テラーノベル
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文化祭まで、あと二週間。
放課後の教室では、今日も準備が続いていた。
「神崎、そっち持って。」
「了解!」
二人で大きな飾りを運ぶ。
「……重い。」
「だから俺が持つって言ったのに。」
「二人で持ったほうが早い。」
「そういう問題じゃない。」
「でも運べた。」
「結果論!」
冴が小さく笑う。
「……神崎とやると、楽しい。」
「え?」
「何でもない。」
「今、絶対何か言った!」
「言ってない。」
「言った!」
そんなやり取りをしながら、準備は順調に進んでいた。
-–
休憩時間。
冴が机の中から一枚の紙を取り出す。
「神崎。」
「ん?」
「これ。」
「何?」
そこには、文化祭当日の予定が書かれていた。
「……?」
「実は。」
冴が少し声を落とす。
「文化祭の日に、やりたいことがある。」
「何するの?」
「まだ秘密。」
「また秘密!?」
「……でも。」
冴は紙を折りたたむ。
「神崎には知っておいてほしい。」
「じゃあ教えてよ。」
「……。」
少し迷って。
「文化祭が終わったあと。」
「二人で、学校を回りたい。」
「……え?」
「みんなと一緒じゃなくて。」
「二人で。」
奏斗は目を丸くする。
「それって……。」
「嫌?」
「まさか!」
奏斗はすぐに笑った。
「行きたい!」
冴の表情が少し緩む。
「……よかった。」
「何か見たいものある?」
「うん。」
「どこ?」
「それも秘密。」
「またかよ!」
二人で笑う。
-–
その会話を、廊下の向こうから見ている人がいた。
蓮だった。
「……。」
何となく様子を見ていたが、冴が紙を大事そうにしまうのが見えた。
「文化祭で何かするのか。」
その日の帰り。
蓮が冴に声をかける。
「冴。」
「ん?」
「文化祭の日、何か予定ある?」
「……。」
一瞬、冴が黙る。
「ある。」
「神崎と?」
「……うん。」
蓮は少し笑った。
「そっか。」
「何?」
「いや。」
「楽しそうだなと思って。」
「……うん。」
冴は少し照れたように笑った。
-–
翌日。
奏斗が教室に入ると、冴が何かを作っていた。
「何してるの?」
「秘密。」
「また秘密じゃん!」
「文化祭まで待って。」
「気になる……。」
「楽しみにしてて。」
「……分かった。」
奏斗は諦めたように席につく。
けれど。
冴の手元に見えたのは――
小さな紙のしおり。
そこには、二人で考えた喫茶店のマークが描かれていた。
「……。」
奏斗は何も言わずに笑った。
-–
放課後。
帰り道。
「神崎。」
「ん?」
「文化祭。」
「うん。」
「終わったら。」
「……。」
「一緒に帰ろう。」
「もちろん。」
冴は少しだけ笑う。
「それから。」
「?」
「秘密の場所に行きたい。」
奏斗の足が止まる。
「……あそこ?」
「うん。」
夏休みに二人で見つけた、あの場所。
「……いいね。」
「約束。」
「約束。」
二人は小指を立てる。
そして――
小さく指を絡めた。
「……。」
「……。」
二人とも、少しだけ顔が赤くなる。
「じゃ、じゃあまた明日!」
奏斗が先に歩き出す。
「……うん。」
冴も後を追う。
その背中を見ながら。
冴は、鞄の中の小さなしおりをそっと握った。
文化祭の日。
奏斗に渡すつもりだった。
「これからも、一緒にいたい」
その気持ちを込めて。
-–
第32話 おわり
次回・第33話「文化祭前夜」
文化祭前日。
準備で二人きりになった教室で、冴が奏斗に渡したものとは――?
そして奏斗は、その小さなしおりに書かれた一言を見て、思わず言葉を失う。
「……これ、俺に?」
コメント
1件
寺島あおいです🌷 「秘密の準備」、すごくほっこりしました……!冴ちゃんが「文化祭が終わったあと、二人で学校を回りたい」って言うシーン、ドキドキしましたね。あの夏の思い出の場所に、今度は二人で行く約束をする小指の絡め方、甘すぎます。しおりに込めた気持ちも、奏斗くんにちゃんと届くといいなあ。次回が待ち遠しいです🤍
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