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「花」
あるところに1輪の花がありました。
そこに1人の老婆が毎日毎日水やりに来ました
「もっと水をかけなさい!」
と言わんばかりに茎をゆさゆさと揺らしていました。おばあさんはにこりと優しく微笑み水を隅々まで行き渡しました
花は満足そうに茎をまた揺らしました
また来る日また来る日と老婆は水を持ってやってきました。
ある日のこと大雨が振りました。
風はビュービューと吹き
雨はザーザー降り
まるで嵐のようでした。
花は折れそうになりながらも必死に耐えていました。
雨の中また老婆がやって来ました。
傘を持ち、曲がった腰でそそくさと花の元へやってきて、ポキッとなる膝の関節を抑えながらそこにあった石で傘を花に被せました。
花は傘の中で花弁から滴る雫をぽつりと落としていました
おばあさんは「よっこらせ」と思い体を持ち上げるように嵐の中早々に去っていきました。
嵐が過ぎ去り1夜があけました。
周りはぽちゃんと雫が落ちる音
雨の匂い、 濃ゆい霧 が出ていました
霧の中にまたおばあさんが現れ
傘を閉じました。
おばあさんは優しく微笑みかけました
花は「別にこんなことしなくても余裕よ」と言うように昨夜とは変わって綺麗になった姿を見せました。
何故人っけのないこの場所にただ私に水を授けてくれるのか。
そう花は考えることもなくただ、ふんっと頬を膨らませた傲慢な少女のような態度で毎日水を待っていました。
またいつか、おばあさんが花についた土を払おうとしたとき、
花はびっくりし咄嗟に棘でおばあさんの手をチクリと刺してしまいました。
花は「びっくりしたじゃない。急に触らないで」と慌てながら言っている様子でした。
おばあさんは手を抑えながら微笑みかけました。
ここ最近
花はおばあさんが来ていないことに焦っていました。なぜなら食料となる水が来ないからです
雨も降らないしおばあさんも来ないので花は焦っていました。
でも花には思い当たる節がありました
そう、あの時の棘です
「刺くらいで怒るなんて…気の短いやつ」
花は苛立ってきて考えるのをやめたがっていましたがそうはいきませんでした。
花が腹を立てている中久しぶりにおばあさんの姿が現れました
花は呆れたようにため息をついたようでした。
そして水を待っているかのように急かしているようでもありました。
おばあさんはごめんねと言いながらたっぷり水をかけてあげました。
花は「仕方ないわね」とどこか上から目線に言うような様子でした。
おばあさんがそっと座り込み言いました。
「もうこれで最後…」
花は茎をピンッとさせました
「どうして?なんで?」
「もしかしてまだ怒ってる?」
花はもう水が貰えないと焦り
顔を覗き込むかのように花弁を揺らしました
「ねえ謝るから」とただをこねる子供のようでした。
おばあさんは目に涙を溜めながらそっと微笑みました。
その表情を見た花は少しだけ違和感がありました
そしておばあさんは言いました
「あなたのお陰でいい最後を迎えられるわ。」
花はドキッとしました。
もうこの人の命が終わってしまうことが分かりました。
花は必死に耳を塞ぎたかった様子でした
おばあさんが過ぎ去るのを見つめることしか出来ませんでした。
明日になりました
花はまた水を待っていました
昨日の話は全部夢だと思い込みたかったんです
だけど待っても待ってもおばさんは来ません。
花は涙を流しました
花弁から落ちる雨はもう涙そのものです
花はきっとこの雨が強まればおばさんはまた、傘を届けにやってくる。そう願っていました。
だけど雨は強まることなく過ぎ去りました。
花は声にならない叫びを上げているようでした
この時感じたのです。
水をくれるだけじゃない。
一人ぼっちの私に幸せもくれたんだと
楽しかったんです。ただ居てくれるだけでよかった
また1ヶ月後
花は茶色く萎れていました。
だけど茎はピンッと伸びていました
「生まれ変われるならおばあさんとまた出会いたい」と強く願いました。
数年後
新たな2つの命が宿りました
オレンジ色をした薔薇
そしてお腹の中には「早く出せ!」と言わんばかりにお腹の内側から蹴る女の子がいました。
ー終わりー