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好き。好きだぁぁぁぁ おでんちゃん少しずつ口調変わってる……? 続きが気になるね……
拝啓、フィン。
今最悪の事態が起こってしまった。
「おいスウェーデン、カルマルに入れ。返事はYesかJaだ」
まさかデンマークに出会うなんて。
最近、デンマークがおかしくなってしまった。俺を見る度にカルマルに入れと言ってくるのだ。今まではそんなことなかったのにな。
よく喧嘩はしていたが、「カルマル同盟」とかいう過去の栄光に縋るようなやつじゃなかった。なんならそのことについて話すのを嫌がるほどだったのに。
「おい。なんとか返事をしたらどうだ。せめて首を縦に振るかしろ」
デンマークの声で俺は我に返った。何で拒否権がないんだよ。そんなに俺をカルマルに入らせたいのか。
「わーったよ。カルマルに入りゃ良いんだろ?ほら」
「誰がカルマル城に入れと」
ちぇ、デンマークでもそこはツッコむか。
「さすがに冗談だよ。でも言っとくが、俺はぜっっったいにカルマル連合には入らないからな。」
俺はいつもより強い口調でデンマークに言い放った。
「何故?お前は強かったあの頃に戻りたくないのか?」
「あの時はほぼお前の支配下だったから強かったのはお前だけだよ。あとお前、俺のとこの奴らに随分と手荒な真似をしてくれたじゃねえか」
頭イカれてるんじゃないのか、と付け足そうとしたがやめた。
言ったら何されるかわかったもんじゃない。
「そもそも、なんでカルマル連合だった頃に戻りたいんだよ?」
何でそこまでカルマル連合に執着しているのか。何故強さにこだわるのか。俺には正直全く分からない。
「なんで、か。お前は今の世界が平和だと思うか?全員が手と手を取り合って仲良くできる世の中だと感じるか?」
「…え」
質問を質問で返された上に急に問われたので、たじろいでしまった。
「今、弱肉強食の世界と化しつつある。そんな世の中で、次は自分の番かとただ怯えてるだけじゃ、本当に我々が他国に取り込まれる可能性があるではないか。」
「そんなこと言ったって、今は前よりも平和に」
「そう思うか?我々の兄弟が奪われようとしたんだぞ。」
「…それ、は」
返す言葉がなかった。
そりゃあ、昔よりかは平和な世になったと思う。けど、デンマークのいった通り、完全に安全かと言われるとそうではない。最近は皆、ずっとピリピリした雰囲気になっていると俺も感じてる。けど、ここまでする必要はないだろ。そう思った。
「スウェーデン、今は戦の世なのだ。強くならなければ、小国から抜け出さなければ、力でねじ伏せられる。」
「でも、だからといってカルマル同盟じゃなくてもいいじゃないか。ノルウェーまで巻き込んで…!」
「いいか、あの時がデンマーク、もとい北欧の全盛期だったのだ。今、その力なくしてどうするつもりだ?」
…ああ、狂ってしまった。デンマークは、俺の知るあいつではなくなってしまったのだ。世話焼きで、不器用だけどちゃんと意見を聞いてくれるあのデンマークはもういなくなっていた。
「さあ、また力を取り戻そうスウェーデン。」
デンマークが俺に向かって手を差し伸べてくる。
まるで主従のようだ。あの時を思い出させて吐き気がする。
俺はデンマークの手を振り払った。
「は、おいスウェーデン、」
そして全速力で走った。
困った時は逃げるが勝ち。
「スウェーデン待て!!」
待てって言って待つ奴がいるかバーカ。
そう心でいいながら振り返らずに、とにかく走った。
「お前まで、行ってしまったら」