「マジ味方神!俺はお前らが好きだ!結婚したい!」
こいつらは俺が養う!一夫多妻!いや、こいつら男かもしれないから一夫多夫?と頭が弱い発言をしているスキマを帰宅早々見るのはムッとしてしまう。誰と誰が結婚するって?お互いYouTubeやTwitchで稼いではいるが、同居している家の名義はコウのものだ。つまりスキマを養っているのは間違いなく自分だというのに。
顔出し配信をしているため、彼の周りはカメラに映ってしまうが構わない。ゆっくりとスキマの後ろまで忍び寄り、バッと眼を両手で隠してやった。
「だーれだ☆」
「ギャアアアアア!」
「おいおいスキマァ、そんな所で水没するなんて利敵だぞ?晒されても文句言えないな」
「なんで俺が悪いん!?いきなり眼塞いできたコウさんが悪くね!?あ、ちょっと味方なんで皆やられてるん!マジおもんない!」
「眼じゃなくて口塞いで欲しかったって?本当お前はしゃーねえなぁ」
今まさに敵のホコがゴール関門に置かれ、Finishの文字と共にジャッジくんのホイッスルが聞こえた。既に泣きそうな顔をしているスキマを後ろから抱え、嫌がる身体を押さえつけた。キスなど何回もしているのに何故こんなに拒否されなければならないのだ。
「配信しとるから!離れろよ!」
「カメラ下げたら良いだろ?ほら、なーんも見えてない」
「そういう問題じゃないから!あぁ…もうまたコメント荒れてきた」
モニターに目をやれば「旦那帰還」「犬が散歩から帰ってきた」「キスするなら見せろよ」「お帰りのちゅー」など好き勝手なことが書かれていた。同居している事は公言しているし、ゲイビジネスではなくお付き合い中だと言うことも周知の事実だ。恥ずかしがり屋で童貞のスキマは、何をするにも照れてしまい直ぐに嫌いだとか喚くがリスナーからはツンデレだと認識されていた。
実際ツンデレで間違いないし、デレたら可愛いのはコウだけが知っている。見せつけたいし自分のモノだと言いたいが、独り占めしたい気持ちが強くカメラには映したりしない。
「あっナイス金…てリオラさん?」
「………」
配信中度々現れる恩人であり恋敵でもあるリオラに、毎回コウはヤキモキしていた。コメントは必ず読ませるために少額でもスパチャを投げてくるため無視はできない。また何かの企画だろうかと思ったが、コメントが「いつ俺ん家来るんや?」というものだった。
「えー…前東京行った時寄ったやん」
「配信しに来ただけやないか。コウチャンネルに許可もらって泊まりに来い」と、別段気にする必要のない呼び出しだが穏やかではなかった。コメント欄は「寝取られ来た」だの「本夫が呼んでる」「三角関係うまうま」と更に荒れてきた。スキマを見れば満更でもないのか顔を隠しながら「なんでLINEせんの」とぼそぼそ呟いている。彼氏の前で別の男の誘いに乗る所か照れているだと?イラァッと血圧が上がったコウは、ゲーミングチェアで三角座りをするスキマを後ろから抱き上げた。
「な、なに!?下ろして!」
「はいはい、堂々と浮気する子の言うことは聞きませーん。リオラも炎上したくないなら、俺のスキマにちょっかいだすな」
スパッと言ってのけドヤ顔をしたコウだったが、モニターに赤スパが投げられ「スキマが好きなん俺やけどな」とムカつく顔文字と共に告げられ、頭の血管が切れそうになってしまった。
「リオラさんナイス金~!」
「お前はもう少し危機感持て!」
いつか本当に財力で盗られてしまうかもしれないと焦りを感じたコウは、さっさと配信を切ってやった。
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