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実験記録:No.0-δ「心音観察」
これは最も“静かな”実験。
零雨は被験体の胸元に手を近づけるだけでよかった。
「君の心臓、どう動くか気になってね。
ほら、そのまま力を抜け」
「……ぁ……」
「安心しろ。心臓は止めない。
今日は音を聞くだけだ」
彼女は被験体の胸に耳を当てた。
静かに、淡々と。
「ふむ……鼓動が速いな。
恐怖か、怒りか……それとも単に“私が嫌い”か?」
眠気の中で被験体は小さく呟いた。
「……こわい……だけ……」
零雨は目を細める。
「正直でよろしい。
でも安心したまえ、私の好奇心が尽きるまで──
君は死なない」
それは慰めでも、脅しでもない。
“宣告”だった。
実験記録:No.0-β「影の伸縮」
「さぁ、次は歩くだけでいい。簡単だろう?」
零雨が足元の床に描いたのは奇妙な紋様だった。
被験体がその上を歩くと__
影が被験体の意思に反して
勝手に付いてきたり、遅れたり、伸びたり縮んだりする。
「ひ……っ……!」
縫いとめられたように影が引きずられる感覚。
皮膚の裏側が冷たくなる。
零雨は、まるで人間のふりをした悪魔みたいに笑っていた。
「怖いか?
大丈夫、影がちぎれたところで、死にはしない。
……多分」
「た、多分って何……!」
「結果を見ないとわからないという意味だよ。
科学的だろう?」
被験体は震えながら紋様の外に飛び出した。
影はゆっくりと元の形に戻る。
「……はい、合格。
影の耐久性、意外と高いな」
「これの何が“合格”なの……?」
「私が楽しめたからだよ」
小規模実験・〈鏡像反応試験〉
(代理視点)
部屋の中央に、大きな黒い鏡が置かれていた。
ただの鏡じゃない。零雨の目が「おもしろいもの」と言う時の光をしている。
「そこに立て、No.0。……逃げる必要はないだろう?」
静かに歩く零雨の足音は、床を踏んでも音を作らない。
それなのに近付いてくる気配だけは、明確で息が詰まる。
鏡の前に立たされる。
そこには──“私じゃない何か”が映っていた。
「……なに、これ……」
「鏡だよ。君の“姿”を見たことがないだろう?」
零雨は淡々としている。
私は震える指で、鏡に触れた。
触れた瞬間、自分の手が嫌になるほど気持ち悪かった。
「やっぱり……化け物……」
小さく漏れた言葉に、零雨が反応した。
「化け物? 違うだろう。
化け物と言うのは“分類不能で恐れられるもの”だ。
お前はただの──私の実験でできた産物だよ」
その一言で心が凍る。
零雨は鏡の横で、愉快そうに目を細めた。
《反応:自我否定 → 鏡像拒絶。
他者基準でなく自己嫌悪が主体。
非常に興味深い》
「……壊していい…?」
「ほう? 壊したいのか?
理由を述べたまえ。私が価値を感じたら許可する」
喉が詰まって言葉が出ない。
鏡の中で、私が泣きそうになっていた。
「……嫌いだから」
零雨は微笑む。
「実にいい。『嫌い』は感情だ。記録しておこう」
小規模実験・〈言語刺激テスト〉
机に並んだカード。
そこにはよく使われる単語が印刷されている。
「No.0、これは“言葉の反応試験”だよ。
きみは語彙が未発達だからね。補填してやろう」
零雨は一枚取り上げた。
『やさしい』
「……読めるか?」
「……やさしい……?」
「意味は?」
「……痛く、ない……?」
零雨は小さく笑った。
「惜しい。“こういう人間になりたい”と思う者の言葉だよ」
次のカード。
『殺す』
「これは?」
「……得意……」
「はは。そうだろうな」
カードが次々と並べられる。
『生きる』
『愛』
『自由』
『痛み』
『お前』
『零雨』
最後のカードを私に見せたとき、心臓が跳ねた。
「反応が変わった。なぜ震える?」
「……知らない」
「知らないのに震えるのか?
無意識での反応は非常に、非常に貴重だよ」
零雨は満足げにペンを走らせた。
小規模実験・〈感情模倣テスト〉
「お前、笑えるか?」
「……わら、う……?」
「表情筋のテストだよ。
“笑顔を知らない人間”の歪みを観測したい」
零雨は鏡を持ってくる。
「こうやって笑うんだよ」
微笑む零雨はどこか怖い。
私は言われた通り、口角を上げた。
うまく動かない。
「……ふふっ……」
零雨が笑った。
「気味が悪いな。だが面白い」
記録しながら満足げだった。
↑チャッピーに作らせました:)
コメント
2件
後半2つはなんとなく平行世界でなんかあった代理と零雨の話。