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第3-2話 見学


部活が終わったあと、私は職員室で今村くんのことを少し調べていた。

やんちゃな子というのは確かなようだが、それだけではないような気もする。

私が今村くんの情報をチェックしていると、学園長がやってきて「あの子は不良少年で有名なんだよ」と教えてくれた。

この学園に入る前から、よくトラブルを起こしていたらしい。

しかし、学園長は「だが、誰にも暴力を振るったことはないんだ」と付け加えた。

キレやすく、すぐに暴れるが絶対に誰にも暴力は振るわない少年……それが今村くんということだった。


「なぜ、暴力は振るわないんですか?」


私が思ったまま、疑問を口にすると学園長は静かに目を瞑った。

そして、「わしと彼のことを信じて、広い心で接してみてはくれんか?」とだけ言った。

私は学園長の言動に疑問を感じつつも、彼を信じて接していくことに決めた。


********************


4月14日(木)


初日は仮入部者は0であった演劇部だが、その後は徐々に仮入部者は増えていき、今は2人の仮入部者がいた。


「2人かー。中山さんを入れても3人。これだと部から同好会に格下げかなー」


私が生徒を眺めながらそんなことを呟いていると、入り口のドアが開く。

生徒の注目が入り口に集まる。もちろん、私も注目していた。そこに立っていたのは、今村くんであった。


「よぉ、見学に来てやったぜ。別に構わねぇよな?」


今村くんは練習中の生徒を眺めながら、私の方を見てそう言った。彼も演劇部の入部希望者なのだろうか。


「もちろん、構わないよ。こっちに座って見学してるといいよ」


私は今村くんを手招きし、自分の隣の椅子に座らせる。今村くんは椅子にどかっと座ると、面白くもなさそうに見学していた。

現状でまともな芝居が出来るのは部長の中山さんだけなので、見ていても面白くはないかもしれない。


「どう? ほとんどが仮入部者だからレベルは高くないけれど、その分、1からしっかりと学んでいくことが出来ると思うよ」


私の言葉を、今村くんは完全に無視してぼんやりと部員を眺めている。だれか、気になる部員でもいるのだろうか?


「なあ。普段は部活紹介のときみたいな事はしないわけ?」


今村くんの突然の問いに、部長の中山さんは少し困惑しつつも「してないけど……」と答える。


「なんだ。つまんねーの」


今村くんはそう言うと、席を立った。そこで私は今村くんに問いかけてみることにした。


「男女逆転劇に興味があるの?」


「いや、部活紹介が面白かったから、そういう部なのかなって思ってさ。普段は真面目に練習してるだけかよ」


私の質問に、どうでもよさげに答える。


「男女逆転劇を頻繁にやるような、不真面目な感じの演劇部ならちょっとは興味ある?」


「そうだな。自分がやるのは死んでも嫌だけど、他の奴の女装姿とか見てるのは面白そうだな」


私の質問に今村くんはあっけらかんと答える。


「自分でやるのは嫌なのか。でも、男女逆転劇自体には興味がある……と。中山さん、どう思う?」


私が話を振ると、中山さんは「やってもいいけど」と簡潔に答える。


「おっ、マジ? じゃあ、ここに参加すればいつでも女装が見れるのか。それはおもしれーな」


今村くんは中山さんの返事に満足したのか、もう一度椅子にどかっと座る。


「今村くんは、女装男子が好きなわけ?」


「んなわけ、ねーだろ!」


私が思わずそう聞いてみると、顔を真っ赤にして否定する。そんなに否定すると、逆に怪しい。

他の生徒もそう思ったのかくすくすと笑っている。


「なんだ、てめーら! ぶっとばされてーのか!」


今村くんは怒鳴りながら立ち上がる。生徒たちはその剣幕に驚いて静かになる。


困った子だなーと思いつつも、私は止めないでおいた。今村くんは部員を殴ったりはしない。そんな気がしたからだ。

しかし、怒りながら部員に近づく今村くんを部長の中山さんが押しとどめた。


「なんだよ、あんた。女だからって手を出さないと思ったら大間違いだぞ!」


今村くんはそう言って凄むが、それ以上そこから動かない。仕方ないなぁ……。


「今村くん。そのくらいにして、こちらに戻っておいで」


私がそう言うと、助かったとばかりに戻ってきて私に脅しをかける。


「なんだよ! センコーだからって殴られないと思ってんのか?」


「先生だからって訳じゃないけど、殴られないとは思ってるよ」


私は今村くんの脅しに対し、静かにそう答える。


「なめてんのか、てめぇ!」


今村くんが怒りのあまり私の胸倉を掴む。

画像 「なめてはないけど、やっぱり今村くんが私を殴るとは思ってないし」


私がそう言うと、今村くんはますます強く胸倉を掴む手に力を込める。


「こんな風にされて、なんで俺が殴らないなんて言えるんだ!」


「だって、今村くんは本当は優しい人なんでしょ?」


今村くんの問いに、私は静かに答える。


「なに……言ってやがんだ……」


そう言いつつも、今村くんは私の胸倉を掴んだ手を離す。そして――。


「あんたが俺にビビるようになるまで、この部に居座ってやる」


そう言い残して部屋を出て行くのだった。素直じゃないなぁ……。

でも、部員ゲット。

そんなことを思いながら、今村くんの後姿を見送るのだった。

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