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りうらと別れた後も、胸のざわめきは消えなかった。
「諦めろ」と言ったものの、あの男の瞳は決して折れてはいない気がしたからだ。
コン、コン。
ドアを叩く音がした。
『まろかな……?』
そう思って扉を開けた瞬間、そこに立っていたのは、まろでも、りうらでもなかった。
ただの──逃亡中の殺人者だった。
「…..あれ、人いんじゃん」
月明かりに照らされた顔は、にやりと笑みを浮かべ、その瞳の奥には狂気めいた光が潜んでいた。
『だ、だれっ…』
声が震える。
必死にスマホを掴み、まろに助けを求めるが.…呼び出し音だけがむなしく響く。
「ちょっと静かにしてもらおうか」
凶器を握った手が伸びてきて、視界が揺れる。気絶させられそうになった、その瞬間
「気安く触れるな、」
低く鋭い声が玄関に響いた。
振り向いた先にいたのは、りうら。
彼は躊躇なく犯人の腕を掴み、壁に叩きつける。呻き声とともに凶器が床に転がった。
呆然とする俺をちらりと見て、りうらが小さく吐き捨てる。
「よし、警察っと!」
「….ほんとは、今日で全部やめるつもりだったんだ」
『え…?』
「監視カメラも、盗聴も、もう回収しようと思って来ただけ……」
「でも、ないくんが震えてるの、放っておけないじゃん?」
そのとき、玄関の扉が勢いよく開き、まろが駆け込んでくる。
「ないこ!」
必死な顔で抱きしめるまろに、ないこは涙をこぼしながらしがみついた。
その光景を一歩引いた場所から見つめていたりうらは、ふっと息を吐いた。
「…ちゃんと守ってあげてよね。二度と、こんな思いさせないでよ?」
「次はもらっちゃうからね?」
「りうら…、ないこのこと。ありがとうな」
「別に、」
「はぁ、もうなんなの?また呼び出して」
と、不機嫌そうに眉をひそめるりうら。
「俺はこの通り、ないくんを監視することもしてないし。近づくこともしてないでしょ?」
りうらは淡々と答える。
「それに今は忙し……」
「おん、知っとるで。」
まろの言葉を遮るように、小さく微笑んだ。
「ないこのこと諦めてくれたのも。守ってくれたのもほんまに感謝しとる」
「これからは….。」
まろの目がわずかに揺れた。
「え、どこ見て……まさか」
視線の先を追った瞬間、後ろにはりうらの彼氏がいて、まろの姿はなかった。
END