テラーノベル
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「…汝陰鬱なる汚濁の許容よ、」
腹の奥、ずっと蓋をしていたものに手をかける感触。「汚れつちまつた悲しみに」――その最奥、俺自身にも制御できない、あの黒い奔流を。視界が滲んで、黒く染まっていく。
痛みなんて、もうどうだって良かった。
ただ、待っていた。聞き慣れた足音を。あの呆れたような声を。
黒が肩を這い、腕を這い、骨の軋む音がどんどん大きくなっていく。呼吸すら塗り潰されていく。
喉の奥で、言葉にならない音が弾けた。叫びともつかない其れが漏れ、次の瞬間には、音の形すら保てなくなる。
それでも、足音は聞こえない。それでも、待つのだけはやめなかった。やめたくなかった。絶対に彼奴は来ると、最後まで信じていたかった。
黒に沈んでいく意識の隅で、ふっと、あの声だけが蘇る。
「――愛してるよ、中也」
俺も、愛してるよ莫迦太宰。嗚呼、あの時云っておけば良かった。
その言葉も俺が欲しかっただけの、お誂えの幻だ。
それでも、その声だけを抱いて。
誰もいない部屋で中原中也はひとり、己の力に喰い尽くされていった。
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コメント
1件
第4話、めっちゃ刺さった…「汚れつちまつた悲しみに」をああいう形で使うのはズルいわ。中也の「待つ」って執念と、その声が幻でも抱きしめて終わるラストが切なすぎる。太宰の「愛してるよ」って台詞が逆に残酷に響くんだよな…。続きめっちゃ気になる!