TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

【ゲ謎】幽霊心あれば水心。【短編集】

一覧ページ

「【ゲ謎】幽霊心あれば水心。【短編集】」のメインビジュアル

【ゲ謎】幽霊心あれば水心。【短編集】

3 - それで逃がすとお思いか?【父水・鬼水・岩水】

♥

22

2025年05月08日

シェアするシェアする
報告する




幽霊族一家全員生存ifで水木さんと一緒に仲良く暮らすハッピー時空です。ゲゲ郎と岩子さんは仲良し夫婦だけど水木の事も同じくらい好き。水木を全力で落とそうと一家で企み中。


我が家の幽霊族マインド↓

ゲゲ郎》わしは妻も水木も愛しておるよ。幽霊族は人間のように一夫一妻制ではないしのぉ、とはいえ気が多いわけでもないんじゃが岩子と水木が特別なんじゃ


岩子》そうね。あ、でも私も水木さんだったらお嫁さんに欲しいわ


ゲゲ郎》む?


鬼太郎》ダメですよ母さん。水木さんは僕と結婚してもらうんです!


ゲゲ郎》き、鬼太郎…?


な関係。




年季の入った日本家屋の扉をガラリと開ける。「ただいま」と思いのほか草臥れた声が喉を通って出てきて自覚のない疲労に驚いた。

同時に、たたたっと軽やかな足音が廊下に響く


「おかえりなさい、水木さん。」


「ただいま、鬼太郎」


昔ほど元気に出迎えてくれる事は無くなったが必ず玄関先まで来て労ってくれる自慢の義息子に口元が緩む。上がり框(あがりかまち・玄関の段差)のせいで目線が近付いた少年が普段のお返しとばかりに頭を撫でてきた


「今日は特にお疲れみたいですね」


優しく髪を梳かれて玄関先だというのに眠気が顔をのぞかせる。目線だけをちらりと下げればちょっとだけ踵を浮かせて背伸びしている姿が目に入り愛しさでくすぐったい気持ちになった。

ほんと幽霊族ってのは、なんでこんな可愛いんだろうな

戦い荒んだ企業戦士の疲れも吹っ飛ぶってもんだ


「いつも出迎えありがとうな」


「いいえ…水木さんには僕が一番に『おかえりなさい』って言いたいんです」


もじもじと赤らめた頬を隠しつつ素直な言葉をくれる彼に胸の内が暖かくなる。子供体温につられ鬼太郎の肩口に顔を埋めると言いようのない幸福感に包まれた。ああ、このまま眠ってしまいたい


「水木よ〜帰ったのか〜?む、こりゃいかん。ここで寝ると風邪を引くぞ」


いつの間に現れたゲゲ郎が、水木の様子に気付くなりヒョイと足元からすくって横抱きにした。そのまま廊下を戻ろうとする父を驚愕の表情で後を追いかける息子


「ちょっと父さんっ後から来たのに水木さんを攫わないで下さいよ!僕だって運んであげられます!」


「おお、そうじゃったか。てっきり眠ってしまった水木に困っておるものかと」


「僕だって幽霊族ですよ!もう人間の水木さんより力あるんですから」


「そうか、そうか。倅が男前に育ってくれて父は嬉しいぞぉ」


「むぅ…」


大の男を軽々と運び危なげなく廊下を進む父。手足の長さによるリーチの違いでも差を見せつけられ鬼太郎はむっつりと頬を膨らませた。




「あら、水木さん眠ってしまわれたの?」


居間に着くと夕飯の支度をしていた岩子がエプロンで手を拭きながら近付いてきて夫の腕の中で眠る水木に目を丸くした


「こやつは働きすぎじゃ、そんなに金とやらを集めたいのかのぉ」


「水木さんはね、人間の世界の楽しい事を鬼太郎とあなたに沢山知ってほしいって言ってたの。あと楽しそうな2人を私に見せたいって、それにはお金が必要なんですって」


「みじゅき〜〜♡」


「でも水木さんも一緒じゃなきゃ楽しくないですよ」


「ふふ、本当にね」


3人で愛しい人間を取り囲み髪を撫でたり手を握ったり額に口付けたりと思い思いの愛情表現をする

自身が一番儚い存在である事を微塵も考慮していないこの人間が何時までも健やかでありますように。そして出来ればその姿を一番近くて見守れますように


「…ふは」


「「「っ!」」」


一体どんな夢を見ているのか幸せそうな笑顔をみせて眠る水木に全員が息をのむ。安心しきった表情は初めて会った時に感じた狡猾さなんて一切なく純真無垢な童のようだ。


「早急に我が同胞にしたいんじゃがダメかの?」


「黙ってやったら確実に嫌われますね」


「無理矢理は最終手段かしら」


複雑な心境を互いに共感しながら目が合った3人は同時に溜め息をついた。




水木がゆっくりと瞼を開くと、まあるい美しい月が淡く優しい光を放って目の前で輝いていた。一緒に屋根の瓦も見えているから、どうやらここは家の縁側らしい


『綺麗だ』


夜空をただ見上げるなんていつぶりだろう

人間って生き物は常に忙しくていけない。ちょっとはアイツらを見習って余裕をもたなきゃなと思いつつ大事な瞬間も忙殺され見落として、そして最終的に後悔で泣く憐れな生き物


「死に急いでんなぁ」


思わず呟いた声に反応したのか視界の端に銀糸が映った


「おぉ!お目覚めかの、眠り姫や」


「ゲゲ郎…?」


頭上で微笑むゲゲ郎の体勢からして、所謂ひざ枕とかいう恥ずかしい体勢である事を推察し早々に現実逃避しようか迷う水木。苦虫を噛み潰したような顔で口を開いた


「お前…男にひざ枕はないだろ。奥さんにしてやれよ」


「私がどうかしました?」


ゲゲ郎の隣からひょっこり顔を出した岩子が満面の笑みでこちらを見る


「わぁ!?岩子さんっ」


「はい!」


「はい!って居るなら止めて下さいよ」


「嫌ですわ、だって次に水木さんをひざ枕するのは私なんですもの」


「え」


「その次は、もちろん僕です!」


またもや岩子の隣から、ひょっこり顔をのぞかせたのは我が家のアイドル鬼太郎…いや、おっさんのひざ枕に順番待ちって何よ


「水木や何やら『死に急ぐ』などという不穏な寝言を聞いた気がしたのじゃが」


「え、ああ。いや…人間ってやつは何時も走り回ってて情緒やら何やら忘れがちになっていけねぇなって…月を見てたら妙に感傷的になっちまったんだよ。気にしないでくれ」


頭上とその隣から不思議な圧を感じて素直に思った事を口にする。黙っていると碌な事にならないのは数年ともに過ごしてきて学習済みだ


「ほう。人間をやめたいと」


「そうは言ってねーよ」


あまりに極端な話に吹き出してしまう。どんな顔して冗談を言っているのか気になり月の逆光を手のひらで隠そうとすればガシリとその手を掴まれ、思いのほか真剣な声がした


「水木よ人間をやめたくなったらすぐに言うんじゃよ。幽霊族一同、水木が同胞となるのは大歓迎じゃ」


隣で何度も頷き同意の意思を伝えてくる岩子と鬼太郎

そんなに首を振ったらとれちまうぞ


「…はは。ありがとうな…けど悪い。今世は人間として死なせてくれ」


「何故じゃ」


「何故って…」


「納得のいく答えじゃない場合は儂らも最終手段に出るやもしれんぞ」


「何する気だよ」


『そりゃまぁ色々と〜』と目線を外すゲゲ郎に『何かしやがったら化けて出てやるぞ』と脅したら目を輝かせて3人から『ぜひ!』と言われた。解せない。


「未来に絶対はない。だから今の俺の気持ちを言わせてもらうなら…同じ人間として戦友(とも)に会いたいから…かな」


「友に…」


会って抱き合って『ありがとう』って『俺たち頑張ったな』って『お前らのお陰で俺は運命に出会えたんだぞ』って『きっとまた人間として生まれよう』ってあの時泣けなかった分、恥ずかしいくらいに泣いて泣いて、それから前を向いてほしいんだ

アイツらの死が無駄では無かった事の証明に少しでも俺がなり得たら

生き抜いた先の俺自身もきっと救われる


「ずるい言い方じゃ」


「本心だ」


「運命に出会えたなどと、そんな風に言われたら止められん」


「それも本心だ」


「うぅ〜…」


大粒の雨が突然降ってきたかと思えばゲゲ郎の涙である事に気付き流石に可哀想になってくる。手を伸ばし涙を拭くと腕を伝ってゆっくりと流れきた


「でも『未来に絶対はない』んですよね?」


力強い鬼太郎の声と視線がこちらを射抜く。それに勇気を貰ったのか岩子も笑顔で続ける


「幽霊族は、諦めが悪いんですのよ」


「そうじゃあ覚悟せい、みじゅき〜」


ぐちゃぐちゃの顔で強気な発言をするゲゲ郎に耐えきれず、すでに白旗を立てたくなる自分がいて困る。

そうなった未来が、もし来たとして友は許してくれるだろうか。



『しょーがねぇな水木は!』


瞼の奥で、あの暑すぎる南方の海を背に未だ閉じ込められた戦友達が笑った気がした。



おわり





思ったより長くなった…読んでくださった方ありがとうございました!

この作品はいかがでしたか?

22

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚