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裕哉は帰って即座に風呂に入った。とにかく風呂でゆっくりしたかった。
「──あ、あの、もう私となんか関わらない方が、その、いいんじゃないでしょうか」
夏帆の言葉がふと頭をよぎった。もしかして話しかけ過ぎて嫌われたんじゃないか、と裕哉は自分の言動を省みそう思った。距離感を間違えないようにしようと思った。しかし、夏帆と関わりたい、という願望は増すばかりだ。
「あんな可愛い子だったんだ・・・」
裕哉は偉そうに人を品定めするのが嫌いだ。しかし、この時ばかりは思わずそう一人で呟いてしまった。放課後のあの時、一瞬目が合った。夏帆の顔がはっきりと見えた。透き通るようなすべすべの頬、シュッとした輪郭、真っ直ぐな鼻筋、綺麗な二重の大きな目。整った顔立ちで、美人と呼ばれる部類であるのは確かだろう。なのに、いつもメガネをかけていて、俯きがちで、本ばかり読んでいるから皆気付かないのだろう。誰も気にかけようともしない。
「ちくしょー、なんで今日が金曜日なんだよ」
明日が平日であれば、夏帆と話す機会があったかもしれない。せっかくほんの少しだけでも打ち解けたはずなのが、土日の間にまたもとに戻らないかと焦燥に駆られた。
風呂から上がり、裕哉は晩御飯をかきこみ、自室へと戻った。ベッドに寝転がる。すると,携帯が鳴った。従兄弟の岡本孝汰からだ。
「なんや」
「うぇーい、おいよもめぇ〜、バトロワやるぞ」
ゲームに誘われた。しかし、はっきり言って期末考査も近く、夏帆の事も考えていた裕哉にそんな余裕は無かった。
「フッ、勝手にしとけや」
「は?いやしかし何故にぃー」
──テレレン。
十秒足らず。裕哉は通話終了の赤いボタンを押してもう一度ベッドに寝転がった。いつもは孝汰とゲームばかりしているが、今日は違う。適当にスマホを見てから、早めに寝た。