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「僕はただこのままベッドで朽ち果てるのか?」
長い沈黙が部屋に響く中、自分に問い詰める。
何が何だかわからない。この人生は本当に僕が望んだ者なのだろうか。僕はこのまま腐って棺桶に入ることが結末なのか。いや、そんなことない。だがやる気がない。何もかも興味がない。僕は何をすればいいんだろうか。起きる気力もない。食事だってまともにできないぞ。
片手にスマホを取り出して現実から逃れるばかりにインターネットで特に興味のない物を探る。
「ああ、このままじゃニート生活だぞ」
「高校生ニートだな!」
独り言を呟き、自分の哀れさに笑う。
ツイッターの通知ボックスを見るが何も入っていない。当たり前か。
全てが面倒臭い、面白くもないし興味も湧かない。
そうだ、友達にでも連絡しよう。そうすれば何か面白いものや興味、相手の趣味が見つかるはずだ。それに没頭でもしよう。僕はなんて天才なんだ、そう思いながらベッドに座り、照り上がった顔でアイツの電話番号を打つ。
プルルルル プルルルル ガチャ
「どうしたんだい?」
ようやく繋がった。
「ああ、ただ君の声を聞きたかっただけさ」
「そうかい。最近はどうしてる?また学校をサボってるのか?」
「まあ、そうだな。あまり良くないのはお分かりだ」
「そろそろ行ったらどうだ?俺もそこで待ってる」
「いや、まだ当分行けそうにない」
「そうか」
彼はそう言うと深く呆れたようなため息をつく。
深い沈黙が10秒ほど続いた後に慌てた声でソイツに聞く。
「そ、そういえば聞きたいことがあるんだ」
「アレックスにしては珍しいじゃないか。何を聞きたいんだ?」
「君の趣味が聞きたかったんだ。今、何に興味がある?何か没頭してることはないか?」
「ああ、急に焦った声で聞いてきたから何か事件でも起こしたのかと思ったじゃないか」
「趣味か。特にないが最近は惑星やらSFやら、宇宙に関連しているものが好き、かもな」
彼はそう独り言のように話し、僕が聞きたかったことを長々と話してくれた。
宇宙か。なかなか壮大で哲学的だ。それに、宇宙なんて規模が巨大なあまり脳がたくさん詰まった天文学者や大学生が興味を持つものなんだから、アイツ、相当賢いんじゃないか。ああ、そういえば最近アイツ、哲学的なことをよく話すようになったのを覚えているぞ。最初は何もなかったが爆発がどうとかこうとか話していた記憶がある。何を言っているのかさっぱり分からなかったが彼の心にはきっと深く刻まれているのだろう。くだらない気もする。だがアイツが話すだけあって面白おかしく事実を改造するのがそれもまた味がある。
「ありがとう、助かった」
そう感謝し、お別れの言葉をお互いに言い合って電話を切った。
古き良き友達と話すのは気分が好調する。やっぱりガキの頃に出会ったあいつとは息が合うぜ。さっきの沈黙を除けば。
だがよく考えたらアイツは彼女も友達もいるし何気に人生成功者だ。それに比べて僕はただの落ちこぼれの高校生。天と地の差があるぞ。
「どうしたらアイツより友達が多くなる?」
「どうしたらアイツより彼女歴が多くなる?」
「どうしたらアイツを超えられる?」
自分に問いを投げかける。僕は一体何者なんだという疑問が埋まらない。
なんだかイライラしてきた。
水を飲もう。ベッドから数分かけて起きあがり、亀のような足の遅さで台所へと向かい、蛇口を捻って手に持っているいかにも庶民感のあるグラスで水を注ぐ。面白くなさそうな目でその水を数秒ほど眺めた。その後にグラスを少し揺らしてみた。特に変化がなかったのでもう一度、今度は前よりも少し激しく揺らしてみた。水飛沫だ。水滴がグラスの上を、宙を舞っている。なんだか些細なことなのに美しく感じる。これが自然の原理ってやつなのか、そんなことを思いながら迷いもなく水を一気飲みした。
ああ、こんなにも体が水分を欲していたなんて思いもしなかった。喉が瞬く間に潤った気がする。
こんなことならアイツと話す前にいっぱい飲んどけば声は枯れているような音を出さなかったのにな、と呟き、とりあえず勉強机の椅子に座ってみた。