あれから、桃くんは僕を色んなところに連れてってくれた
遊園地、動物園などのメジャーな場所から、
お花畑とか、あんま行ったことがないようなところにまで連れて行ってくれた
きっと、全部僕との思い出の場所なんだろう
どこに行っても、桃くんとならすっごく楽しくて、時間が一瞬のように思えて、
どんどん彼に惹かれていった
そんな中でも、一番よく行ったのが例の海。
毎日のように出かけても、綺麗だと思えた
そこに行くと毎回、桃くんは僕に愛を伝えてくれた
桃『青、好きだよ。誰よりも』
青「…うん、僕も好き」
桃『俺、青が記憶を無くす前は不器用で』
『気持ちを素直に伝えられなかったんだ』
青「…そうなんだ、」
正直、記憶を無くす前の話をされるのは好きじゃない。
桃くんが、悲しそうな顔をするから
今だってほら、そうやって
桃『でも、失ってからやっと時間の大切さに気づけたよ』
桃『ねぇ青、知ってる?』
『青が記憶無くして、明日で100日目なんだよ』
青「そう、なの、?」
桃『…毎日青に、好きを形で伝えるように頑張ったんだ』
青「そっか、ありがとう、」
桃『…帰ろっか』
桃くんは寂しそうな表情をした
僕だって
思い出せるなら思い出したいよ
青「…」
2人手を繋いで、
無言で歩く。
この時間が、ずっと続けばいいな。
きっと続いてくれるよね
桃『ぉ、青!!!!!』
青「っへ、?」
前を見たら、すごい勢いで走ってくる自動車
ぼーっとしていて気づかなかった
人生で2回も事故に遭うなんて
なんて悪運の持ち主なんだろう
あぁ、来世でも
桃くんに出会えたらな
そう思い、目を閉じた
ドンッ
青「…え?」
僕は横から突き飛ばされた感覚に驚いて目を開ける
その横で
赤い赤い血を流して倒れている
桃くん
なんで?どうして?
疑問だけが頭に浮かんで
何も考えられなくなった
人通りが少ない道だったから、
誰も声なんかかけてくれない
青「救急車、呼ばなきゃッ、!」
ピーッ、ピーッ
規則正しく鳴る機械音
あの病室に、また2人。
今度は僕がベットの横
僕がちゃんと注意してなかったから
ぼーっとしてたから
桃くんが…
どうしよう
桃くんが目を覚ましたとして、どんな顔で話せばいいの?
不注意で2回も事故にあって、桃くんが許してくれるわけない
どうしよう、どうしよう
真っ黒な何かが頭の中で渦を巻いて
離してくれない
ただ1人、涙を流して
ぐるぐるぐるぐる
考える
青?「ぁ、猫ちゃん、待ってそこに行ったら引かれちゃうッ!!」
桃?『はっ、青!?」
キキーッ!!
急に頭に流れ込んできた
過去の記憶
そうだ、僕は
猫を助けに道路に出て事故に遭った
僕は
桃くんが大好きだった
言葉にして伝えるのが苦手で、
不器用に笑いかけてくれて
一番に愛してくれる
桃くんが
大好きだった
僕が意識を戻してからの桃くんは
まるで別人みたいだった
好きを言葉にするのが上手で
僕にずっと笑いかけてくれて
僕が知ってる桃くんじゃないみたい。
桃さいど
青が事故にあって、俺は今までの行動を深く後悔した
なんで今までもっと好きって言わなかったんだ
だから次は後悔しないように
ずっと愛を伝えた
青と手を繋いで、
2人並んで歩く
ふと前を見ると、すごい速さでこちらへ向かってくる自動車
は、逆走!?
やばい、このままじゃ青が…
その時、時間が止まったように思えた。
また、青は事故にあって
助けられなかった俺は後悔するのか?
そんなの、絶対に嫌だ
体が勝手に動いて 青を押した
青さいど
記憶を全て思い出した
なんでこんな時に、
僕が事故にあったのを酷く後悔した桃くんは
僕にずっと好きを与えてくれたんだ
そんな、優しいところが
たまらなく好きなんだ
僕が記憶をなくしても
ずっと愛を教えてくれた桃くん
今度は僕の番だ
100回目の好きは
僕から伝えるね
100回で終わりじゃない
1万回も、100万回も
この先ずっとずっと桃くんに愛を伝えるよ
だからさぁ…
青「目、覚ましてよッ…!」
僕の目から溢れた涙が、
頬を伝って桃くんの寝るベッドに落ちる
青「すきっ、だいすき、愛してるッ泣」
青「桃くんがいなきゃ、僕生きていけないんだ」
青「ねぇ、やだっ、1人にしないで…ッ泣」
泣きつかれた僕は
そのまま眠った
青「んぅ…」
怠い体を起こすと、ぼきぼきと音がなる
あぁ、ベットに突っ伏したまま寝てしまったのか
そんなことを考えたのも束の間、
僕は目を見開いた
青「桃くん、っ、?」
目からは涙が溢れて、
よかった、本当によかった
桃くんに抱きつく
青「…ぁっ、!!」
この行動、前にも見たことがある
僕が記憶をなくしたときもこうだった
もしかしたら、桃くんも…
桃『青』
青「…!」
桃くんは微笑んで
桃『そこに、いるの?』
そう言った
青「…え?」
桃『ごめんね、青。ごめん』
意味のわからないことを言い出したと思ったら、急に謝り始める桃くん
桃『俺、失明…しちゃったみたい』
失明…?
僕を助けたせいで?
桃くんは、手を伸ばして僕を探った
そして手を握って
桃『愛してる』
そう言った
ざぶんと押し寄せる波に耳を傾ける
桃『いや〜、それにしても、青が記憶思い出してくれて本当に嬉しいよ』
青「うん、」
青「……きれ…、」
『綺麗だね』と呟きそうになって、慌てて口を塞ぐ
見えない桃くんに、綺麗だねだなんて、僕はどこまで馬鹿なんだろう
桃『青…』
『綺麗だね』
青「…!」
青「っうん、うんッ泣」
「きれい、すっごくきれい、泣」
桃『青、泣かないで』
『愛してるよ』
青「っぅ、ひくっ、」
「僕も、愛してるッ…!」
赤い赤い夕焼けに、
どこまでも続く海に飲み込まれないように
はっきり声にした
『愛してる』
目が見えなくとも
記憶がなくとも
僕たちが愛し合っているのに変わりはない
言葉は、世界共通の意思表示
誰でもわかるから
それは時に凶器にもなる
でも、『好き』の気持ちだけは
どんな人でも
どんな時でも
心を暖かくさせる、魔法の言葉なんだ
桃くんが、この景色が教えてくれた
時間は有限、言葉は無限。
僕は今日も桃くんに、愛を伝える
終わり^_^
短めの連載でした。
時間は有限ですよ
皆さん、今をなによりも大切に^_^
コメント
2件
え、、、好き♡締め方好きッ♪面白すぎ!!うん、もう、その才能頂戴(?)