テラーノベル
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秋の涼しさも終わり、本格的に冬の寒さがやってきた。使わないと思って買ったカーディガンは、いつしか肌身離さず使っている。
冬になり、俺はうみにゃとあまり会えていない。理由は簡単。うみにゃが受験生だから。毎日のように会話していたLINEも、2週間前で止まっている。何か送ろうか迷ったが、こんな大事な時期に俺のせいで気を紛らわせたくないと思い、結局何も送っていない。たかが数週間会えて無かったくらいで、こんなに気持ちが落ち込んでいるのに、卒業して会えなくなってしまったら俺はどうなってしまうのか。ずっと俺の心には寂しい気持ちでいっぱいだった。
数ヶ月後。うみにゃからLINEが送られてきた。
『合格したよ!!!』
と、書かれてあった。なんて返信しようかな。1番シンプルに
『おめでとう 』
と、祝いの言葉を送った。うみにゃが受かったことに対して嬉しい気持ちもあったし、寂しい気持ちもある。うみにゃの卒業までもう少しになってしまった。できることなら卒業しないで欲しい。自分の年齢を恨む。あと、2年、早く生まれていたらうみにゃのそばにいれたのに。いくら思ったって年齢には逆らえないそうしみじみ感じた。
そしてついに卒業式がやってきた。体育館は当たり前に寒く、俺はカイロを2個手に持ち、暖をとっていた。式も終わり、卒業生が体育館から出て行く。出て行く生徒の大半は涙を我慢しながら体育館を出て行っていた。しかし、うみにゃの方を見てみると、他の生徒とは違い、涙なんかより、あくびをするのに我慢しているように見えた。うみにゃらしいな。そして俺ら、1年も続々と体育館を後にした。
体育館を出ると、卒業生はグラウンドの方へと集まっていた。その中から俺は頑張ってうみにゃを見つけて、駆け寄る。
「…うみにゃ!!」
そう呼ぶとうみにゃはこちらに振り向き、パッと笑顔になった。
「どーだった?俺の卒業式は?」
「いや、めっちゃ眠かった」
そう俺が言うとうみにゃは笑いながら、
「そこは、めっちゃ感動したって言うところだぞ!」
と言ってきた。こいつだってめっちゃ眠そうにしてたのに。ある程度話した後、俺はうみにゃに言った。
「ちょっと人が居ないところ行かない?」
「ん?別にいいけど…」
そう言って俺はうみにゃを連れ出した。もう誰も居ない教室に。黒板には先生が書いたであろう、祝いの言葉や絵が書かれていた。外からは花を咲かせ始めた桜や、卒業生が見える。
「もうこの机も使うことは無いのかぁ」
そう言ってうみにゃは机を撫でる。もうこの教室に二人でいることもなくなる。今日ここで言わないと。
「…あのさ」
言葉が詰まりそうになる。手が震える。でもここで言わないといけないのはわかってる。
「俺、うみにゃのことが好き」
一瞬時間が止まったように感じた。そっとうみにゃの方を向くと、驚いた顔をしていた。
「んぇ、あっ、えっと」
急に同性かつ、友達のように接していたやつから告白されれば誰でもこうはなるだろう。うみにゃは優しいから俺が傷つかないように言葉を探してくれる。
「ごめん、変なこと言った。じゃ、そろそろ帰ろっか」
急に怖くなった自分がいる。ずっとそばに居たいとか言ってたのに、もううみにゃの隣に立てなくなるのが怖くて。俺は逃げるようにそう言った。するとうみにゃは顔をあげた。
「いや、その…嬉しかったよ。」
思わずうみにゃの顔を見る。よくみるとうみにゃの顔は少し赤く火照っていた。多分俺もこいつと同じように赤くなっているだろう。
「その、俺もさDDのこと好きだよ。でも俺付き合うとかあんまよくわかんないし…」
そうゆっくりながらも話してくれた。頑張って顔を赤ながら話してくれている姿が愛おしくて。
「それに、DDはまだ高校生でしょ?後2年、他にいい出会いがあるよ」
うみにゃは少し悲しそうに言った。あっ、またこんな顔させた。
そんなうみにゃに俺は言った。
「うみにゃは俺が他の誰かと付き合ってもいいの?」
「えっ、いや…」
「正直に言って」
今ここではっきりさせないと気が済まなかった。うみにゃの方を見ていると、目が会う。パッとうみにゃは目を逸らしながら言った。
「…嫌だ」
さらに顔が赤くなった気がする。耳まで真っ赤だった。心臓の音がうるさい。ドッドッと俺の耳まで伝わってくる。
「じゃぁ、付き合ってくれる?」
俺がそう言うとうみにゃは
「付き合うのは、ごめん」
そう言い返した。
「はぁ?なんで?うみにゃも俺のこと好きなんでしょ?」
正直、子供過ぎたなって思う。
「いや、流石に高校生と付き合ってる大学生は。ねぇ〜?」
「そんなやついくらでもいるだろ。」
そう言って駄々をこねる。
「とりあえず!付き合うのはDDが高校卒業してから!」
「はぁ?」
「じゃぁ、はい!指出して!」
そううみにゃは俺に小指を出して来た。ほらほらとうみにゃは俺の指を無理矢理出させた。
「俺、DDが高校卒業するまで絶対誰とも付き合わないから、DDも約束して!」
そして俺とうみにゃは指切りをした。あれ、これ前もやった気がする。半強制的に俺はうみにゃと指切りをした。
「はいっ!これで終わり!帰ろ!」
そう言ってうみにゃは置いてた鞄を手に取り、扉の方へと歩く。またこいつのペースに乗らされている。俺はうみにゃの手を引っ張り言った。
「キスさせて」
「は、はぁぁぁぁ?」
流石にうみにゃだけ都合が良いのは嫌だったので、そう言った。
「ちょっと、待って、一応俺たち付き合って無いよ??」
「うん、そうだよ。別に付き合わなくてもキスして良くない?」
うみにゃはまた顔を真っ赤にしていた。ちょっと怒ってるような気もしたが、少し面白かった。
「いいじゃん。キスの一回くらい」
「一回くらいって…一応ファーストキスなんですけど…」
「じゃぁ俺にちょうだい」
そう言って、俺はうみにゃの頭に手を回し、そのまま唇を合わせた。柔らかい感触が唇から伝わる。好きな人とキスするってこんなに幸せなんだ。そう感じた。そっと唇を離すとうみにゃは目をまんまるにして、こちらを見ていた。顔が赤かったのはさっきから知っているが、今度こそりんごにでもなってしまうのかってくらい赤くなっていた。
「ひどい、俺のファーストキスが…」
「結局付き合うんだしいいだろ?それとも俺以外のやつとするつもりだった???」
「いや、しなけど!」
そう言って俺の肩をポンポンと殴る。痛くも痒くも無い。俺はそんなうみにゃに笑った。
「じゃ、帰るかー」
そう言って俺は教室から出る。後ろでうみにゃが何か言ってる声がするが無視。これが俺たちだから。
帰路につき、二人で横並びになりながら帰る。今日で最後のこの道もなんだか寂しくなる。
「そーいえばDDに渡したいのあったんだ」
なんだろ。そう思っていると、うみにゃがいきなり制服のボタンを引きちぎった。
「はいっ!第二ボタン!」
あー、そういえばそんな文化あったなと思いつつ、俺は受け取った。
「次は俺がうみにゃに渡すね」
そう言うとうみにゃは笑って返事をした。うみにゃがくれたボタンは少し傷がついていた。
冬の寒さも終わりに差し掛かっている。桜の花もどんどん開花していっていく。そういえば俺がうみにゃに出会ったときも桜がたくさん咲いていたような。そんなことを考えながら俺はうみにゃの隣を歩いて帰った。
もうすぐ春がくる。
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