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────《第五章:奪いに行く》────
太鼓は、まるで心臓そのものを殴りつけるようにドン、ドン、と響き続けていた。
燈華が儀式場へ向かい、町人達が泣きながら頭を下げる。
白い衣が風に揺れ、その小さな背中は月明かりに照らされていた。
キヨは縄で縛られたまま座敷に閉じ込められていた。
「クソッ…離せ!!」
必死にもがく。
俺の目の前で…大切な人が犠牲になるなんて、絶対に嫌だ。
縄で腕が切れようと構わない。
なんとか縄を引きちぎる。
バサッ!
自由になった瞬間、キヨは全速力で屋敷を飛び出した。
「燈華ぁぁ!!」
儀式場は町の中心にある古い神殿。燈華は静かに祭壇へ膝をつき、刀を前に祈りを捧げていた。
「どうか…この町に繁栄を。私の命と引き換えに――」
震えそうな声を、必死に押し殺す。
本当は…生きたいもっと…あの人と笑っていたい。
けれど、涙は流さない。
(私が泣けば、キヨ様が悲しむから)
刀を手に取り、胸元へ向けた瞬間――
「やめろぉぉぉ!!」
息を切らし、キヨが飛び込んできた。
燈華の体がビクリと震える。
「キヨ様…どうして」
「どうしてじゃねぇよ!」キヨは燈華の刀を掴み、投げ捨てた。
「俺は!燈華が生きていてくれるだけでいいんだよ!!町なんて知らねぇ!!燃えようが滅びようが!!」
燈華の心が音を立てて崩れていく。
「でも…皆が…」
――”皆の幸せ”よりキヨは燈華の肩を強く抱き寄せる。
「救いたいんだよ」
近い。胸の鼓動が触れ合うほどに。
「…キヨ様」
初めて、燈華は声を震わせた。
「怖いんです…生き残ってしまうことが…皆に恨まれることが…あなたに…嫌われることが…」
「嫌うわけねぇだろ」
キヨはその細い体をしっかり包み込んだ。
「生きろ、燈華」
燈華の瞳から、はじめて涙がこぼれ落ちる。
「……生きたい」小さな声。
「私は…キヨ様と…もっと笑っていたい…」
言った瞬間、地面が揺れ、風が唸り始めた。
魔が封じられていた力が暴れ出す。
人々が悲鳴をあげる。
「キヨ様、離れてください!」「嫌だ!離れない!!」
燈華はキヨを強く抱きしめながら叫ぶ。
「どうか…キヨ様だけは生かしてください!!私の全てを持って行って構いません!!!」
黒い渦が襲い掛かり――二人の視界が一瞬で闇に染まった。
次にキヨが目を開けた時──そこは教室。
職員室じゃない。江戸でもない。
黒板。教卓。見慣れた世界。
「……え」
夢?いや、それにしてはあまりに鮮明だ。
HRのチャイムが鳴り、扉がノックされた。
「転校生が来ています、先生」
キヨはドアを見つめる。
さっきまでわいわいと喋っていたクラスメイト達も、ドアを見つめる。
「入って来て…いいぞ」
ガラッ。
茶髪の長い髪。黒い澄んだ瞳。
「……っ」
その少女はキヨに目を向け、優しく微笑む。
そして、あの透き通った声で言った。
「紅月 燈華と言います」
時を越え、運命さえも超えて。
彼女は今を生きる燈華として、彼のもとへ還った。
いかがだったでしょうか!
初投稿でしたけど自分ではいい感じのができたと思います!
良ければ感想、コメントにお願いします!
それではまた次の物語でお会いしましょー!