夏休み数日前。残り数日だというのになぜかその数日が非常に辛い。
しかし、あと数日で夏休みと聞くと少し無茶してしまうのも事実。
大和木部(やまとぎべ) 優恵楼(ゆけろう)は
親友、杉木(すぎ) 流来(るうら)と真夜中までワールド メイド ブロックスで遊んでいた。
朝、母親に起こされる。大あくびをしながらいつも通り歯を磨いて顔を洗う。
「姉ちゃんは?」
「昨日も帰ってくるの遅かったからまだ寝てる」
「いいね。大学生」
「あんなんになっちゃダメだからね」
「あいあい」
父、母、僕で朝ご飯を食べた。
「ご馳走様でした」
食べ終え、部屋に戻って制服に着替え、スクールバッグを持って玄関へ行く。
「じゃ行ってきまーす」
「気をつけてねぇ〜」
「へいへい」
扉を開く。夏がすぐそこに迫っている陽射しが厳しく差し込んだ。眩しさに目を細める。
高校までの道を歩く。端で立ち止まってスマホを取り出す。画面をつける。
流来(るうら)「眠すぎる」
「それな」
と呟く。あくびが出た。返信を打ち込む。
「それな。あ、そうだ。ワメブロさ、また新しいMOD入れてみる?
今、オレたちの世界作ってるけど、今度はなんかダンジョン系とか。有名どころでいうと黄昏とか」
送信ボタンをタップする。街中を見ながら歩く。
庭作るのに塀とか作る?日本っぽいよね。
あ、村人の家も豪華にしよ。でもやっぱその前にオレたちの家だよな
そんなことを考えながら歩く。たまに立ち止まってスマホを確認する。
流来(るうら)「いいね。MODでしかないブロックも建築に使えるしね。
でも重くないんない?ただでさえ今リアリティーMODと家具MOD入れてんのに」
「たしかに」
優恵楼(ゆけろう)「まあ、そこはパソコンと要相談だな」
流来(るうら)「たしかに。入れてみて、動き重いなって思ったら抜けばいいか」
優恵楼(ゆけろう)「それ」
流来(るうら)「楽しみだな」
優恵楼(ゆけろう)「楽しみすぎるぅぅ〜ww」
送信ボタンを押した瞬間、聞いたことはあるはずなのに
今まで聞いたことのないけたたましい音が自分に向けられているのに気づいた。振り返る。
僕に向かって軽トラックが走ってきていた。その音はクラクションだった。
あ、終わった…か
そう思った。不思議だった。うるさいクラクションの音がボヤけてフェードアウトしていって
陽の光はより一層輝きを増し、軽トラックの動きはゆっくりに見えた。いろいろと考える時間だってあった。
あぁ、姉ちゃん叩き起こして会えばよかったな。
母さんの「気をつけてね」をもっとちゃんと聞けばよかった。
疲れてるだろうけど、小さい頃みたいに父さんとゲームで対戦すればよかった。
兄ちゃんにも電話すればよかったな。ま、出ないか。
流来(るうら)…ごめん。まだ2人の世界、完成してないのにな。
流来(るうら)とのトーク画面が表示された画面が割れたスマホがアスファルトに転がった。
優恵楼(ゆけろう)は救急車で運ばれ、緊急手術が行われた。
実家に救急車内から電話がかかってきて、父は仕事のお休みをもらい、母と姉と車で病院へ向かった。
兄も駆けつけてくれて、家族全員待合室で祈っていた。流来(るうら)も学校をブッチして病院へ向かった。
しかし待合室には家族しか入れないらしく、病院の外のベンチで祈っていた。
緊急手術の待合室のつるんとした床に何粒もの涙が溢れた。
病院の外の乾いた床にも何粒もの涙が染み込んでいった。
…んん…。
暗い視界。ゆっくりと瞼を開ける。眩しい光が飛び込んでくる。
「んん…」
徐々に慣れてくる。綺麗な青空に流れる雲。
…あれ?僕、軽トラックに轢かれて…夢?あぁ、もしかしてこれがよく聞く三途の川ってやつか?
ってことはオレ危ないんだな。渡ろうとすると家族とか大切な人の声が聞こえるって…
手をつき体を起こす。ファサッ。芝のような感覚がある。
ん?
どこか見覚えのある風景だった。
「三途の川…前に見たっけ?」
あぁ、MyPipeで都市伝説系の動画のなんかイメージ画像みたいの見たときか
しかしそんなものではない。確実に見覚えのある風景。
そしてどこか違和感を覚える風景でもあった。体を起こし、今一度辺りを見渡す。
「一面の広場…あ、木があっt」
そこで気がついた。木がブロック状だった。
「は?」
どういうことかわからなかった。立ち上がり、その木々を目指して歩く。
ザッザッザッ。気持ち良い足音が響く。
「あっ…ぶな」
そのブロック状の木々のことだけに気を取られていて、足元への注意が疎かになっていた。
今まで歩いていた芝もブロック状に段差になっていた。やっぱり状況が飲み込めなかった。
しかし恐らくここはワールド メイド ブロックスの世界。世界がブロックでできている世界。
でもどうしてここに?でも好奇心もあって土を手で掘ってみた。爪の間に土が入る。
ブロックの角が取れていって掘られた土が下に溜まる。
10回ほど掘ったところで目の前の土の塊がポッっと消えた。
今まで爪に入っていた土、下に溜まった土も消えており
その代わりに土がアイテムとして小さなブロックになって回っていた。
近づいてみる。ヒュッっと小さなブロックが近づいてきた。
「うおっ」
左手のほうの吸い込まれた。左手を見るといつの間にかスマートウォッチのようなものがついていた。
「なんだこれ」
タッチしてみる。ファンッっと画面の上の空中に半透明のモニターが表示された。
そこには今手に入れた土ブロックが1つ。そしてハートマークが10個。肉マークが10個表示された。
ハートマークは体力ゲージ。肉マークは空腹ゲージだ。
「あぁ、完全にワメブロの世界だ」
全然状況を飲み込めない。でもなぜか少しだけワクワクし、嬉しかった。
「とりあえず土10個くらい集めて」
土を掘るのも楽しかった。爪の間に土が入る感覚。子どもの頃以来の感覚。
でも10回掘れば、その爪の間に入った土も下に溜まった土も消え
アイテム状の小さなブロックになる。そして近づくとヒュッっと左手に吸い込まれる。
まだこのアイテム状の小さなブロックが近づいてくるのにはビビるが
自分がワメブロの世界にいてワメブロのキャラクターたちは
こんな風にアイテムを集めていたのかと思うと楽しかった。今度は足元に気をつけて木々に向かって歩く。
「わぁ〜デケェ〜なぁ〜」
木を間近で見ると大きく高さがあった。木の香りがとても良い匂いだった。触ってみる。
「あぁ〜すごい。ちゃんと木だ」
手触り。木の皮のゴツゴツ感。それは木そのものだった。
ゲームをプレイし、画面で見ているだけではわからなかった。感動した。
「これは〜どうすればいいんだ?」
自分がゲームをしているとき、キャラクターは木を殴っていた。
しかしいざ自分が、となると殴るのは抵抗があった。が、一回殴ってみた。
「痛っ…くない。意外と」
でも躊躇して軽く殴ったからというのもあるし殴るのはやめておいた。
結局木の皮を捲り、木の繊維をほじくることにした。
木の皮を1枚、木の繊維を10本ほど取ると木がアイテム化した。
「あぁ〜意外と苦労するな」
とりあえずその木1本を伐った。
「ふぅ〜…一苦労だ」
左手の機械をタップする。オークの原木ブロック7個、土ブロック10個
そしてリンゴが1つ、オークの木の苗が2本。
「こーれーはー?どうやってクラフトすればーいいのやら」
左手のスマートウォッチのような機械をタップし、オークの原木ブロックをタッチしてみる。
すると右手に半透明のオークの原木ブロックが現れた。
「おぉ。なるほど?これで指定の位置に置けるってわけか」
そして先程は気づかなかったが
左手のスマートウォッチのような機械の上の空中に出てきた半透明のモニターの右上に
2×2のマス目、そしてその隣には本が出てきた。
その本はレシピブック。今までクラフトしたアイテム
今まで入手したブロックでクラフトできるアイテムが表示される。
「おぉ〜。ま、でもクラフトテーブルは簡単だから」
その表示された2×2のマス目のうちの1つにオークの原木ブロックを1個入れる。
すると横にクラフトされるアイテムが表示される。そのアイテムをタップする。
するとオークの木材ブロックが4個手に入った。右手に持っていたアイテムもオークの木材ブロックに変わる。
そのオークの木材ブロック4個をさらに2×2のマス目にそれぞれ1個ずつ置く。
するとクラフトされるアイテムの部分にクラフトテーブルが表示される。
そのクラフトテーブルをタップし入手する。
「さぁ〜て。これからが本番だ」
辺りを見渡す。平原。
「まずは、とりあえずの寝ぐらを作らないと」
歩いてみる。木々をかき分け。水辺が見えた。
「水キレ〜」
足元の段差に注意しながら駆け寄る。水に触ってみる。
「つめてぇ〜!」
なぜか嬉しかった。
「よし。とりあえず水場もあるし、ここら辺を掘ってしばらくは暮らそう。えぇ〜…」
自分が画面を見ながらゲームをプレイしていたときはこんな平坦なところに置くのはなんの抵抗もなかったが
いざ自分がその世界に入ったらなんにもない平坦な平地に置くというのがなぜか抵抗があった。
しかし仕方ないので、なんでもない平地にクラフトテーブルを置く。
トンッ。気持ち良い音がなる。完全に木材でできたクラフトテーブル。
その上面を触ると左手のスマートウォッチのような
機械のように空中に半透明の画面が映し出される。そこには見覚えのある3×3のマス目が。
まずはオークの原木のブロックを置いてオークの木材ブロックを作る。
そしてそのオークの木材ブロックを縦に2個並べる。すると棒がクラフトできる。
僕をクラフトし、縦に2本を棒を置き、その上の1マスにオークの木材ブロックを置く。
すると木のスコップの出来上がり。さらに棒を縦に2本、そしてその上にオークの木材ブロックを置く。
それは木のスコップと同じ。そこにさらに上の棒の半分を囲むように
⬛︎⬛︎⬜︎
⬛︎ l ⬜︎
⬜︎ l ⬜︎ こう置くことで木の斧の出来上がり。さらにさらに
⬛︎⬛︎⬛︎
⬜︎ l ⬜︎
⬜︎ l ⬜︎ こう置くことで木のツルハシも完成。ゲームでのノウハウが完全に活きている。
どうやら右手に表示されている半透明のアイテムたちは
右手の人差し指で横にスライドさせることで切り替わるようだ。
とりあえず木のスコップに移動させ、半透明の木のスコップを握る。
するとアイテムが具現化され、しっかりと手に木のスコップの感触がでる。
「おぉ、スゲェ」
木だからなのか思ったよりも軽い。土を掘ってみる。ザクッ。気持ち良い音が鳴る。
「掘れる掘れる」
しかし性能は木のスコップ。土ブロック1個掘るのに7回もかかった。まあ、手で掘るより幾分マシだが。
階段状に下りるように掘っていくとすぐに石に突き当たった。しかし大丈夫。
こんなときのためにツルハシも作っておいたのだ。でも人生で初めてツルハシを使う。
少しドキドキ、少しワクワクした。石に向かって振り下ろす。トッ。イメージと違った。
イメージではカキーン!とかだったがゲームと同じだった。少しホッっとした。
掘り進めていく。7回ほど石を削ると石がアイテム化した。初めて丸石ブロックを手に入れた。
そのまま下に向かって掘り進め、ちょっとした空間を作る。
「よっし」
汗を拭う。どうやら汗はかくらしい。
大きな段差を上り、外に出る。木の斧を使い、クラフトテーブルをアイテム化させる。
クラフトテーブルに斧を入れるのは抵抗があった。なぜならどんどん削られてボロボロになっていくから。
アイテム化して入手して先程作った洞穴へ向かう。その洞穴の一角にクラフトテーブルを置く。トンッ。
先程木の斧でボコボコに削ったのに置いたら新品元通り。
「おぉ。スゲェ」
そのクラフトテーブルでまた作業をする。
今度はオークの木材ブロックを縦3マスを2列並べる。するとオークが扉が出来る。
洞穴の入り口に扉を設置する。4つの小窓がついているドア。
ゲームでしか見なかったものが目の前にあることに感動した。無駄にドアを開閉させる。カチャキャチャ。
ゲームとしてやっていたとき、よく流来(るうら)にうるさいって怒られた。
…。急に寂しくなった。ドアノブを握ったまま地面に座った。石でお尻が冷たかった。
もう一度学校のイスに座りたかった。
毎日毎日めんどくさいと思って通っていた学校が恋しくなる日が来るなんて…。
不思議な感情にクスッっと笑えた。自分のベッドにも戻りたい。
週末の晴れた日には敷布団を干して、太陽の匂い…ダニの死骸の匂いという説もあるけど
今はそんな事実はいらなくて、太陽の匂いのするベッドに飛び込みたい。…ベッド。ベッド?
「ヤバッ!」
立ち上がってドアを開いて外に出る。高い段差を乗り越える。空を見上げる。
まだ夕暮れではないものの、太陽が低い位置にいた。
「あぁ〜ベッドかぁ〜」
ワールド メイド ブロックスの世界ではベッドで寝ないと寝れないのである。
つまりベッドがなければ休めない。オールである。
「羊、羊ー」
辺りを見回す。都合良く羊がいるはずもなく、外に出たついでに木を伐った。
ある程度木を伐り終わると、空が夕暮れ色になっていたので、早々に洞穴に戻った。
クラフトテーブルに向かい、丸石を3×3のマスに「ロ」の字に置く。
すると釜戸ができる。そして3×3のマス目の横3マスにオークの木材ブロックを置く。
するとオークのハーフブロックが6つできる。作った釜戸をクラフトテーブルの横に置く。
その釜戸を左手で触ってみる。すると釜戸の上部、空中に画面が出る。
左側には上下に分かれた2つのマスが。そして矢印の先にもう1つのマス。
左側の下のマスには燃料を上のマスには熱したい物を入れる。
すると燃料を消費して右側に熱した物が出来るのである。
例題を言うとすると左側の下のマスに石炭、上のマスに牛肉を入れると右側に焼いた牛肉が出てくるのだ。
僕は燃料を入れるマスにオークのハーフブロックを入れ
上のマスにはオークの原木ブロックを入れる。矢印が色付く。釜戸にも実際に火がついていた。
「おぉ。ちゃんとあったかいんだ」
一応これで暖は取れるらしい。短い時間だが。矢印全部が色付いたら右側に木炭が出来た。
これが必要だったのだ。その木炭を取る。左手の機械をタップする。
その画面の上、空中に出てきた画面の2×2のマスの下に棒をその棒の上に木炭を入れる。
すると松明がクラフトできる。その松明を取る。右手に半透明な松明が出てきたのでその松明を握る。
半透明だった松明が具現化され、パッっと周りが明るくなる。
ドアの4つの窓から外を見る。すっかり暗くなっていた。そりゃ松明の明かりでパッっと明るくなるわけだ。
「これはどうやったら壁につくんだ?」
壁に向かって松明を添えてみる。スッっと吸い付くように張り付いた。
「おぉ」
取り外してみる。またいとも簡単に取れた。どうやら磁石のようなシステムになっているらしい。
とりあえず4本のうち3本を洞穴を照らすように壁につけた。
「暇じゃなぁ〜」
地面に座る。
「あ。…もしかして?」
と思いつきでクラフトテーブルに向かう。オークの木材ブロックを「h」の形に並べる。
「お!マジか」
オークのイスが出来た。どうやら家具MODが導入されている世界らしい。手に取る。
右手の半透明のイスを設置したいところに持っていって右手を握る。
そこにオークのイスが具現化した。座ってみる。
「おぉ〜イスだ」
至極当たり前である。
「さて。どうするか」
自分が画面を見てゲームをしている側だとワールドに生まれて走り回って
素手で木を殴って伐りまくって、土を掘りまくって、羊を見つけてベッドを作って
夜になったら寝て朝を迎えていた。羊がいなくてベッドがないときでも
夜でも構わず外で冒険を続け、モンスターを狩って…という生活をしていた。
しかもゲーム時間。昼の時間も夜の時間も10分。長いけどすぐだった。
しかし今までの感覚ではこの世界はそんな甘くない。
恐らく陽が沈んでから陽が昇るまでちゃんと数時間あるのだろう。
「どうしよ」
とりあえずベッドが作れなかったときやっていることをすることにした。
それはとりあえず下に掘っていくということだ。
下に行けばもしかしたら石炭が見つかるかもしれないし、色々見つかるかもしれない。
とりあえずクラフトテーブルで石のツルハシを5本作った。
「よっし」
左手に松明を持ち、照らしながら階段状に掘り進めていく。
トットットットット、ボコンッ。トットットットット、ボコンッ。の繰り返し。
丸石ブロックがどんどん溜まっていく。
「これっ。これっ。あるよっねぇ〜。なかなか石炭…出ないこと」
一人呟きながら掘り進めていく。石炭より先に鉄が見つかった。
「あぁ〜…ありが…たいか?」
一応鉄を掘る。石よりも硬い。ボコンッ。アイテム化した。鉄はありがたい。
しかしなぜ「ありが…たいか?」という微妙な反応だったかというと
鉄は精錬しないと使えないのだ。精錬するには釜戸。釜戸を使うには燃料がいる。先に石炭が欲しかった。
「結構採れたな」
こういうときに限って鉱脈は大きいもので鉄ブロックが結構採れた。
「欲しいのは石炭なんだよなぁ〜」
掘り進める。やっと石に黒いつぶつぶがあるブロックが見つかった。石炭だ。
「やっとだ」
掘る。しかし鉱脈は小さく6つしか採れなかった。
「おい。終わりか」
とりあえず戻って石炭を燃料に鉄を精錬して、鉄でツルハシ作って、と思い振り返る。
するとだいぶ掘って下りてきたらしく
奥のほうに小さい明かりが見えるだけでそれまでの階段は真っ暗だった。
「え…怖」
松明の重要さを改めて理解した。左手の松明が周辺を照らしてくれる。
一段一段上がっていく。1ブロック1メートル。
「あぁ…はぁ…高いよ」
階段も作ろうと決めた。やっと上り終えて
クラフトテーブルや釜戸などを置いた洞穴に戻ってきた。
「あぁ〜…疲れたぁ〜…」
地面に寝転がる。石が冷たくて気持ち良い。
しばらく寝転がった。立ち上がって釜戸で石炭2つを燃料に鉄の原石ブロックを精錬する。
3つの石炭で松明を12本作った。
そして丸石ブロックを3×3のマスに階段状に並べると丸石の階段ブロックができる。
丸石6個で4個。丸石の階段ブロックを何個も作り
先程の掘って下りた部分に丸石の階段ブロックを設置しながら
松明も置いて行こうと思って見る。真っ暗。
「こっ…わ」
階段を設置するときはその暗闇に背を向けて設置しないと
階段の置く向きが変になってしまうので、腰を引きながら、ビビり散らかして階段を置く。
なにも聞こえないはずなのに背中の暗闇から声が聞こえる気がしたり
誰かに見られている気がする。とにかく怖い。後ろの暗闇を見るのが怖い。
腰を引きながら丸石の階段ブロックを置き、いい間隔で松明を壁に設置する。すると背中になにかが触れた。
「っ!!」
声にならない声が出る。固まる。カートゥーンなら心臓が飛び出ている。
深呼吸を繰り返す。バッっと振り返ってみる。石壁。
「あぁ〜…なんだ。終わったのか」
クソダサい。でも安心した。明るく上りやすくなった階段を登る。
「よいしょ」
上りやすくなったといえば上りやすくなったが、1メートルの石ブロックが50センチの階段に変わった。
腕を乗せて軽くジャンプして乗り越えるよりは幾分も楽だが
1段50センチの階段は足をこれでもかというほど高く上げないといけないのでまあまあ疲れる。
「もっと…細かいっ…3段くらっ…いっの…階段ブロックっ…をっ…運営さんっ…作ってくださいっ…っと」
文句を言いながら高さが高い階段を上る。
「あぁ〜まだ夜か〜。ま、まだですよね」
オークの扉の4つの小窓から外を覗く。まだ外は暗い。
「ベッドが欲しい…」
オークのイスに座りながら呟く。
ベッドをクラフトするためには羊毛ブロックが3つ必要なのである。
「朝になってどうしよ。とりあえず目印に土積んで、周辺探索してみる?
で羊いたらラッキー。ま、とりあえず鉄のツルハシと剣作っときますか」
クラフトテーブルで鉄のツルハシと鉄の剣を作った。剣を持ってみる。
「おぉ〜カッコいい」
片手で持てるほどの重さ。ツルハシも木、石、鉄と重さは変わらない。
ブン!ブン!振ってみる。両手で持ってみる。
「おぉ〜。両手持ちもありだな」
ただ両手で持とうが攻撃力は変わらない。
「あ、盾!盾も作っとこうか」
盾も作って左手に装備する。
「おぉ〜。これで安心安全か?」
オークの扉の4つの小窓から外を見る。
「長いて」
まだ夜。
「あぁ、自分がやってるときは、なんの意味があんねんって思ってたけど
時計、必要なんだなぁ〜。時計ってなんで作るんだっけ」
スマホで検索しようとパンツのポケットに手を突っ込む。
「あ…ない…やん?」
どうやらスマホはないらしい。
「マジか」
クラフトレシピの検索ができない。
「えぇ〜っと?たしかブラッドストーンと鉄で方位磁石だったはず。てことは?ブラッドストーンと金か?」
正解である。
「金も貴重性高いし、ブラッドストーンももっと潜らないとなぁ〜」
結局まだ時計も方位磁石も作れないのである。
「時間わからないって意外としんどいな」
現実世界…ま、今も恐らく現実世界なんだろうが
学校に通っていた世界では時間なんて確認することはほとんどなかった。
オークのイスに腰を下ろす。起きれば7時頃だし
学校で4時限目が終わったら12時頃だし、学校が終わったら15時頃だし
夜ご飯になれば19時頃だし、お風呂に入ってドラマが始まれば22時だし
流来(るうら)から
「ワメブロー」
ってLIMEが来たら0時だし…。
「流来(るうら)…。なにしてるかな」
カツンカツンと石の地面に鉄の剣を軽くぶつける。
「1人って」
寂しいなぁ〜…
しみじみ思う。カツンッ、カツンッ。石の地面と鉄の剣がぶつかる音が響く。
「よしっ!」
腰を上げる。
「時計がほしい!」
ということでさらに下へ掘り進めることにした。1段50センチの階段を慎重に下りてその先を掘り進める。
トットットットット、ボコンッ。トットットットット、ボコンッ。
掘り進めていくと、とあるところで足がすくんだ。
掘っていった足元にブロックはなく、巨大な空洞が真下に広がっていた。
1歩間違えば落ちていた。絵に描いたように腰が抜けた。
「あ…こんな怖いんだ」
真下の巨大な空洞にはマグマがあるようで
マグマの流れている周囲だけは明るく照らされていた。めちゃくちゃ高い。
1ブロック1メートル。30ブロックくらいはあるから、おおよそ30メートル。
ビルやマンションでいうとおおよそ10階相当。高所恐怖症が恐怖するには充分である。
高さ的に現実味が高い。優恵楼(ゆけろう)は高所恐怖症ではないが
これで高所恐怖症になってしまうかもしれない。
「どうしよ。横を階段状に掘ってくか」
とりあえず落ちたら怖いので下が見える足元の穴は丸石ブロックで埋めた。
横を階段状に掘ってく。これが意外と苦労する。
自分が画面を見てプレイしていたときは、真横が空いていようと別に良かったので
壁にブロックを設置して下りていったものだ。しかし今は無理。横が空いてるなんて無理無理。
怖すぎる。ブロックを設置して下りていく?無理無理。怖すぎる。
なのでちゃんと壁の中を掘って下りていく。
たまに横壁に穴を開けて、どれくらいの高さまで下りてきたかを確認する。
とりあえず空洞の地面まで下りてきた。しかし真っ暗で怖すぎたので一旦引き返すことにした。
引き返すとき、階段ブロックを設置して、少しでも上りやすいように、下りやすいようにした。
「チェスト!」
夏曲で有名なグレフルレフルの曲が如く叫んだ。
左手の機械をタップすると持ち物が丸石ブロックでいっぱいだった。
クラフトテーブルで3×3のマスに「ロ」の字にオークの木材ブロックを置く。
チェスト、収納ボックスの出来上がり。2個作った。
釜戸の横に置く。1つ置く。その横にもう1つ置く。すると2つが繋がり横長のチェストとなる。
「これも触れると画面出る感じ?」
チェストに触れる。しかし画面は出ない。
「お?出ない」
どうすればいいのか悩んだ挙句
普通のチェスト、普通の収納ボックスのように開けてみることにした。ギィ〜。開いた。
「開いた」
開いたチェストの中に画面が現れる。
「なるほど?オシャレぇ〜」
チェストが開かれると自動的に自分の持ち物リストも開かれる。
自分の持ち物からとりあえず使わないものたちをチェストのほうに移動させる。閉める。ギィ〜。
「あぁ〜…疲れたな」
なんとなしにオークの扉のほうを見る。気づかなかったがオークの扉の4つの小窓から光が差し込んでいた。
「お、朝だ」
無事1日を乗り越えることができた。
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