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第三話:湯気の向こうの一杯
会議が終わった瞬間、修は無言で立ち上がった。
歩くのが早い。
ネクタイを少し緩めている。
眉間にしわ。
(あ、完全にお腹空いてる)
「田中」
「は、はい」
「ラーメン」
「即決ですね」
「今すぐ」
⸻
暖簾をくぐった瞬間――
豚骨と醤油の匂いが、ぶわっと来た。
修、足を止める。
「……」
一拍。
「……いい」
彩(匂いで回復してる)
カウンターに並んで座る。
「醤油。麺硬め。チャーシュー増し」
少しだけ声が柔らかい。
彩も同じものを頼む。
⸻
ほどなくして、ラーメンが置かれる。
どん、と重量感がある音がした。
彩、即実況
「スープ、なみなみです」
丼の縁ギリギリの琥珀色。
表面に背脂がきらきら浮いている。
「チャーシュー、分厚い……三枚も」
照りがあって、テカッとしてる。
「湯気すごいです、近づくだけで熱い」
修、じっと見ている。
「……強いな」
レンゲでスープ。
ひと口。
「…………」
一瞬、目を閉じる。
「……染みる」
(あ、可愛い)
続けて麺。
ずずっ。
「麺、いい」
もう一口。
「スープ拾いすぎず、」
さらに一口。
「……ちょうどいい」
彩も負けじと実況。
「一口目から濃いのに、くどくないです!」
「背脂、甘い!」
「麺もちっとしてて、噛む前から美味しい!」
修はチャーシューを箸で持ち上げる。
少し揺れる。
修「……柔らかい」
噛む。
「……肉汁」
思わず、もう一口。
彩「修さん、完全に黙食モードですね」
修「今、忙しい」
(ラーメンと会話してる)
レンゲ→麺→レンゲ。
動きが止まらない。
修、ふと顔を上げて言う。
「……腹減ってると、余計うまいな」
彩「ですよね」
修「……助かる」
彩(助かる、出た)
⸻
丼の底が見える。
修、最後にスープを一気。
「……完璧」
箸を置いて、少し満足そう。
さっきまでの不機嫌、完全消滅。
彩もほぼ完飲。
「飲んじゃいました……」
「今日はいい」
店を出ると、外の空気が少し涼しい。
修は歩きながら、ぽつり。
「……また来るか」
「はい!」
修はラーメン一杯で、すっかりご満悦。
今日も、ほのぼの昼休み。
コメント
2件
え、ラーメンの表現のしかた?つていうの? めっちゃ天才すぎるだろ!!!美味しそう…
