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36
『普段から笑顔でいると自然と明るくなる。』
誰かから聞いた言葉だった。
◇◇◇◇
mb side
深夜。所詮夜と言われる街に、刀を背負った未成年らしき人を見た。
「ねえ、君、どうしたの?」
『……………………。』
何も答えてくれない。
フードを被った顔を覗き込んでみると、アメジスト色の髪と綺麗なグリーン色の目が見えた。口元は少し口角が上がっている。
一目背丈を見て高校生かと思ったが、顔は思ったより童顔だ。もしかしたら自分が見立てていた年齢より若いのかもしれない。俺はチャンスだと思った。
「おじさんに着いてきてくれるかな?」
『……………………。』
少年は何も言わないが微かに足が動いた。そしてしばらく考え込んだ後、服の裾を引っ張った。
着いてきてくれるということだろうか。
俺は興奮が止まらなかった。一つ一つ、考える素振りさえも、美しいと思った。きっとベッドで乱れる姿も艶めかしいんだろう。
連れ込んだ先はラブホテルだ。
『挿れるよ?』
返事はしてくれない、声も出してくれない。だが、それでも良かった。この世の言葉では表せないくらい善い顔で、嫌な顔ひとつせず最後まで締めつけてくれたから。
『すごく良かったよ。また会える?』
「……………………。」
少年は『いつかね』と言うように小さく頷いた。
◇◇◇◇
knmc side
最近、夜の街で遊ぶことにハマっている。
理由なんてなかった。僕が少し表情を創るだけで喜ぶ、ただそれが面白くて。
自分でも異常なことはわかってる。だけど今更やめろなんて言われても、多分やめれない。だって、暇つぶしにもなるし余計なことを考えなくて済む。それに、三大欲求となる性欲に溺れるのに嫌な気はしない。だから続けてる、それだけだ。
みんなの前では笑顔は貼りつけてない。今更キャラ変更なんておかしいからだ。だけど最近表情筋の動かし方が分からなくなってきて、常時笑顔でいることも多い気もする。
(まあいいや、気をつけよ。)
◇◇◇◇
加賀美『おはようございます〜。』
「おはようございます。」
いつも通り挨拶をして収録所に入る。
(甲斐田くんとふわっちは遅刻か。)
いつも通りと言えばいつも通りだ。僕は本を読んで適当に時間を潰した。
◇◇◇◇
暫くした後
不破『すいませ〜ん、遅れましたー。』
甲斐田『すみません、ちょっと道が混んでて。』
アニコブが揃って入ってきた。
加賀美は立ち上がり、台本を手にする。僕も一通り台本を見て、立ち上がった。
加賀美『全員揃ったことですし、収録始めましょうか。』
アニコブ『はーい。』
「はい。」
それからも順調に進んでいき、一時間休憩となった。
自販機に向かおうと立ち上がると、ふわっちが口を開いた。
不破『……ずっと不思議に思ってたんすけど、』
『もちさん、最近いい事ありました?』
「え?」
『あ!いや、最近笑顔なことが多いんで、なんでかなーって。』
笑顔が増えたのを勘づかれた。
だからなんだという感じだが、ふわっちは妙に観察眼が鋭い。少しでもその笑顔の奥に”何か”があることを勘づかせてしまうと吐き出すまで家に帰らせてくれないだろう。
…だけど、普通に世間話の可能性もある。現に表情が増えたことを気になって聞いてくるあたりも、ふわっちらしいなと思う。
果たして、どう返すのが正解なのか。
「…え、そうなの?…うーーん、意識してなかったなあ。」
不破『…そうなんすね。じゃあ俺の勘違いか。』
(……ん?勘違い、って。)
「なんかあったの?」
不破『……いやー、昨日たまたま通り掛かったとこにもちさんらしき人がいて。』
……嫌な予感がする。
『こんなド深夜なのに何すんだろって思って追いかけたら、ラブホ入ってたんすよ。』
『髪色も瞳の色も同じだったけど……、まあ、もちさんなわけないかぁ。』
現場の空気が凍りつく。
加賀美『剣持さん??』
「…え、僕がそんな事するわけないじゃないですか!髪の色も瞳の色も、きっと偶然ですよ!それとも見間違いじゃないですか?アハー。」
甲斐田『もちさんちょっとこっち来てくださいねー。』
終わりました。
◇◇◇◇
社長に拳をブンブン回して脅され、全てのことを話した。
もちろん三人は怒っている。
「いやいや、別に少し…、というか、行為はしてますけど…、多少は大丈夫ですよね??」
僕のお得意の笑顔で説得しようとするが、三人の顔がもっと怖くなっていくだけだった。
(ひええ。)
加賀美『……いいですか、まず大前提として、私達は剣持さんが心配なんです!貴方は貴方が私達にとってどれだけ大切なのか分かっていない、!』
不破『……社長の言う通りや。せっかく綺麗な体なんやから、もっと自分の体を大切に使ってほしいなって俺は思うよ。』
甲斐田『いや社長もアニキも言いたいことはわかるけど、まずおっさんとホテル行ってる時点でやばくない!??もちさん未成年だよ??!もっとその、自分を大切に扱わないと……!』
「……………………。」
(…別に、僕は綺麗なんかじゃないけどな。)
みんなが言ってくれていることは正論だ。わかってる。
だけど、あそこに行くのはもう習慣になってしまった。
(課題するために早く帰りたいんだよなぁ…。)
僕はこの状況をひっくるめるために嘘をつくことにした。
「じゃあ、あの街に行くのはやめます。これでどうでしょうか。」
沈黙。
「え、ダメなんですか……?」
最初に口を開いたのは社長だった。
加賀美『……実は、私も見たんです。剣持さんが、男性の方とホテルに入っていくのを。』
『もうあの街に行くのは習慣になっているんでしょう?それぐらい、私にもわかりますよ。』
「っ……。」
図星だった。
(どうしよ、)
社長はため息をついてから、僕に近づいた。
加賀美『……すみません、少し言いすぎてしまいましたね…。』
大きな手で頭を撫でてくれた。どうにもこの感覚が久しぶりで、場違いにもむず痒くなる。
加賀美『しかし、何かあってからでは遅いですからね。GPSを付けましょう。』
「……え、?」
アニコブ『いいやん!/ナイスです社長ぉ!』
「え、いやいやいや!!プライバシーですよ??僕の許可は、?えぇえええーー、、!?」
加賀美『はい、今日はこのぐらいにしておきますかね。……最後に、剣持さん。』
(……まるで明日も何かあるみたいだな。)
そんなことを思いながら、社長の方に目を向ける。
加賀美『…いつでも、頼ってくださいね。』
「…………っ、わかり、ました。」
微笑みながら言う社長に少しかっこいいと思ったのは、ヒミツ。
コメント
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あーーさん、第1話読みました!めっちゃ重い空気感の中に、もちさんの無自覚な危うさと、周りの心配がリアルで刺さりました……。特に社長の「いつでも頼ってくださいね」のシーン、グッときたな。癖になる書き出しで続きが気になるわ〜!