テラーノベル
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仁人視点
目の前で、勇斗と舜太がじゃれ合っている。
どっちが俺の隣に座るかとかいうしょーもないケンカから始まったのだが「俺の方が先に来たから」とか「俺はひとりでスタッフと今日の打ち合わせしてたから」とかしょーもない理由を上げて揉めている。
それを眺める他三人。
「おっきい人たちが暴れんでほしいわー」
「大型犬二匹だよね〜」
「太智も行けばいいのに、トイプーとして」
「やだよぉ、踏まれちゃうっ」
「よっしー躾けてきてよ」
まさに大型犬が二匹。
それなら俺はドッグトレーナーか?
「…勇斗、舜太!お前らデカいんだからそんな騒がないでよ」
「だって仁ちゃん!」
舜太が勇斗を振り切って寄ってくる。
「俺、今日早めに来て仁ちゃんとかスタッフさんとか手伝ってもう着替えててすごない!?」
「すごい、舜太お前ホント成長したね」
でしょでしょ!とシッポ振ってるのが見えたからトレーナーとしてはちゃんと褒めないとね。
手元にあったグミを舜太の口に放り込んでヨシヨシと頭を撫でる。
「やったぁ!」
と喜ぶ舜太の後ろで勇斗がグギギってなってる。
なんでお前が舜太と張り合ってんだよ。
でもなんかそういう勇斗の顔見るの楽しい。
性格悪いと言われてもいいんだけど自信満々以外の勇斗って希少だから見れたらキュンってするんだよね。
可愛いから。
「仁人!俺も今日の連絡とかしたしっ」
トレーナーに寄ってくるもう一匹。
「ありがと、助かったよ」
うんうんっとこっちもシッポ振ってる。
「でもお前は一番後に来たくせに舜太とじゃれてただけじゃん、早く着替えてよ」
「え、だって俺前の仕事ちょっと押しちゃって」
しょげた犬耳が見える。
あ〜可愛いかも。
勇斗が遅れるって言うのは聞いてたから知ってたし。
本当言うと勇斗が来るのはもっと遅くなると思ってた。
ここへの到着が思ってたより早かったのは多分勇斗がその分頑張って時間を縮めたからで。
「…急いで来れて偉いね」
誰よりも忙しいはずなのに、いつもちゃんと元気に頑張ってて本当に偉い。
…すごい、かっこいい。
こんな人間が、俺に褒めて貰おうとしてるのがマジなんで?なんだけど。
勇斗がパァッと笑顔になる。
いつもありがと、勇斗が笑ってると安心できる。心があったかくなる。
こっちも嬉しくなって笑ってしまう。
普段はそんな事絶対隠して本人には分からないようにしてるけど。
今はトレーナーだから。
手を伸ばして舜太にしてやったより少し優しくヨシヨシと勇斗の頭を撫でる。
勇斗が固まった。
「?、グミもいる?」
小首を傾げてその顔を見上げると『ウッ』と呻いて顔を赤くした勇斗が
「いる…」
と小さく返事をしたので、舜太にやったみたいにグミを一個その口に入れてあげた。
モニュモニュとグミを食べながら、勇斗が改めて舜太の方へ身体を向けた。
「…ずりーわ、舜太。お前ずっとこんなんしてもらってたのかよ」
「いーでしょ?勇ちゃんも俺のマネしてもいいで〜」
二人が、なんの事を言ってるのか分かるようで分からない。
「…なに?二人で俺をおちょくってんの?」
低い声で、二人を睨む。
「ちがうで、仁ちゃん!勇ちゃんが自分も仁ちゃんにヨシヨシされたいって言うから」
「あ、バカやめろ!」
「俺のマネしてみたら〜って」
二匹のデカわんこが、また笑いながら攻防し合ってじゃれている。
太智と柔太朗がこいつらバカ犬すぎると大笑いしている。
みんな笑ってていつも通りだな、と思う。
いつも通り、それを纏めるのは俺。
「もういいから!
あと10分で始まるよ!勇斗は着替えて準備して!」
◇
階段状のセットの中で、五人で並ぶ。
上段に太智と柔太朗、その下に俺と勇斗と舜太。
真ん中が俺で左に勇斗、右に舜太。
…リーダーと言う肩書き上俺が真ん中に来ることもたまにあるのだけど、両脇がデカい二人な時は少し悪意を感じる。
「仁ちゃん今日の髪型可愛いね!」
「スタイリストさんの腕でしょ」
「仁人仁人!さっきの話の振りめっちゃ良かった」
「勇斗がスベリ過ぎなだけでしょ」
左右からとてもうるさい。
「吉田さん、懐かれてますなぁ」
「ちょっとかわいそうなくらいウザいよね」
後ろから太智と柔太朗も参加してくるので余計わちゃわちゃが増して、『相変わらずM!LK五人は仲良しだね』などと思われているようで撮影スタッフたちからの視線はお陰さまで優しい。
「じゃあ最後に一番上に立って撮りますので位置移動してもらっていいですか」
不規則な段差のセット、微妙に恐怖心を覚える高さ。それは考えないようにしてスタッフからの指示に心を無にして異動を始める。
「仁ちゃん手ェ引いたげよっか?」
「いらん、介護かよ」
揶揄うように手を差し出してくる舜太を一瞥して少し大きめの段差を上がる。
先にそこへ上がった勇斗も気にして俺を見てくれてる。
俺ってそんな心配されなきゃならんくらい危なっかしい?
そりゃ他メンバーより運動感覚は良くない、かもだけど、
とか考えていたらつま先が何かに当たった。
何なのこのセットの作り!初め見た時はおしゃれだな〜とか思ってたのに!
視線の水平感がぶれる。
「みぎゃ…っ」
思わず口から変な声が出た。
「仁ちゃん!」
「仁人!」
左から、手を伸ばしてくれる舜太。
右から、身を乗り出してくれる勇斗。
後から考えるとひとりで落ちた方が巻き込みがなくて良かったよなぁと反省するわけだけど、その時は高所から転落する怖さのせいで誰かに縋りたくて。
舜太と勇斗、無意識に掴んだのは勇斗だった。
俺左利きなのに。
俺を掴もうとしていた勇斗の袖をとっさに右手で握ったら、そのまま引き寄せて抱えられてそこから数段滑り落ちた。
衝撃はあったけど、そんなに痛みはなかった。
「…仁人、大丈夫か?」
ギュッと瞑っていた目を開けると勇斗が心配そうに俺の顔を覗き込んでた。
「……ご、ごめん勇斗!お前は大丈夫!?俺のせいで…!!」
巻き込んでごめん。
「俺は全然へーき!おいちゃんは?腰とか打ってない?」
にへら、と笑って俺の背に回していた手で俺の腰を軽く叩く。
「…打ってない」
いっつも勇斗が助けてくれるから、少しだけ申し訳なく思う。
そして、嬉しさで胸が苦しくなる。
ドキドキしながら見る勇斗はすっごく満足そうな優しい笑顔で、…こんなん本当に心臓がどうにかなりそうになる。タスケテ。
「二人とも大丈夫!?」
スタッフが集まってきて、太智たちも心配して上から降りてきた。
「うん、ケガとかはないと思う」
「もー、しっかりしてや吉田さん!」
「やっぱ俺が手ェ繋いで上がるべきやったわ」
「二人とも無事でよかった…これって動画撮れてます?」
俺たちの無事確認の後、柔太朗がスタッフに尋ねる。
その時やっと俺は、右手で勇斗の左腕、左手で勇斗の胸元にしがみついてる現状に気付いて慌てて離れた。
ここまで、撮られてる。
「ちょま…っ、こんなの公式で出さないよね!?」
「大丈夫やろ、そんな大袈裟な落ち方やないし。二人で転がったくらいやし」
「リーダーを助ける勇ちゃん!ってまた再生数かせげるで〜」
「さのじんは定期的に出してくべきだけど、自然に発生するから助かるね」
「やめてよ!こんなん俺がみっともなさすぎてやだ!」
俺がヤダヤダ抵抗しても結局は上手く編集されて、数日後には撮影風景でのハプニングとして公開されて、結構な再生数を叩き出すことになるのだった。
◇
「結局勇ちゃんが助けるオチやんな〜」
「別に勇斗に限らないし」
「いや〜、だってあん時俺やなくて勇ちゃんに掴まったの仁ちゃんやんか」
「あれは、とっさに…」
「とっさに選ぶのは勇ちゃんてことやな」
あの後は無事に撮影が終わり、次の仕事に向かった三人と違って比較的時間のあった俺と舜太と二人きりになった控え室で、今日の出来事を舜太が掘り返してくる。
俺は勇斗をそんなに頼りにしているのだろうか。
…頼ってるんじゃなくて、もっと別の感じで、勇斗を、俺は…。
「ま、ええわ。また勇ちゃんにヨシヨシしてあげてや、喜ぶから」
「お前もだけど、そんなんで嬉しいの?本当に犬なの?」
「嬉しいよ〜!褒められるのほんま嬉しい」
ニコニコしながらそう言う舜太は本当にそうなんだろうなって思う。
これからも成長は褒めてあげたい。
勇斗は…、成長とかとは違うけどそれで喜ぶんなら。
「…勇斗も嬉しいんだよな?」
「えー、でも勇ちゃんはぁ」
舜太がワクワクしたような、また余計なこと思いついたようなちょっと危ない表情で笑う。
…聞いても大丈夫か?
「仁ちゃんが飼い主になってあげたら最高に喜ぶと思うで!」
「…かいぬし?」
犬の?
「もっと可愛がれってこと?」
「いやいや…、まぁ、それでええよ」
舜太のことだから二歩先に正解があるんだろうな、と思う。
…正解ってなんだ?
不審げな顔をする俺を見ながら、舜太が『もう時間の問題や〜』といつものくしゃくしゃの顔で笑った。
終
後書きとか言い訳とかを次に上げます
コメント
1件
いやもう待って待って待って!仁人くんドッグトレーナーで大型犬二匹に囲まれてるの可愛すぎない?!😭💕 勇斗と舜太の仁人くんへの懐き具合が尊すぎて胸が苦しい…しかも転落シーンで無意識に勇斗掴んだのエモすぎるんだけど!!しかも左利きなのに右手で選んじゃうっていう…無意識に選んじゃうって正義すぎるだろ!!「飼い主になってあげたら」って舜太もなんか意味深で気になるよ〜🥺💕
まつ
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