、今日中にやっておけ』
またか。まだ昨日の仕事も残っているというのに。他の人は大抵複数人で仕事をこなしている。1人あたりの仕事量は私ほどではない。上司からの過度な仕事。さらには同期や後輩からは仕事の押し付け。私が押し付けてやりたいほどだ。
「…頭が痛い」
こんな生活うんざりだ。早く人生を終わらせたい。
『承知致しました』
送信ボタンを押す。嫌なのに。嫌なのに嫌なのに。私はこうやって生きていくしかないんだ。
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「また取引先から苦情が来たじゃないか!いつも君が担当したところからは苦情が来る!いい加減にしろ!他の人は出来ているだろ!」
「申し訳ございません」
「今すぐ直接謝ってこい!俺は忙しいんだ!1人で行け!」
「はい」
私が悪い。仕事の出来ない私が悪いんだ。すぐに謝りに行かないと。荷物を持ち、会社を出る。
「大変申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる。
「今後はこのようなことがないよう、細心の注意を払います。なのでどうか契約は…」
「…分かりました。今回は見逃します。その代わり、今後は気をつけてくださいね」
「ありがとうございます」
何とか乗りきった。しかし、次同じことをしてはいけない。更に荷が重くなった。とにかくすぐに会社に戻らなければ。
「先輩♪お先失礼しま〜す♪笑」
「お疲れ様でした」
「先輩も早く仕事終わるといいですね笑」
今日も残業だ。最後に定時に帰れたのなんかいつのことだろう。また頭が痛くなってきた。外の風に当たろう。私は屋上に上がることにした。
風が少し肌寒く感じる。星がほとんど見えない。見えるのは辺り一面都会の景色だ。こんなのを見ていると自分は世界にとってとてもちっぽけでいてもいなくても同じように感じる。
「ここから飛び降りれば死ねるかな。死ねなくても暫くは仕事をしなくて済むか」
私は柵によじ登り下を見下ろした。
やり残したことなんてない。したいこともない。大好きだった父も母もいない。これで楽になれる。
「お父さん、お母さん。今、逢いに行くよ」
そうして私は14階の屋上から飛び降りた。