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「なんでめめがいるの」
約束していた個室イタリアン。ドアを開けると、舘さんの隣にめめが座っていた。
「岩本くんは?」
「来るわけないだろ」
「え、そうなの?」
俺はヤキモチ妬きの照を説得して最後は半分ねじ伏せて家に置いてきたのに、めめは当たり前のようについてきたらしい。照が来ない事に心底びっくりしていた。
舘さんは申し訳なさそうな顔で『ごめん、止められなかった』と言った。
俺と照はもう長くて、舘さんとめめはここ半年くらい。めめが激重彼氏だと知って、嫉妬の塊みたいな照を恋人に持つ俺と舘さんは通じるものがあって最近確かに仲良くしていた。
聞けば、めめはゆり組の真ん中バースデーも自分の家を開催場所に提供するというパワープレイで参戦したらしい。何だそれ呼べよと思ったけど、それはさておき、まぁそれだけ舘さんはめめに愛されまくっているらしい。
いや、むしろ蔑ろにすると夜が怖いから、とあの舘さんがポツリと言ったのが忘れられない。
ちょっとだけ、夜の話に及んだ事がある。
ただでさえ底なしなのに、仕事はギリギリ耐えるらしいけどプライベートで他の人を優先した日にはめちゃくちゃ激しくされて翌日しばらく動けなくなるんだとか。
照も一緒だな、と思いながら聞いていた。俺だって照にヤキモチ妬かれた日には…いや、今はやめておこう。
食前酒で乾杯し、前菜にパスタやアクアパッツァが運ばれてくる度にめめが目を輝かせる。そしてまた美味しそうに食べる。一口が大きくてわんぱくだ。
そんな舘さんも食べながら幸せそうなめめを優しく見ている。何だかんだ舘さんもめめが好きなんだな、って思う。
「めめ、舘さんのご飯もたくさん食べるんでしょ」
「うん。食欲ない時も食べやすいものとか考えて作ってくれるから食べられるし、舘さんのご飯なら食べたいなって思う」
「いいなぁ。俺らは料理そんなにしないから」
こちらは料理経験の浅い俺と、チャーハンしか作れない照の組み合わせだ。美味しいご飯でどうこうには程遠い。
「でも、岩本くんはよく俺に阿部ちゃんのこと惚気てるよ」
「え、そうなの?」
「うん。長く付き合ってるのに、付き合いたてみたいに惚気るからすごいよ」
そこから照がどう俺の事を惚気ているのかも聞かされたけど、俺の顔は真っ赤だったらしい。舘さんが後日笑いながら教えてくれた。
真ん中バースデーのお祝いだったけどそんな感じしないなと思ってたら、デザートのプレートにチョコレートで『Happy Anniversary』と書かれていた。珍しい事をするなと思いながら舘さんを見ると、舘さんもびっくりしている。
そこでめめが『頼んどいたよ』と笑った。確かにめめのプレートだけ何も書かれていない。
「二人とも、真ん中バースデーおめでとう」
ニコニコしているめめを見ると、これは本当に悪気なく尻尾を振って『俺も行く』って言って来たのかも知れない。
これも後日知った話だけど、 ゆり組真ん中バースデーの時に自宅を提供したのは『俺の家なら俺が片付けすればいいから、二人にゆっくりして欲しくて』という理由だったらしい。確かその時は翔太の次の仕事が早まるかも知れないから家で、となったと聞いた。
「ありがとね、めめ」
「ありがとう」
二人でお礼を言うと、めめはとても良い事をしたかのように満足げな表情を浮かべた。
食事も終わり、少しだけ飲み直して解散。
舘さんと二人でご飯ってあんまりなかったし、真ん中バースデーをわざわざ集まって祝うのも今年予定が合ってたまたまだったけど、めめが入るとまた全然雰囲気が変わるな、なんて思った。良い緩衝材と言うか、二人の時にはない舘さんの表情も見ることができたし。
タクシーにほろ酔いの舘さんをエスコートしながら乗せるめめを見ていたら、俺も早く照に会いたくなった。
終
コメント
6件
ひーくん笑呼んであげてよみんな笑笑 最近私みちるさんの🖤❤️も好きなんよね🫣
照くんかわいそうw