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夜、部屋で編集をしてるとドアが開く音がした。またいつもみたいに飲み物とか持ってきてくれたんだろうなと思っていたけど今日は違った。
『ぷりちゃんまだ終わらないの〜?』
俺の肩に顎を乗せ、耳元で言ってくる。わざとらしく甘えたトーンに眠そうな声で。
「もうちょい。あと10分 」
『その10分が長いの〜』
キーボードを打つ手を見て、マウスを動かす度にねぇねぇと話しかけてくる。
「けちゃ」
『ん?なぁに』
「ちょっと静かにできる?」
『……できない』
即答すぎて口の端が上がるのがわかる。溜息を一つ吐くとけちゃが少しびくっとなる。怒ってるとでも思ったのだろう。けど怒る気なんて最初から全くない。
ただ、マウスから手を離して、椅子をくるりと回し、けちゃと向き合う。
「じゃあここおいで」
と、自分の膝を叩くがポンコツなけちゃにはピンときていない様で。
おいで?と言って首を傾げるけちゃを無視して腰を掴んで対面になるように俺の膝に座らせる。
『わっ!?ちょっ、ぷりちゃん?』
「静かにできない子はここで大人しくしてくださいね」
そう言ってけちゃの頭を撫でる。俺の手が温かいからか、けちゃの体から一気に力が抜ける。
「急に静かなるやん。ここ落ち着く?」
『ん、ぷりちゃんあったかいから』
「ねむい?」
『ぅん、ねむたくなってきた。。』
「じゃあ目瞑って」
片腕でけちゃを抱き寄せて、もう片方の手で髪を撫でる。ゆっくり、リズムを刻むみたいに。
「寝てええよ」
『ぇっ、でも編集は?いいの?』
「お前が寝てからでも間に合うから大丈夫やで」
俺の声が優しすぎたせいか、けちゃがくすっと少し笑う。そんなけちゃにつられて俺も笑ってしまった。確かに今の声は優しすぎてびびるな。
けちゃは耳を俺の胸に当てる。多分心臓の音を聴いてる。けちゃ曰く、ちゃんとそばに居るってことを感じれて安心するらしい。そのおかげだろう、けちゃの瞼が徐々に下がっていくのが分かる。
『…ぷりちゃ?』
「ん?」
『編集終わったらちゃんと僕のことベッドまで連れて行ってね』
「はいはい分かったよ」
『んふふ、おやすみ』
「ん、おやすみけちゃ」
数分経つと腕の中から規則正しく、可愛らしい寝息が聞こえてくる。寝たことが分かっても俺は撫でることを止めなかった。
「ほんま、可愛いやつやな」
静かになった部屋でぽつりと独り言を呟く。それを聞いていたかのように、ふにゃりと微笑むけちゃ。愛おしくて堪らなくなりそっと額や唇にキスを落とす。
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