初投稿だよ
小さい女の子とちゅうや(16才)
ストブリ軸だよ
他のサイトで投稿したものです、同じ作品があってもパクリではないと思ってね
彼女はひんやりとした白い便器に顔を寄せながら嗚咽を吐きただただ泣いていた。彼女の涙はトイレへと落ちていき、無理やり口に入れ込んだ指は自身の唾液で濡れていた。便器に倒れ込むように丸くなっている小さい背中はもう痩せこけ白いセーラー服を着ても背骨の形がわかるぐらいになっていた。体も年齢も小さい彼女の抱える物との対比が強く感じられてしまうほどだ。いつもより嘔吐が長く続いたので心配になってトイレに行ったが、背中をさすっても一向に止まらず、僕は声を掛けることしか出来なかった。
「大丈夫?(なまえ)ちゃん、気持ち悪いよね」そう言ったものの彼女から返答はなく、先程一緒に食べて胃に運んだケーキが今ここで、彼女によって混ざりきり変化し身に覚えの無いものへとなり冷たさをも感じる純白のトイレと落下していった。そして5分後、やっと彼女の様子がマシになってきた。背中の震えが収まったことを確認し、もう一度「大丈夫?」と声を掛けると先程とは違う、しっかりとした声で「大丈夫、ごめんなさい」と笑って言ってくれた。彼女との不安定で安心が出来ない、いわば気持ちの悪いこの時間が段々と好きになっていくのはれっきとした洗脳と彼女への甘えのような怠惰から生まれたものなのだろう。
久しぶりに仕事が早く終わった日曜日。酷く雨が降っていて、昼間の12時だったが夕方の6時頃にも思えるぐらいで警報も出る大雨だった。彼奴(あいつ)が読みたいと言っていた本を買っていたのを思い出し、渡してから乗ってきた車で一緒に帰ろうと思っていたが、雨が強すぎて車に乗るのも難しいかもしれない。彼奴はマフィアにいるとき、首領の目が届くほどに(比喩)近くに居ろと指定を受けている言わばお姫様だ。勝手に出ていかないように、とマフィア内にも彼奴専用の部屋を作り、今日のように家に帰れない時などにはそこに二人で泊まってマフィアで夜を越すことも多い。
エレベーターでマフィアでも高い地位を持っているものしか通れない階に登っていく。俺自身も、幹部までの地位ではないが、彼奴との関係性もあり出入りの許可を首領から取っている。彼奴の部屋の前まで来てみると、見た事のないドアプレートが掛けてあり、エリス嬢の仕業だろうか「ノックして!」と大きくカラフルに絵の具で書かれていた。俺の異能でもギリギリ壊れるかどうか分からないほどに頑丈な鉄のドア。倉庫のように外側しか鍵をかけられないようになっている。
全て、彼奴が逃げないようにするため。彼奴はマフィアの外、それも俺達がいない世界には知識量と体力が少なく生きていけないだろう。絶対的に服従している彼奴がマフィアを裏切ることはありえない。俺と同じように。そんなことなど分かりきっているのに、こんな風に物理的にも彼奴を逃がさないという気持ちが嫌というほど感じられた。柄にもないことを考えていたら段々と気分が悪くなってきた。3回ノックをして「入るぞ」と声を掛けたが彼奴からの返事はなく、ドアが開いたと思ったら案の定俺が待っている奴ではなく絶対会いたくねぇはずのクソ太宰だった。
「ゲッ、やっぱ中也。よかったぁ、あの子が出ようとするの止めて。」
わざとらしく嫌な顔をした後、俺が持っている有名な本屋の紙袋を見て「あぁ、なんだ。」と声を出す太宰。
「いいよ、僕が渡しとく。」
「どうせ手前は(なまえ)に渡さず捨てるだろ。」
「あはっ、バレた?燃やそうと思ってたんだけどねぇ」
しょうがないなぁ、特別に入れてあげるよ、とあたかも自分の部屋に人を入れるようになっていることにムカつきながら、鉄のドアノブを手前に引き、手を使わずに足の踵と踵でスニーカーを脱いだ。毎日仕事で履いている革靴は今、靴磨きに出していてせっかくの休みだからと暑苦しいスーツと首領から貰った帽子とは違う少しだけ動きやすい服にしてきた。玄関から少しだけ歩くと服も髪も肌も真っ白なそいつの後ろ姿が見えた。エリス嬢に髪の毛を弄られていて何時もとは違うツインテールになっていた。高く上で縛れている髪はまるで兎の耳のようで、結び目に飾られている赤いリボンがその可愛らしさをより一層際立たせていた。
「ねぇ、チュウヤ!見て見て!似合ってるでしょ?」
エリス嬢の声で俺の存在に気付いた(なまえ)は雪のように白い頬を振り返らせ、まだまだ幼い顔立ちで驚いた顔をした。数秒間、そいつと目が合っていたが、太宰の気持ち悪い声で遮られてしまった。
「いいや、中也はセンスが微塵も無いからこの究極な可愛さは分かりっこないよ。可哀想でしょ。」
「おい、てめぇ骨折られたいのか?」
「いーや、僕はそんな趣味ないよ。あ、そうだ、ケーキ買ってきたんだ。僕と(なまえ)ちゃんとエリス嬢”だけ”で食べよう。」
「無視すんじゃねェよ。クソ太宰」
太宰は部屋の冷蔵庫からケーキを慎重に取り出した。昼飯を入れるための冷蔵庫から見えたのは水のペットボトルと栄養ゼリーだけだった。(なまえ)は太宰からお気に入りのウサギがプリントされているカップを取ってもらいキッチンでポットを持とうとしていたがそれは俺が止めた。ポートマフィアで齢九歳として首領と同じぐらい厳重な警備を受けているちっぽけなヤツに火傷なんてされたら監視をしていたにも関わらず怪我をさせたという重大な過失で俺と太宰の首が飛ぶ。(太宰はどうでもいいが)
「なに飲みたいの?入れるよ」と自分より随分小さい(なまえ)に向けて、いつもとは違う気持ち悪い顔で微笑むクソ太宰にだんだんと嫌気がさしてきたのでしょうがなく、そいつがよく飲む紅茶のティーパックが入っている缶を太宰に突き出した。
「これでいいの?」と一応確認をする太宰に小さく頷くそいつを見ているとなんだが親に怒られて悲しんでるガキに見えてくる。
「中也なんで知ってるの!?キモーイ」「あぁ?」馬鹿みたいなやり取りを聞いていた(なまえ)を横目で少しだけ見ると翡翠色の眼とまた目が合った。だが、(なまえ)はすぐに目を逸らし太宰のコートを握りながら背中に隠れてしまった。
「あはは」と気持ち悪く笑いながら俺を見る太宰は馴れ馴れしい手で結ばれた(なまえ)の髪を触った。馴れ馴れしい、と言ってもクソ太宰と俺はどちらも同じように(なまえ)と時間を過ごしている。ただそいうが俺の監視対象&部下となっただけだ。俺がいないときは太宰にその仕事は変わるし、ポートマフィアにいるときは二人と一緒にいるということが多いため、どちらが特別かなどまだ成長しきっていないそいつにはどちらが嫌いだとか好きだとか、そういうのは分かんないんだろう。
ただ中原中也が嫉妬心で太宰が馴れ馴れしく触るのを嫌っただけのことであった。
「ケーキ食べよ?ね。」
「うん」しかし中原中也はケーキという単語を聞くだけで嬉しそうな顔をする(なまえ)を見ながらエリス嬢の首領の気持ち悪い話を聞き流し、自分で入れた紅茶を啜っていた。
「うんとねー、エリス嬢はフルーツ系でしょ、それで(なまえ)ちゃんは生クリーム?チョコよりはそっちの方が良いよね」
なんか中原の顔を気持ちが悪いな、と思いながらケーキの説明をしていく太宰。ケーキの数はしっかりと太宰、エリスそして(なまえ)の分の3つしかなかった。
「私これがいい。かな、」とにやけながらショートケーキを取る彼女。
「えぇ?!(なまえ)って毎回それじゃない!飽きないの?」
と言いながらもエリスは自分で選んで決めたフルーツタルトを取っていて、さっそくフォークでフルーツを刺していた。
「うん。」おうぎ形のショートケーキの先には兎の顔になっている生クリームがあり、真ん中には真っ赤な苺が置かれている。その苺は最初に食べるか最後に食べるかと長年迷っているものの毎回最初に食べることは出来ず、最後に食べて生クリームの甘さで口が麻痺しているせいかあんまり甘くない、という現象に追いやられている。
「今日も先に食わねぇのか?」
太宰がチョコケーキに手を出したにも関わらず未だに悩んでいる(なまえ)に紅茶を飲みながら質問を投げかけた中原に対して(なまえ)は「今日は食べてみる」と投げかけ半場無理やりフォークで苺を刺し口に放り込んだ。苺を噛むといつもとは違う甘い味が口の中に広がった。「どう、美味しい?」
「うん。あまい」
「こっちも美味しいよ、食べてみて」
(なまえ)の持っているチタンプラチナ製のフォークが太宰の食べかけのチョコレートケーキを小さく突き刺した。
ケーキを食べ終わった後、(なまえ)の顔色が悪いことに気がついた太宰は中原に小さな声で
「一応、森さん呼んできてよ」と言った。今日は大きな任務はなく、ただエリスと(なまえ)が森のいるところで遊ぶのが嫌だ(エリスだけだが)ということで(なまえ)の部屋で遊ぶことになっただけだったので悔しながらも森は太宰にカメラを渡し「可愛く撮ってきておくれ」などと犯罪者並みの形相で頼み込んだ。顔色が悪いだけだが、そんな小さな変化こそ(なまえ)に取っては大きな前触れを示すものだった。
多分続く
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