テラーノベル
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ご覧いただきありがとうございます。
・ご本人様とは一切関係ありません。
・読了後の苦情は受け付けません。
・当作品はru+mn(付き合っていない)になります。自衛をよろしくお願いします。
・🌈GTA警察軸の話です。CP要素は薄め。他に同じ警察だった人とモブギャングが出ます。
・Xに投稿している短文になります。
X(@0_____ray__0)
倉庫の扉が閉ざされたのが分かった。ずっと閉じていた目を開いて、周囲を確認する。人はいない。盗聴器の類も探せる範囲には無い。まぁ、これに関してはあると思っていた方がいいだろうが。この街に来るに当たって、参加者の中には種族的に有利になってしまう可能性が危惧された。そのため、神によって全員が同じ基準になるように能力が調整されているこの世界では、俺に白狼としての夜目や戦闘能力は無い。マナのデバイスも、ネックレスとしての機能しか果たさないのだと話していたのは記憶に新しい。
俺とマナは今、鉄の床に座らされ、手首を柱に繋ぐ形で拘束されていた。光はほぼ無く、外の音も遠い。はっきり言って、何か情報を得るのは難しそうだった。
「…マナ」
「大丈夫?」
「…それはこっちの台詞だっての」
「はは。じゃ、まだお互いに大丈夫やな」
同じ柱に繋がれているから、マナと俺の距離自体はかなり近い。小声でも充分に聞き取れるのは助かるな。
「……すまん」
「なんで謝るん」
「俺がもう少し警戒していれば…」
謝らないと、と思った。今回こうなった原因は通報を受けて俺が「いつも通り」に事件現場に入ったから。俺が警戒を怠ったせいで、マナも巻き込んで暴走したロスサントス現地の住民に誘拐されてしまった。スタンガンで気絶させられたからダウン通知も届いていないだろう。
「いや、ロウは悪くないよ。…悪いのは、こんな事をする奴らやから」
「…まぁ、それはそうだな」
「とにかく、どうやってここから脱出するかを考えな」
「……って言っても、今の俺らに出来ることってあるか?」
「…機が訪れることを願う、とか」
「ふっ…確かにそうだな」
マナと体が触れる。状況は良いとは決して言えないが、マナが隣にいる。警察の仲間も、心強い人たちばかりだ。変に動いても、相手を刺激してこちらがより消耗させられるだけだろう。今は体力温存が優先、必要になった時に最大限動けるようにしておくべきだろう。
「…俺が隣にいるから、マナ」
「うん、俺もロウの隣から離れへんから」
どのくらい時間が経っただろう。1時間は経っていないだろうが、暗く光の無い場所では時間感覚も狂ってきていた。
「…来た」
マナに短く告げる。倉庫の鍵だろうか、何かしらがガチャガチャと大きな金属音を鳴らしている。少しして音が落ち着けば、倉庫の扉が開かれた。そして、倉庫の照明が一気に点灯する。目が痛むほどの白。その中を数人の男たちが、ゆっくりと近付いてくる。
「警察様も随分と大人しくなったもんだ」
嘲笑うような声。その手には警察の印が入った銃が握られている。他の男の中にはテーザー銃を握っている奴もいる。どちらも俺たちから奪ったものなのだろう。
「何が目的だ?」
「お前らを痛め付けるのを楽しんだっていいし…」
足を撃たれる。痛みで軽く顔が歪む。マナも同じように足を撃たれたようだ。俺とマナが携帯している銃にはサプレッサーが付いていた。音は倉庫内に留まり外には届かない。この街の仕組み通りだったら発報通知も届いていないだろう。
「身代金を要求するのも悪くない」
今度はテーザー銃が撃ち込まれる。身体が痺れて、思考が鈍る。一方的に何も出来ない状況だ。けれど、諦める必要はない。
「はよ決めた方がええよ。…警察は必ず来る」
「ああ。お前らの身の為にも忠告しておいてやるよ」
この中のトップであろう男が悦に浸ったような笑いを浮かべた。
「GPSも外して無線も取り上げ、何も持っていないお前らを助けに?ちょうど大型犯罪も起きているというのに、来るわけがないだろう」
攻撃されるのは、悪いだけではない。少なくとも、何も起きないままここに幽閉され続けるよりは。
2発、3発と身体に銃弾が撃ち込まれる。出血して、内側からも体力が削られていく感覚。呼吸をしようとしても、上手く息を吸えなくなってきた。
「……っ」
声を出そうとして、失敗した。喉が震えるだけで、音にならない。
次に撃ち込まれたのはテーザーだった。電流が皮膚を貫いた瞬間、身体が強張り、次の瞬間には力が抜け落ちる。自分の体重を支えていた感覚が、すっと消えた。
手首と柱を繋いでいる鎖が音を立てる。柱にぐったりと項垂れた姿は、きっとさっきまでの姿と大違いだろう。
指先が、動かない。
足も、腕も、首も。命令を出しているのに、身体が一切応えない。
視界はまだはっきりしている。照明の白さも、男たちの靴の汚れも、やけに鮮明だ。耳も聞こえている。笑い声も、金属音も、全部。
隣をしっかりと見ることはできないが、肩にマナが触れている感覚がある。マナもきっと、“ダウン”させられた。
「おいおい、もう終わりか?警察さんよぉ。…オイ、コイツらの写真を撮れ。警察に条件を突き付けるんだ」
男の命令する声が聞こえる。ほんの少しすれば、シャッターを切る音が聞こえてきた。
男に乱暴に顎を掴まれる。顔を写す気だろうか。思いっきり睨み付けてやれば、男たちは少し驚いた顔をした。
「な、…まだ気絶してねぇのか」
鳩尾に蹴りを入れられる。気絶してたと思ったのか。ちゃんと確認しないから間抜けな顔を晒すことになるんだ。
俺たちを捕え、ここに幽閉するまでの手順はよかった。だが、詰めが甘い。
口角が、少し上がった気がした。
倉庫の中は、男たちの声だけが響いていた。
銃を構えていた男たちも、今は銃から手を離し身代金の相談をしている。
「ハッ、あれだけイキってても結局はこのザマだ。思ったより手応えがなくて情けない警察だったなぁ」
その後、どちらにも意識が残っていたことを確認した男たちは更に蹴りを入れて、気絶を確認した。
男はスマホを取り出し、先ほど撮った写真を眺める。血の跡。拘束具。項垂れた警察官。 男は悦に浸る。圧倒的有利を前に、笑みを隠さずにはいられなかった。
「さぁ、お前ら欲しいものは?コイツらを使って奪い取った金で買ってやる」
「おお!俺、あと1億で車が買えるんです!」
立て続けに幾ら欲しい!なんて声が飛び出していく。欲に塗れた会話は、どんどんと盛り上がっていった。
「ギャングの資金にも回すとして…20億くらいか」
「2人まとめてにします?それとも、10億ずつにします?」
構成員のひとりが思い出したように告げた。
「そういやコイツら、警察の中でも同期で仲も良いそうで。噂になってました。連携して動かれると厄介だって」
「ほう?ならもう要求額をもう少し釣り上げたっていいな」
リーダーの男が壁に背を預け、余裕たっぷりに言った。
「場所はどうします?ここに呼びつけますか?」
「いや、場所は変えよう。ここを拉致してくる場所にしている事はあまり知られたかねぇ。GPSも無線も全部外してんだ。移動させる猶予くらいあるだろ」
「確かに。大型犯罪も起きてるって話ですもんね」
誰かが倉庫の奥をちらりと見た。 項垂れた二人は、相変わらず微動だにしない。
「……なぁ、あの狼っぽい方」
「あ?」
「最後に睨んできたよな」
「ダウンしてても、意識はあるらしいからな」
「まぁ、睨めるのも今のうちだ」 「交渉が始まったら、もっと大人しくなるさ」
構成員同士の小さな会話は、誰も気に留めなかった。リーダーの男がスマホをポケットにしまい、立ち上がる。
「よし、文章考えるぞ。
“警察二名を確保した。要求額は――”」
その言葉に、誰も異を唱えなかった。
男たちの話はどんどん盛り上がっていく。要求額も釣り上がり、欲望に塗れていく。
カラン、と何かが転がり込んだ音がした。
「ん?なんだ、誰か何か落としたか?」
「いや…」「落としては…」
困惑した表情を浮かべている。音の発生源は倉庫の入り口。そして…
ドカン!!!と爆発音が響いた。
「っ!?」
「お前ら!銃を持て!」
男たちは慌てて銃を構える。おかしい、この場所は絶対にバレないはずなのに。油断しきり悦に入り切っていた状況からの変化に、頭の理解が遅れた。
その隙を突くかのように、爆発の衝撃で歪んだ倉庫の扉を突き破るように装甲車が飛び込んできた。
「撃て!」
装甲車に銃弾の雨を浴びせるも、装甲車は銃弾を通さない。装甲車が遮蔽となり、倉庫の入り口がしっかりと視認できなくなる。
装甲車の影から、赤髪の男と雪だるまの頭をつけた男が飛び出してきた。それに続くように、複数の警察が流れ込んでくる。全員、警察服に身を包んでいる。
「警察だ!ロウとマナの事は返してもらう!」
2人の男が先頭を切り、的確に頭を撃ち抜いて現場を無力化させていく。
結果、1分もしないうちに現場は警察によって制圧された。
「小柳!マナ!」
意識が再浮上する。視界に入ってきたのは、見慣れたオレンジの髪。
「…う、さみ」
「小柳!…もう大丈夫だからな」
「マナ、は…」
「マナは魁星くんが起こしてくれる。…ほら」
ほら、とマナの方を向かせてくれた。認識すれば「マナくん!」と呼ぶ魁星くんの声が耳に入ってきた。…よかった。
「小柳」
治療に身を預けていると、ロレさんの声がした。隣にはウェンも見える。
「…ロレさん、ウェン」
「話は後でちゃんと聞く。けど、ちゃーんとお叱りは受けろよ」
「もう!!ロウきゅんのバカ!!!」
「…うるせ」
「うるせぇって!…あーもー!ロウもマナも本当にバカ!!!無線にいないなって思ったらまさかこんな事になってるなんて!!!」
「……ちゃんと、来てくれた、だろ」
「そりゃそうでしょ。…ホント、無事でよかった」
ウェンはそれだけ言うと、マナの方に向かって行った。
「あ、マナくん!」
「かい、せい…?」
マナの声がする。小さくて、掠れているが、しっかりと聞こえてきた。マナも意識が戻ったようだ。
「ロウ、は…」
「マナ」
「っ!ロウ!」
「ロウさんも無事だよ、マナくん」
「よか、った…」
マナと目が合う。マナが安心したように笑って、俺も釣られて表情が緩んだのがわかった。
「ゆっくり話すのは後ね。2人とも、まだ体にダメージは残ってるんだから」
「リトくん、あとは病院で治療しよ」
「そうね」
「ネス、ニキ、一緒に行ってあげて」
そうして俺たちは、無事に救出された。
病院で治療され松葉杖をつけば歩ける状態にはなったものの、状況が状況だったため俺らはせめて、とソファに座らさせられていた。
目の前には、ロレさんとウェンと宇佐美。隣には同じように座らされたマナ。
「ちゃんと来てくれてよかったっす」
「はぁ…お前な…」
ロレさんにため息を吐かれてしまった。なんでだ。ダウン通知で気付いて来てくれてありがとうございました、って意味なのに。
「本当に、2人はここまで傷付かなきゃダメだったのかよ」
リトが言う。確かに、その通りだと思う。俺だって、マナに傷付いてほしくはなかった。
「やけど、俺らあの状況じゃまともに抵抗できへんし。捕まっちゃった時点でああするしかなかったと思うよ」
「知らせる手段無かったしな」
「な。ダウン通知なら行くやろうし場所もわかるし名前も出るし」
「実際、無線にいなくて電話も出なくて不穏な空気なりかけた時のダウン通知はある意味助かったな」
ロレさんの言葉に、ほら、と目で訴える。
「でも、…この街で見てきた中でも1番酷い状態にされてた」
ウェンがボソッと言う。俺たちが傷付くのを仕方ないと判断したのが嫌で、それが1番合理的な判断だったこともきっと気に食わないのだろう。
「この街だからやったことだっての。この街じゃなかったら普通に変身してボコして終わりだわ」
「それはそうだけどさぁ!」
ほら、やっぱり。頭では理解しているけどそれを許したくはないとか、そんな感じだろ。
「…ロウが隣におったから大丈夫やった。1人やったら危なかったかもしれんなぁ」
「マナ…」
「ロウ、あん時も言ったけどロウは悪くない。…けど、これからは一緒にもうちょい注意しよな」
「…だな」
マナと肩が触れる。体温を感じられるのが心地良い。
「とりあえず今日は退勤!万全になるまで出勤しなくていいから。いいな?」
ロレさんが俺とマナに念を押すように言ってくる。
「…あざす、ロレさん」
「ありがとうございます、署長」
倉庫から救出されて数日。
俺とマナは、警察関係者用の共用住宅で療養していた。
白すぎない壁。消毒の匂いもしない。 俺はソファに腰を下ろして足を投げ出し、マナは床に座って背中をソファに預けていた。 テーブルの上には、飲みかけの水と薬。
「落ち着くわ」
「だな。…たまにサイレン音とかするけど」
マナが小さく鼻で笑う。俺ら2人はここでゆっくりとした時を過ごしているけれど、街は変わらずに動き続けている。
窓の外を一瞬だけ見て、マナが視線を戻す。
「…正直さ」
「ん」
「あそこでちゃんとダウンさせてくれてよかったよなって。…回復させられながらやったら、もっとキツかった」 「確かに」
マナに同調する。撃ってもらえるように挑発した部分はあるし。マナは指先で床を軽く叩く。
「いつ来るかわからん助けを、ただ信じ続けるんはしんどい」
「……」
「けど俺らは警察やったから、ちゃんと助けられた」
俺は少し間を置いてから頷いた。
「判断は悪くなかったよな」
「それはそ」
反省していないわけではない。そもそも捕まらなければ、俺たちは変わらず事件対応に向かっていただろうし。
マナが、ちらっと俺を見る。
「ロウが隣で、変に取り乱してなかったのも大きいけど」
「それ、俺の台詞だろ」
「はは」
短い笑い。
すぐに静かになる。
「……次は」
「うん?」
「もうちょい上手くやろうな」
「当たり前や」
マナがそう言って、俺の足元に視線を落とす。
「でも、ロウとなら何があっても大丈夫って俺は思うよ」
「…さんきゅ、マナ」
俺だってマナとなら大丈夫だと思うよ。
わざわざ言ったりはしないが、きっと俺がこう思っていることをマナはわかっている。この信頼が心地良い。
「あ、なんかるべがバカッターしとる」
「え?ちょ、見せて」
マナにスマホを見せてもらって、日常の一部を眺める。コイツらマジバカじゃねぇのwなんて笑いながら、星導と動画内に現れたカゲツを見る。この街に来て警察になってから、こんな風に過ごす時間はそう多くはなかった。きっかけこそいいとは言えないがこんな時間も悪くないと思う。
「復帰したらガチで捕まえようぜ。コイツら」
「ホンマにな」
他愛も無い話をしながら2人で過ごす時間は、長いようであっという間だった。数日もすれば身体は元通りになって、病院で復帰OKが出た。明日からは警察業務に復帰していくことになる。
「ロウ」
本署前、復帰の挨拶をする前だった。無線に入ろうとしてその前にマナに声をかけられて手を止める。
「ん、どした、マナ」
「今日からまた一緒に頑張ろな!」
マナは笑った。眩しいくらいの笑顔だ。俺も釣られて笑う。マナにこの笑顔を向けてもらえることが嬉しい。
「だな」
マナとなら、この警察の仲間たちとなら。俺は頑張れる。仲間たちの為にも、気合いを入れ直さなければ。改めてそう思った。
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