テラーノベル
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⚠注意⚠
・cp→stxlより水赤
・この小説はnmmnであり、ご本人様とは関係ありません。
・ヴァンパイアパロ
水さん→人間 / 赤さん→ヴァンパイア
※パロですが基本的に公式通り、歌い手をしている世界線です(ヴァンパイア要素は薄め)。
近いうちにリクエストの3作品目投稿します、遅くなりすみません。
5行下から本編です。
深夜にちむから「お願いあるから家来て」と連絡が来て、軽い身支度だけをして家を出た。
こんな時間帯に、対面でないといけない頼みに覚えはなかった。
急に怪我でもして動けなくなったのか、それとも……? 夜遅くの思考力の低下した脳では、思い行き着くはずもなかった。
ちむの家の玄関を開けると、部屋に通される猶予もなくれるに近づいて、肩ごと引き寄せられる。
「血、のませて」
何の説明もなくそんなことを言われては、状況を理解できない。
ち、血……? ドッキリを疑うことも冷静に事情を聞くこともできずに、ただ驚いてその場に固まる。
れるの硬直を肯定と受け取ってか、ちむはれるの髪を払って、首元に口を寄せる。かと思えば、何かが吸い込まれるような感覚がした。
「…………い……っ、」
だんだんと意識が朦朧としてくるが、なんとか全身に力を入れて耐える。
しばらくしてちむが口を離し、れるを見つめた。その間も、れるは何も言えなかった。代わりに、目の前の人物が口を開いた。
「初めて会ったときから思ってた、れるさんいい血の香りするなって」
れるはそのときになって、ようやく実感した。
こいつ、こえくんが……人間を吸血する、ヴァンパイアであることを。
「急にごめん……どうしても、今飲みたくなって」
自身がそれであることの説明は省いて、謝罪を始めた。だけど、れるは「ごめん」なんて言葉を欲しているわけじゃない。
「ええよ、謝らんくて」
それから、一呼吸置いて尋ねる。
「それより、これからも飲みたい?」
「……え、」
そんなことを聞かれるとは、多分予想していなかったんだろう。こえくんは弾かれるように俯いていた視線をもとに戻した。
それから、こくんと静かに頷いた。その様子を見て、れるはひっそり口角を持ち上げた。
「じゃあ、また明日れるの血あげる」
「……いいの?」
遠慮がちに聞いてくるから、思わず「何今さら遠慮してんねん」と笑ってしまった。ちょっとだけ茶化しながら頭を撫で、その日は帰宅した。
それから数週間経って、れるがちむに血をくれるのが習慣化した。れるさんは貧血にならないように鉄分を多く含む食品を摂取するようにしたり、それ用のサプリを飲んだりと対策していた。
それでも申し訳なさが勝って他メンやスタッフさんからも血をもらったり、飲む量を調節したりした。
その日はちょうどれるさんの家で作業していて、帰り際に血をもらう約束をしていた。
完全に習慣化していたので、自分から吸血しやすいように服の襟を捲ってくれる。
いつも通り歯を立て、血を自分の体内へと取り込む。最初は気づかなかったけれど、途中で流れ込んでくる血の味に違和感を覚える。
「きょうのれるの血、味ちがう…?」
だけど味以外に何か変化があるわけでもなく、安堵のため息を吐く。一応体調を考慮して、吸血を終えてからすぐに帰路に着いた。
その次の日は、社内でも仲の良いスタッフさんに協力してもらう予定だった。
これまた事務所を去る前に、小さめの部屋を借りて、そこにそのスタッフさんと一緒に入る。
このスタッフさんからは既に数回血をもらっていたので、ちむが飲みやすいように少し屈んでくれた。
いつものように口を当て、飲み込む。
……はずだった。
血を吸い始めた瞬間、それらは体内に行き着く前に、下へ流れ落ちていった。
「げほっ……、ぅぐ…………っ、」
咳き込みながら、無意識に血を吐き出す。フローリングが朱に染まっていく。
「え、こえさん!?」
正気でないちむの様子を見て、スタッフさんはちむの背中をさすりながら、大丈夫?と顔色を窺う。
「っう゛……、ふ…………、」
スタッフさんが言うようにゆっくり深呼吸しながら、平静を取り戻そうとする。それでも、血を取り込もうとしたときの違和感が消えることはなかった。
体がまるで言うことを聞かなかった。吸いたいはずなのに、異物が体内を逆流してくるような不快さだけを感じた。
息が整ってきたところで、やっと正常な感覚を取り戻した。それにスタッフさんも気がついて、床を掃除する道具を取りに他の部屋へ向かった。
「一応休んでて」と言われその優しさに感謝しながら、頭の中はハテナでいっぱいだった。
こんなこと、今まで一度もなかったのに。むしろ、もっと飲みたいとさえ思うことも多かった。それなのに、どうして急に受け付けなくなったのか。
あれこれ考えているうちにスタッフさんが戻ってきて、一緒に片付ける。血の匂いが残っていたら事件だと勘違いされそうだと、スタッフさんは笑っていた。
そんなことがあってから、血を飲むのが怖くなった。もともと僕はサプリを飲むことで、血を飲みたいという欲を抑えていた。
しかし愛用していたサプリが販売終了ということになった。れるさんに頼んだのをきっかけに、他の人から吸血させてもらうことで補うようになった。
でも再び他人の血を飲まなくなって、欲のはけ口が分からなくなった。別のサプリを買えば済むのだけれど、それまでずっと同じものを服用していたから乗り換えるのには抵抗があった。
しかも、ちょうど金欠だったので別のサプリを購入するのにますますためらいが生じた。
しかし人から血をもらわないしサプリも飲まないしで普通でいられるはずがない。
いろいろ考えた結果、病院に行くことにした。そうすればあのとき吐き戻した原因も分かるだろうし、人工血液を注入してもらえるかもしれない。その病院はれるも何日か前に行っていて、評判も知っていた。
隙間を縫って平日に病院に行ったので、比較的患者は少なかった。スムーズに診療室に通され、診断結果を待つ。
そこで聞かされたのは、予想外の結果だった。
「こえさんには、中毒症状が出ています」
「……中毒?」
聞き返すと、担当医師が「はい」と言いながら眼鏡を持ち上げ、説明を始めた。
「特定の血液に対する中毒症状ですね。ですので、それ以外の人間の血を吸おうとすると吐き出してしまいます」
「……特定の血液って、どんな血液ですか?」
「誰か特定の人物の血、ということです。まだ誰かまでは特定できていないので、これから調べることになります。1時間ほどかかりますが、今から調べますか?」
「お願いします……」
流されるままに、自然と頷いていた。さらに奥の部屋に案内され、そこにあるベットに横になる。
ただでさえ血が足りていないのに自分の血を採血され、頭がくらっとする。それでも誰の血液への中毒状態なのかという疑問にとらわれて、ささいな体調不良なんて気にならなかった。
安静に待つよう指示されたため、1時間近く何もできない時間が続いた。貼られているポスターを眺めたり、脳内で音楽を再生したりしても、全然時間の経つ気配がしない。
そうやって待ちながら、とうとう「お待たせしました、こちらにどうぞ」と促され、また別の部屋へ通される。早く結果を聞きたい気持ちとまだ聞きたくない気持ちが押し寄せ合った。
「こちらの方の血液に対する中毒症状だと思われます」
医師が言いながら、1枚の資料を差し出す。そこには小難しい文字列が多く並んでいたが、そこに載っている人物だけは理解できた。
「、れる……」
ぽつりと呟いてから、「どうすれば中毒じゃなくなるんですか」と尋ねた。
医師はその質問に頭を捻る。
「こえさんの血液に中毒症状の原因となる物質が含まれているので、それを取り除けば解消できます。しかし、既に血が全身に回っているので、血漿交換する必要があるんです。そうすると体に必要な物質まで排出されてしまいます。副作用も多いので、こちらからはおすすめできないです」
他にも具体的な説明をされたが、最後にはこんなことを言って話を切り上げた。
「ご本人様から定期的に血を摂取していただければ、それが一番です」
その日はいったん「わかりました」とだけ答え、病院をあとにした。治療をするなら即座に決めるべきことではないし、かと言ってこのままの状態でいいとも思えなかった。
自宅に帰る前に、連絡を入れてかられるの家へと向かう。この状態を伝えなくちゃいけないし、既に今、血を飲みたいと体が告げている。
病院でもらった資料を見せながら、れるに自分の症状を説明する。れるは特に驚きもせず、静かに話を聞いていた。その様子に、ちむのほうが驚かされた。
「……びっくりしないの? 今後、れるさんの血しか飲めないんだよ」
「うん、知ってた」
「……え?」
『知ってた』の4文字に、僕はますます呆然とする。
「なぁ、なんでこうなったと思う?」
「なんで、って……」
「変だと思わなかった?」
僕に考える余地を与えることなく、れるは質問責めを続けた。
「今まで普通にいろんな人の血飲んでたのに、ある日を境に飲めなくなった。でも、れるのだけは飲めるんよ?」
「……おかしい、けど」
なんで、僕より先にれるが知ってるの。聞きたかったけど、聞けなかった。
言葉に詰まる僕の向かい側から隣に移って、れるは顔をぐっと近づける。
「もうれるの血しか、飲めへんな」
そう言うれるの表情は、言葉にするのは難しかった。笑ってるけど、純粋に楽しさや嬉しさから来る笑みじゃなくて……。
「一生、れるから離れられないかもね」
れるはささやきながら、首まわりの髪をよけて横を向いた。僕から吸血されるときの、れるの癖。
その動きを見て、吸い寄せられるように顔を埋める。そのまま、許可もとらずにれるの血液を求める。
久しぶりだからか、その味はこれまででいちばん魅力的で、最後の一滴まで舌にまとわせて味わう。
飲み終わっても、しばらくれるにしがみついたまま、離れられずにいた。れるの着ている服に、爪が食いこんでしまいそうだった。それでもれるも振り払わず、その中に収まっていた。
余韻に浸りながら、さっきのれるの言葉を反芻する。
『一生、れるから離れられないかもね』
本来なら、焦るべき事態かもしれない。他の人から血を分けてもらうことができなくなるのだから。
だけど、れるの体温があまりにも心地よくて、それでもいっか、なんて思えてしまった。
コメント
4件
やばい、すこすぎるッッ🫶🏻︎💕︎︎( 💫🎨さんの独占欲が働いちゃってるよ~ッッッッ( 相手がいないと生きていけないっていう…😇 いいタイミングで見れてよかった…!勉強が捗るぜ( 投稿ありがと~ッッ!!!!!🫶🏻︎💕︎︎ございますっ(?
水さんの血が変だ、ってわかった後から他の人からの血を受け付けなくなった、、 てことは!そのとき水さんは自分の血に何か仕込んでいた、、? それなら診断結果を説明していたときに驚いていなかったのもわかりますね、 うわぁぁ!!やっぱり夏ベリー様の小説はストーリー性がめっちゃくちゃ面白いです〜!!!✨️✨️︎💕︎︎ こういう系すっごく好みなんですよぉっ!!!︎💕︎︎🫶 だから嬉しいです!!!✨️ 今回も神作でしたっ!!!✨️✨️ 投稿ありがとうございましたぁっ!!!!︎💕︎︎✨️