テラーノベル
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部屋には沈黙が漂っていた。胸の奥がざわつき、呼吸が浅くなる。
「え……」
奈央の小さな声だけが、空気を震わせる。
言葉にならない戸惑いに、頭の中は真っ白だ。
腕の感触、視線の重なり、告白された瞬間の胸の高鳴り。
全部が現実で、なのにどう処理すればいいか分からない。
広瀬は、ただ真っ直ぐ前を見つめて、奈央の手に触れている。
言葉はない。
その無言の態度に、奈央の心臓はますます跳ねる。 指先の震えを感じながら、深呼吸をして落ち着こうとするけれど、全然収まらない。
そんな時、楽屋の扉が開く音がした。
「おーい、戻ったよー!」
奈央は咄嗟に広瀬から距離を取り、ほんの少し腕を引く。
触れた温もりが、まだ手のひらに残っているのを感じながら、慌てて笑みを作った。
「……おかえり!」
奈央は小さく息をつき、心臓の高鳴りを落ち着かせようとする。
広瀬は何事もなかったかのように、淡々とギターや機材に手を伸ばし、声をかけるでもなく、いつも通りに戻った。
告白の瞬間は、まるでなかったかのように。
同級生たちが入ってきて、楽屋は賑やかになる。 会話と笑い声が響き、機材を片付ける音も混ざる。
奈央はその様子を見ながら、まだ胸の奥がざわついているのを感じた。
四人での片付けは自然に進む。
会話は日常的で、告白のことには触れない。
奈央と広瀬の距離感も、普段通りの軽い距離感に戻った。
それでも、奈央の胸はまだ少し高鳴っていて、手のひらに残る温もりが忘れられない。
ーーーーーーーーーーーーー
「じゃあ、私たち先に帰るね」
片付けが終わった同級生たちは、笑いながら扉を開け外へ出ていった。
楽屋に残ったのは、再び二人だけ。
静かになった空間で、奈央は息を整えようと深呼吸をするが、胸の高鳴りは収まらない。
「……あの、さっきのあれ」
奈央は意を決して声をかける。
「もう一回、ちゃんと……言ってほしい」
広瀬は一瞬手を止め、奈央を見つめる。
「ちゃんと、ですか?」
奈央は頷き、心臓がさらに早鐘のように打つ。
深呼吸をして、広瀬くんは奈央の目をしっかりと見た。
「俺、奈央さんのことが好きです。
付き合ってください」
その言葉は、胸の奥にまっすぐ届き、奈央の指先が少し震える。
戸惑いと高鳴りが入り混じる中、奈央は微笑んで頷いた。
「はい、お願いします」
広瀬は自然に手を差し伸べ、軽く触れる。
その温もりで胸の奥が甘く熱くなる。
広瀬も、奈央を見て柔らかい笑みを浮かべていた。
二人は沈黙のあと、機材の片付けを続けた。
その中に流れるのは、先ほどまでのぎこちなさとは違う、温かく特別な空気だった。
コメント
3件
最後までご愛読いただきありがとうございました! 次回作も順次公開予定です。
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野々さくら
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misaka
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