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最終章 「きみが笑うなら、それでいい」
時計の針は、もう動いていなかった。
窓もカーテンも閉め切られた部屋の中。白くて綺麗で、何もない──まるで病室のような、檻のような場所。
けれど、ないこは幸せだった。
不思議なくらい、不安も悲しみもなかった。
「……いふ、喉、かわいた……」
「はいはい、りんごジュースだよ。冷たいやつ」
いふが柔らかく笑って差し出す。
その笑顔を見て、ないこも笑う。
何度も、何度も、繰り返してきた、これがふたりの“日常”。
「まろってさ……すごいね、なんでも知ってるし、優しいし」
「ありがとう。だって、きみのことだけを見てきたから。きみのために、時間も記憶も、世界だって歪めてきたんだよ」
「へえ……」
ないこはその言葉の意味を、理解していない。いや──
理解しようとしないように、上書きされてきたのだ。
(だって、そのほうが、楽だったから)
数日前(最後の記憶)
「もういやだ……こんなの、ぜんぶおかしい……まろ、おかしいよ……!」
叫ぶないこに、いふは泣いていた。
初めて見せた、本物の涙だった。
「そうだよ、俺はおかしいんだよ。だって、好きすぎて、きみを“自由”にできなかった」
「だったら……もう、おれのこと、忘れて……」
「──やだ」
いふはないこを抱きしめて、耳元で囁いた。
「じゃあ、いっそ、きみが全部忘れて。俺のことだけ残して。他は、何もいらないんだ」
その瞬間、ないこは自分の記憶のなかで、
家族も友達も、世界の名前すらも失った。
けれど──最後に残ったのは、
「いふ」
たった一人の名前だけだった。
現在(地獄のような天国)
ないこは毎日、笑っている。
たまに体がだるくなるのは、薬のせいかもしれない。
だけど、それを気にする理由なんて、もう何もなかった。
「……まろ」
「ん?」
「だいすき」
「……うん、俺も。何百回でも言うよ。何度でもきみを壊して、もう一度恋に落とさせてあげる」
外の世界は遠い。名前も知らない。
でも、ここにいふがいて、
いふが笑ってくれるなら──
それだけで、じゅうぶんだった。
THE END
(また、思い出すたび、上書きされる。
それでも、何度でも恋をする)
一応完結?おつももー!