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イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばないらしい。
国の化身というのは不思議なもので。
通常、そんなもの居たらおかしいし、というか居る必要も無いのに、みんな普通に受け入れている。
そんなふわっとした存在、といったところだろうか。
そして、それが私だ。
私はヨーロッパのちっさい国の化身。
昔は割と強国だった(と思う)が、所詮は過去の話。
若い子達は周りの国に働きに行くし、土地が狭いから農業やってくにも育つもんも育たないし⋯。
要するに、国崩壊まっしぐらである。
しんど⋯。
「よお、ってどうしたんだよその面⋯」
『いや、まあねぇ』
彼は友人のアーサー。
イギリスの化身である。
「⋯最近、危ねぇんだろ、なんか色々」
そんなに言いにくそうにしなくていいのに。
彼は意外と気が使える男だ。
『そうだね⋯うちもそろそろ潮時かな 』
「⋯」
黙り込む彼の横顔がなんだかいつも以上にトゲトゲしていて、私も黙り込んでしまった。
彼との出会いはうん百年前。
お互いぼっちだったので、自然と仲良くなった。
アーサーは決して素直とは言えないけれど、そんなところも彼の良いところだと思う。
何度か大きな喧嘩をしたけれど、今ではすっかり仲良し(多分)。
昔からその類のことでは手段を選ばない男だった。
思い出すだけで背筋が伸びる。
はあ、怖い怖い。
大人しくなってくれて良かったと心底思う。
「イギリスと併合することになった」
『⋯今なんと、?』
何度聞き直しても出てくるのは一言一句同じ言葉。
目をまんまるにしながら聞き返し続ける私に呆れたのか、資料を置いて上司は部屋を出て行った。
は??
服を着替えて必需品をバッグに詰め込み、ドアを開けて仕事場を出る。
アーサーに話を聞かなきゃ。
併合⋯
併合?
私とイギリスが?
嘘だ
有り得ない
アーサーが許可したの?
なんで?
『潔く消えようと思ってたのに』
「させねぇよ」
思わず呟くと聞き慣れた声が聞こえた。
『アー⋯サー』
にこっと微笑む、整った顔。
翡翠の瞳は、こんな時でも美しく輝いていて。
「お前がそこまで死にたがりだとは知らなかったよ、レディー?」
冗談っぽく笑うアーサー。
愛想笑いすら返せない。
『ねえ、併合ってなに?どういうこと?』
「そのままだよ。俺とお前は二人でひとつになるんだ。」
やっと、やっとだ、とうわ言のように呟く彼が、何だか怖かった。
「なあ、知ってるか?イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばないんだ。」
言い得て妙だよな、とケラケラ笑いやがる。
だからこっちは笑えないんだよ。
「お前さ、鈍感すぎんだよ、ばか。ここまでして気づかねぇのか?」
『⋯何の話、?』
彼の口から次に出た言葉は、雲ひとつ無い青空に雷が落ちたような衝撃だった。
「ずっと、好きだったから」
頬を赤く染めて、頭をかきながら照れ臭そうに言う。
『は⋯?』
青空に雷どころでは無い。
頭を鈍器で殴られたよう。
一体いつから?
なんで好きなの?
疑問は次々と脳内に浮かぶのに、それを口には出せない。
「大丈夫だ。お前は何も心配しなくていい。全部俺がやってやるから。お前の為に。」
大きくてごつごつとした男の手。
あの頃の子供の手とは程遠い。
そんな彼の手が、私の頬を包む。
ファーストキスをこの男に奪われるとは夢にも思わなかった。
ダージリン、だったっけ。
彼の残したこの言葉は本当みたいだ。
イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばないらしい。
はっぴーうえでぃんぐ。
おめでとう画面の前の貴方。
アーサーと夢国は併合(強制)しますが、アーサーは愛妻家なので従順にしとけば幸せな結婚生活を送れると思いますよ。