『最果ての島』の制圧に向けた、第一の大掛かりな作戦であった「競食」作戦は成功裏に終わった。
レレー氏族の残党狩りについても、ル・ベリが生き残った戦士を恐怖によって縛り上げたため、彼らに手引きをさせて集落の居残り組を騙し討ちにすることで、当初予定を大幅に繰り上げて遂行することが出来た。
そして俺は、そこでル・ベリに「選別」を任せた。
来たる「9氏族」に対する作戦の囮として活用する分と、今後の”繁殖計画”に用いる分を残して、すべて処分させたのである。元々、亥象に対してこの島初となる「家畜化」計画を実施しようとしていたル・ベリであり、魔人族としての小醜鬼への種族的な憎悪が合わさっていたため、彼は嬉々として走狗蟲達とそれを実行していった。
俺自身も「侵種」として魔人族が混ざった身体になっているため、慣れもあるだろうが、一応は知性のある存在である小醜鬼をそのようにすることに対して、警戒したほど良心の呵責は生じなかった。
――元より、ル・ベリがいなくともそうすることを決意していたし、覚悟していたのだから。
ただ、そこにル・ベリという『ゴブリンを憎悪する者』がいたことで、想定よりはさらに数段、過激な形とはなったが。
それでも、仮にル・ベリがいなかったとしても、「魔人を穢す」存在である小醜鬼達と、ル・ベリとは違う意味であるとはいえ”混じりもの”である俺が友好的に接することができたかは疑わしい。支配した上で、しかし信用はせずに使い潰す、間に走狗蟲達を常に挟んで裏切りを警戒する、という緊張した関係になっていただろう。
その迷宮領主に仕えるという心からの帰依が必要な「従徒化」など、お互いに本能レベルで対立している小醜鬼達には望むべくもないものに違いない。
そこにル・ベリという、信仰心レベルで俺に仕える管理役を得ることができたのは、僥幸であると言えた。
だが、俺の命令で奪う命は奪う命。
ル・ベリと走狗蟲達が極めて効率的に2氏族の生き残りの不要な個体を処分していき、そして他の生き残り達に命じて埋めさせていく様子を、俺は瞳に焼き付けたのだった。
「このような不浄で不潔なものを、御方様のご覧にいただくわけには……」
などとル・ベリは恐縮していたが、こればかりは俺の意地のようなものだった。
死んでいったのは小醜鬼だけではなかったからだ。
最終的には走狗蟲は5体、戦死していた。
特にバズ・レレーの抵抗と反撃で3体を失っており、これに対してはもう少し被害は減らせただろう。”名付き”に被害が出なかったとはいえ、俺の目的のために捧げられた命から目を逸らす、という感性は持ち合わせていない。
技能【強靭なる精神】がむしろ勝手に発動しないよう、気を鎮めることに集中しつつ、俺は戦後処理の空気の中で、周囲を巻き込む決断とその結果を受け止めることの意味について考えていたのだった。
かつての自分に足りなかったものが、こういうものだったのかもしれない。
そんな思いに囚われていたからだった。
「次はもう少し、情報収集を強化しよう。”称号持ち”は、運が悪ければ俺の”名付き”達にも被害を与えうる。お前の言う通りこいつらは劣等生物だが、お前が考えるほど脆弱というわけでもない。減らせる被害は減らしていかないといけないからな」
「御意のままに……」
最終的に、死んだ小醜鬼は300体に及ぶ。
「選別」を経て生き残った100体を、俺はアルファ達に命じて、俺の迷宮まで連行させていくのだった。道中で労役蟲の一群と合流し、彼らに技能【凝固液】で手足を固めさせてから運んでいくことで『樹冠回廊』も突破させる手はずであった。
そして、ル・ベリと共に先行して鍾乳洞まで戻り、俺はこの一連の作戦で己自身が得た『経験』について、目を閉じて振り返り始めた。
***
迷宮領主とは【闇世】を”防衛”するために、【人世】との間の「世界の罅」、あるいは「異界の裂け目」と呼ばれる場所に配置された迷宮核に選ばれて、なる存在である。
その役割として期待されることは、かつての神々の争いを今なお引きずり、【人世】から侵入してくる存在を阻んで【闇世】を護ること。
素朴に俺は、わざわざ「世界を分割」する力があるのであれば、【人世】との間の道を残したのは何故だろうかと考えた。
魔人族の種族的特徴である【異形】が一つの答えでは、ある。【異形】の”生体器官”としての役割は【人世】から流れ込む「魔素」と「命素」を、元【人世】の存在である魔人族が体内に取り込むための吸入器官として、だ。なお、俺の場合は『種族:迷宮領主』として迷宮核が心臓に融合しており、これが【異形】の代わりに魔素と命素の体内への循環器官として働いている。
爵位権限不足で、今の俺には多くの情報は与えられていない。
だが、この辺り、闇世Wikiの歴史知識からある程度推察することができる部分はある。
もし【黒き神】とその従属神からなる「九大神」が、対立する【亜々白々なる輝きの御子】とその従属神からなる「八柱神」と戦うことだけを考えれば、わざわざ”道”を残す必要などなかったのではないか? という疑問があった。
“裂け目”を作る力があるならその逆の力もあるはずだ。完全に世界を閉じて、九大神の権能だけで再現できる自然環境の中で生きる全く新しい種族を生み出して、満を持してから攻め入れば良い。
しかし【黒き神】はそうしなかった。
自らに付き従う”人族”を導いて避難させ、限界があるにしても、彼らが自然法則や自然環境が【人世】と比べて異常な状態にある【闇世】で生きていくことができるよう、心を砕いている。巨大な種族的恩寵を与え、強大な守護者も配置している。
そう考えた時、”裂け目”はむしろ無くてはならないことがうかがえる。
シースーアに生きる生物にとって、生きていく上で不可欠なエネルギーとしての魔素と命素を【人世】から吸入しなければ【闇世】は維持できないか、ここに住む元【人世】の存在である『ルフェアの血裔』が維持できないのである。
――となれば、少なくとも神々の目的の一つとして、【異形】を得て【人世】からは「魔人」と蔑まされる存在となろうとも、それでも元々は『人族』の一派であった『ルフェアの血裔』を護り導いていこうとする強い意思があることが感じられた。
そこまで考えれば【闇世】で圧倒的に強大な力を与えられた存在としての「迷宮領主」がどんな生き方を求められているか、つまり『種族経験点』の獲得条件を考察するには十分。
[迷宮領主の種族経験点の獲得条件]
その1。迷宮を構築し、その「領域」を広げること。
その2。眷属や従徒を生み出し、指揮すること。
その3。外敵を迎撃すること、特に【人世】からの侵入者を撃退すること。
その4。『ルフェアの血裔』という種族を護り、それに仇なす存在と戦うこと。
その5。【人世】へ侵入し、侵攻して神々の争いに参画すること。
ざっと、このようなものが可能性として挙げられた。
そして今回、俺は「その1」「その2」と、そして「その4」を実現していた――生き残った小醜鬼も、その多くをル・ベリに任せて処分したのは、このためであった。
果たして、小醜鬼2氏族競食作戦の最中とその事後、ル・ベリが処分を続ける間も、俺の脳内には同じ内容を伝えるシステム通知音が幾度も鳴り響いていたのだった。
――位階の上昇を検知――
――位階の上昇を検知――
――位階の上昇を検知――
――・・・――
――・・・――
・・・
・・・
幾度も、幾度も。
結果、俺のステータス画面は、次の通りになっていたのだった。
【基本情報】
名前:オーマ
種族:迷宮領主(人族[異人系]<侵種:ルフェアの血裔>)
職業:※※選択不可※※
爵位:|郷爵《バロン》
位階:15 ← UP!!!
技能点:残り36点
状態:健康
保有魔素:2,400/2,400 ← UP!!!
保有命素:2,400/2,400 ← UP!!!
【技能一覧】~簡易表示
(種族技能)
・情報閲覧(弱):1
・魔素操作:1
・命素操作:1
・眷属維持削減:3
・眷属心話付与:1
・欲望の解放:3
・強靭なる精神:1
(称号技能)
・体内時計:4
・精密計測:1
・言語習得(強):3
・経験点倍化:1
・|幼蟲の創生《クリエイト・ラルヴァ》:1
・|因子の解析《ジーン・アナライズ》:3
・因子の注入:1
【称号】
『|客人《まろうど》』
『エイリアン使い』
『超越精神体』
位階が12点上がり、振ることのできる技能点は残り36点となっていた。
「位階1ごとに技能点3点」というルールが維持されている、ということだ。なお、この他の技能点獲得ルールとして「新たな称号の獲得」があった。称号『超越精神体』を得た時に、そこに振れと言わんばかりに3点得たのである。
……だが、この分を加えても、俺の現在レベルが15であるとすると総技能点は48点。一方で、現在の俺の技能点合計は、点振り済が25点であり未振りの36点と合わせると61点。13点分が過剰であった。
原因の第一に考えられるのは、俺が持っている他の『称号』である。
システム通知音を聞いた記憶はなかったが、そもそも俺が気を失ってこの世界に迷い込んでいる間に最初から獲得していたものとして『客人』と『エイリアン使い』――当初は『蟲?使い』だったが――がある。
『超越精神体』の小技能テーブルには7つ技能があり、それに対して「3点」が与えられたことを考えると、この2つの『称号』もまた同じように3点ずつ、計6点分与えられていたと考えるのが自然。そうすると残り7点。
ただ、例えば『称号』ごとに与えられる技能点が異なってくるだとか、レアリティみたいなルールがあるのだとすれば話は別だが。
次に技能点の”ずれ”の原因の第二として考えられるのが、技能の「自然」成長に関する以前の考察である。
最初の位階の上昇をする前、つまり『技能点』の項目が表示される前に、俺は3回「技能の成長」を経験した。【欲望の解放】と【体内時計】、【精密計測】の技能である。
あの時点では、まだ『技能点』の存在がわからなかったので、例えば「熟練度システム」のようなものも想定していた。しかし、それは単に、あの時点で既に「残り技能点3点」という状態だった――と考えることもできる。
その3度の技能成長以降、特に最初の外の探索で俺は【精密計測】などをかなり多用していたはずであったが――「技能の自然成長」は無かったのだ。
このことから、俺は「技能熟練度」システムの可能性を否定した。
代わりに”点振り”のルールが2つある、という考えに至った。
[点振りルール]
・その1
「未振り」がある状態で、その技能を継続的に使っていると、対応する技能に”点振り”される。これがいわゆる”自然成長”的な現象で、俺が熟練度システムと誤解した部分。
・その2
迷宮領主は、自分を含めた眷属や従徒に干渉して能動的に”点振り”できる。
俺がル・ベリの技能に干渉できるようになった、というのがこの考えの決め手だった。実際、2氏族競食作戦の最終盤では、それを使ってル・ベリは文字通り”殻を破った”わけだが……彼のことに関しては後で確認しよう。
俺自身の技能点の”ずれ”に考えを戻せば、そもそも俺は「初期称号」だけでなく「初期技能」も与えられていた。【体内時計】は最初から3であったし、その他にも様々な技能を「最初から」俺は与えられていたのだった。
これらを「初期ボーナス」として考えれば、位階上昇ごとの技能点獲得ルールとは辻褄が合う。俺が位階1の時点で点振り済となっている分は合計で13点だったが、ここから称号2つに対応する6点を除いた7点が「初期ボーナス」だろう。
――問題は「誰が」俺の”初期ボーナス”に手をつけ、俺の初期技能を決定したか、ということだった。そこまで考えて、自分でも今不敵な顔をしているなと自覚しながら、俺は「点振りルール」にルールを1つ追加した。
[点振りルール]
・その3
“神”は迷宮領主を含めて、生物に対して”点振り”を行うことができる。
この可能性が一番高いだろう。
俺がそのように考えた理由は他にもある。ル・ベリを最初に【情報閲覧】した時に”振り残し”がかなり多くある、ということの意味を改めて考えたのだ。
あの時点では、まだ迷宮領主としての俺自身と従徒となったル・ベリの関係性の中でしか考えていなかった。
だが、同じく従徒であったル・ベリの母がもし『技能点』と『点振り』システムを知らされていれば、息子を生き延びさせるために、一も二もなくそれはさすがに教えていただろう、と思う。
故に『点振り』は、知性的な存在を含む生物には、本来知らされることを想定されていない。むしろ迷宮領主である俺が「知っている」ことの方が例外的である、とすら言える。
ならばその出処はやはり、神々の権能、なのであろう。
九大神を率いる【黒き神】が迷宮システムを構築した際に、神の力を一部与えたのだ。もしこの世界の上位ルールとして「創造者が被造物に”介入”できる」というものがあるのならば――迷宮領主が己が生み出した眷属に介入できるのは、他ならぬ”神”が数多の生命に介入できる、というその権能を写し取ったものに他ならない。
無から有を生み出す神の如き力を、迷宮領主は自身の迷宮の中限定ではあるが、振るうことができるのである。
大体、これまで俺に対して何度も何度も「上位存在の介入」が行われてきたではないか。
考察を進めていきながら、同じ構図が”点振り”についても当てはまる、という考えが俺の中で確信に変わりつつあった。
――だが、もし”神”が自由に技能を成長させることができるならば、なぜ俺の初期ボーナスに手をつけたのか? 次に湧いた疑問はそのようなものだった。
俺をこの異世界に導いた存在が、それが神であるとして、何か意図があって、俺にやらせたいことがあってそうしたのならば、俺の「未振り」点はそのままにしておく方がずっと俺の強化には役立つはず。
しかし、そうしなかったということは、神といえども「技能は技能点によってのみ成長する」というルールは無視できない、ということなのかもしれない。
ただ、神にとって好都合なのは、この世界の大多数の者は「技能システム」を知らないこと……あるいは知らされていない、ということ。ル・ベリでさえ多数の「振り残し」があったのだ。それで、時にある程度の”干渉”をしようとする時には――「未振り」点があれば、それを「神による点振り」によって技能を与え、強化し、それを活用するインセンティブを与えるのである。
まさに迷宮領主達に、技能点の獲得を餌に、【闇世】と『ルフェアの血裔』という種族を護る、という生き方を誘導しようとしているように。
そう考えると、俺とル・ベリの『種族技能』にある「後援神」系統の技能の意味が、また違ったものに見えてくる。おそらくだが、加護や祝福を与える代わりに、この「点振り」を含めたその他俺がまだ知らない”介入”が行いやすくなる、そんな効果があると思われてならない。
特に「後援神」系統の右2つなどは【後援神の契約】だとか【後援神の分霊】である。意識を神に乗っ取られるような技能であったとしても、全く驚くに値しない。
諸神の目的が「意識の乗っ取り」である可能性もあるならば、警戒するべきだ、と俺は強く感じた。
彼らを信頼するとかしないとか以前に、初期ボーナスを使い込まれて”点振り”されている上に、幾度となく介入を受けており、そして説明もないのである。そもそもが、その思惑がわからず、信じる以前の状態にあるのであった。
結局、俺がどうしてこの世界に来てしまったのか。
どうして、元の世界のあの場所で焼死しなかったのか、謎だけが深まるのみだった。
だから、今できることを突き進めていくしかない。
――迷宮領主として与えられた力は想像を絶するほど強大なものだった。この力があれば、もしも元の世界に戻れたら……と、俺は思わずにはいられない。神による介入も、あるいは俺の目的に役立つ範囲でなれば、受けてもよいものだとは思っていたのだ。
「だが、ちゃんとコンタクトが取れるまでは、シースーアの神々を信じるかどうかは保留にするしかないな」
思考が漏れ出て、いつものことだったが、俺は自分に言い聞かせるように独りごちた。
■■■を探すこと。
元の世界に帰る術を探すこと。
――待ってるよ、マ■■せんせ。
そのために迷宮領主の力を高めなければならず、その近道は迷宮領主「らしく」生きなければならない、ということでもあった。迷宮を広げ、眷属を操り、敵する者を討ち倒し、力をつけて【人世】へ攻め込み、そして【闇世】を護る存在として振る舞うということである。
未だ迷宮領主としては郷爵に過ぎない俺には、選択肢は多くは無い。
「だが、これ以上”点振り”はさせない。俺は俺のやり方で行く――【情報閲覧】」
今この瞬間にでも俺の技能テーブルで『後援神』系統の技能を取りまくる、今はそうしないだけで、条件が変わった時にやろうと思えばできる、その芽は摘んでおきたかった。
そして、大多数の生きとし生けるものがそうであるように「振り残し」を余らせておく理由も余裕も俺には無かった。
魔素と命素が織りなす、現実を塗り替える超常を成すシースーアの秘蹟を使い、俺は自分自身の技能テーブルを改めて開いた。
そして、技能の名前に指で振れながら、そこに魔素と命素の流れをイメージして、次の通りに36点もの与えられた技能を”振って”いった。
技能を制するものがシースーアを、そして迷宮領主を制する、と言っても過言ではないほど『技能』システムは重要である。そして、その技能を成長させるための『技能点・位階上昇』システムがある。
そのため、数日前に検討したビルド方針と合わせて”長期的投資”を重視した。
称号技能では『経験点倍化』を限界まで上げ、さらに種族技能では『眷属技能点付与』に振ってこれを前提とする『眷属経験点共有』を限界まで上げた。
【エイリアン使い】の本質は『因子』を与えられて様々な”役割”に進化・分岐していく眷属達を多数運用し、指揮して使いこなしていくことである。そしてこの世界では、その種族として与えられた”役割”をこなすことで『種族経験点』が得られるため――エイリアン達を進化させ、分岐させ、連携させるように指揮すればするほど、彼らは『経験点』を得る。
そしてそれが俺に「共有」され、「倍化」される。そういうシナジーだった。
これによって俺自身の位階上昇が早まり、さらに獲得した『技能点』を俺自身の強化や、あるいは『眷属強化』系の技能に割り振っていくのである。
『眷属技能点付与』も限界まで上げた、というのがポイントだった。
これでエイリアン達の技能テーブルを見ることができるようになるはず――そう意識するや、いつもの如く「技能連携」が成立したというシステム通知音が頭の中で鳴り響いた。
それから、検証したいことが2つあったため、俺は余った技能点を『領域定義』と『言語習得』に振ったのであった。
――これはおそらく、俺が今いるような「絶海の孤島」という環境でなければできないビルドであるだろう。争いが絶えず、戦国時代の様相を呈している”大陸”側で迷宮領主にでもなろうものならば、長期的投資よりもまずは目の前の戦力強化が重要になっただろう。
その迷宮領主の迷宮システムにもよるだろうが、とにかく素早く自前で戦力をそろえるならば、優先して取得するべきは【魔素操作】【命素操作】であり、さらにそれらを前提とする【収集倍化】であるか。
あるいは、魔素と命素の「収入」がそもそも迷宮の『領域』に依存しているのであれば――俺もそのことを検証するつもりだったが――【領域定義】、そしてそこから派生する【領域転移】技能も、地形や迷宮の規模によっては優先度が高い。
加えて、闇世Wikiの存在があることから「情報戦」で重要となるだろう【情報閲覧】【情報隠蔽】と【眷属心話付与】については、早期に振っているかどうかで立ち回りが全く変わってくるだろう。特に、これが迷宮領主の基本的な権能であり、他の迷宮領主も当たり前に駆使してくることの意味は計り知れなかった。
その点、良くも悪くも、俺は多頭竜蛇に”囲われて”おり、魔人族の「敵」である小醜鬼達をまず全力で狩ることができるという迷宮領主としての『種族経験点』を積み重ねやすい環境で目を覚ましたからこそ、大器晩成型を狙えるという始まり方であったのだ。
長い考察を終え、俺は目を開ける。
そして今度は、傍らに片膝をついた姿勢のまま、微動だにせぬル・ベリに【情報閲覧】を発動したのであった。
※本作は「小説家になろう」において現在0169話まで、全て先行投稿されています。
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