テラーノベル
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七夕はみんなには嬉しいものなのだろう。
願い事なんてくだらない。
だって私には、天使がいる。
願い事を叶えてくれる素晴らしい天使が。
今日は七夕らしい。
うちには笹もなければ、短冊もない。
学校に短冊を吊るすところがあるけれど、馬鹿らしく思えたので何も書かなかった。
「今日って七夕でしょ?」
あと少しで日が昇るという頃、テンが私の部屋にある漫画を読みながら聞いてくる。
読んで良いなんて言ってないのに、我が物のように読んでいる。
なんだか眠れなくて、今日はずっといてもらっている。
「そうだけど。」
だから、なんだというのだ。
恋人がいるわけでもない私にはなんのわくわくもないイベントだ。
いや、恋人というならクリスマスか。
「なんかお願い事した?」
してないよ。
声に出すのはなんだか寂しくて、首を振った。
だって、テンがいるだけで救われてるんだよ。
ほんの少しだけだけど、変われてるんだよ。
「なんで、お願い事しないの?」
「別に、理由もなにも。願いたいことがないから。」
少し寂しげな顔をしたテンは何かを思い付いたようで、声をあげた。
「そうだ!空を飛んでみない?」
、、、
「は?」
「ちょ、ちょっと待って!」
顔を風が撫でるのが気持ち良いけれど、俄然恐怖が勝つ。
テンに手を繋いでもらっていると、その人も飛べるらしい。
でも、手を離したら落ちると言われたので、怖すぎる。
テンの手を強く強く握って、恐る恐る前を向いてみた。
「わぁ、、、」
自然と声が漏れた。
壮大で、神秘的で、それでいて、儚くて。
宙に舞った水玉が、自分が流していた涙だということにしばらく気づけなかった。
そんな私を見て、テンは笑みをこぼして、
「ね、凄いでしょ。」
と自慢気に言った。
普段なら「何でテンが自慢気なの」と言っていただろうけど。
「うん、本当に。」
テンは、私が素直なのが珍しかったらしく、おもしろそうに顔を緩ませていた。
「愛季ちゃんが遅くまで起きててくれたから、見せられるものがあるの。」
そう言って、ぐんぐん上まで上がっていく。
「ねぇ!だから、怖いってば!」
そう言っても聞く耳を持たない。
とうとう、雲の上まで来てしまった。
高所恐怖症ではないにせよ、こんなところまで来たら流石に怖い。
こんなところ見ていられない。
目を瞑って、テンにすがるように手を握った。
「目、開けて。」
嫌、怖い。
でも、どこか遠くに連れていってくれそうで、恐る恐る目を開けた。
「カウントいくよー。」
じゅーう、きゅーう、はーち
「何っ、なんのカウントっ?」
テンは、答えてくれなかった。
その代わり、楽しげな声と共に、カウントが進んでいく。
なーな
風が強く吹いて、私たちの髪の毛を揺らした。
ろーく
水分の多い空気が心地良い。
ごーお
強く握りすぎて、汗が滲んできた。
よーん
辺りが少し明るくなった。
さーん
雲の端を指差した、その方をただ見つめて。
にーい
何か起こりそうだと、目をこらす。
いーち
ぱぁっと目が輝いて。
ぜろ!
ぴかーっと光って、きらきらとした雫が煌めいて、すべてを照らした。
もう声も出せなかった。
「どう?」
そう言って、こちらを向いたテンはちゃんと天使みたいで、美しかった。
「綺麗、本当に。」
「でしょ。」
きらきらと輝く光を目の前に、泣いて、笑いあって、光って。
「ありがとう。こんな素敵なもの見せてくれて。」
「やっぱり、愛季ちゃんと出会って良かった。」
何を見て、聞いてそう思ったのかはわからないけれど、純粋に嬉しかった。
もう恐怖はなかった。
落ちていっても、素敵かもしれない。
死ぬのは嫌だけれど、何もない人生より、今日がある人生の方がいい。
光を見ているテンの顔、瞳。
瞳に光が集まって、私を照らす。
その光に当てられて、私はもっともっと輝ける。
いつか、私が輝けるように。
あなたはまだ輝いていて。
コメント
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うわあ、すごい…。雲の上で迎える朝日、テンのカウントダウンとともにぱっと世界が輝く瞬間、本当に美しかったです。主人公が「何もない人生より、今日がある人生の方がいい」って思えるところに胸が熱くなりました。恐怖から一歩踏み出して、光に照らされる自分を受け入れ始めたんだなって。テンが「出会えて良かった」と言うのも、愛季ちゃんの変化を誰より近くで見てきたからこその言葉で、じんわり来ましたね。次が気になります。
なむたろー。
637
なむたろー。
646
217
ciel
34