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コンバトリ火山では、帝竜バルナルドが南雲と世間話をしていた。
雑談だと侮るなかれ。
現世の首脳会談だって、たまには雑談を交えないと話は進まない。
「つまり、卿の世界ではスカレグラーナのような、異世界なる場所を探し歩く者がおり、卿や逆神の息子などもその組織に所属しおるのか」
『おっしゃる通りです。例えば、そちらで採れるオジロンベは我々の組織で非常に魅力的な鉱物として重宝しています。そのように、未知の物質や技術などを求めて動く者を、探索員と呼んでいるのです。恥ずかしながら、私どもの世界はまだまだ未発達ですので』
帝竜バルナルドは上機嫌に「ぐーっはは」と笑う。
「謙遜するでない。卿の作り上げたサーベイランスなるものは実に良く出来ておるし、逆神の一族の使うスキルは我ら古龍でも対応しきれぬ。技術的な発展など時間がどうにでもしてくれるが、そもそも土壌が悪ければ作物も育たぬ。卿らの国には、実に良質の畑と、働き者の耕し手がおるではないか」
『もったいないお言葉です。今度、僭越ですがコーヒーババロアと言う珍味をお贈りしますよ。うちの部下がその研究をしているのですが、なかなか美味でして。スカレグラーナにはないものですので、お楽しみ頂けると思います』
帝竜バルナルドが「ほう、それは楽しみであるな」と答えたところで、順調に動いていた歯車に異物がガッツリと挟まる事態が発生する。
「うぉぉぉぉ!! 一刀流!! 『次元大切断』!! よっしゃ、ビンゴぉ! やっぱり煌気の結界があったぜぇ! 古龍が出入りする場所がどっかにあると思ってたんだ!!」
逆神大吾、帝竜の素材欲しさに単身奇襲を仕掛ける。
もちろん、その事に関して彼は誰にも相談していなかった。
理由は2つある。
1つは、絶対に止められるから。
もう1つは、自分が帝竜を討伐すれば報酬が上乗せされるのではないかと言う、実に卑しい考えであった。
大吾は一気にコンバトリ火山の中心まで駆け上った。
「ぬぅ!? 卿は逆神大吾!! 何用か!? な、ナグモ!? この者は使者か何かか!?」
ナグモは何も答えない。
何故だろうか。監察官室の様子を見てみよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ぶふぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
南雲修一、久しぶりにコーヒーを盛大に噴く。
「わー! 久しぶりに出たぁー!! すごい、虹がかかってるっすよ、南雲さん!!」
「言ってる場合か!! 大吾さんは何しにコンバトリ火山に現れたの!?」
六駆からの連絡も受けていなければ、大吾が何かを提案して来た記録もない。
完全なるソロ活動。
これが非常に厄介であった。
逆神大吾は探索員ではない。
つまり、南雲の指示を聞く義務が存在せず、下手を打てば暴走を止める手立てがなくなる事を切れ者の監察官殿はすぐに悟った。
「とにかく、通信で止めよう! 山根くん! サーベイランスを大吾さんに向けて!!」
「多分無理だと思うなぁ。あの濁った瞳を見て下さいよ。ハイエナだってもうちょっとつぶらな瞳してますよ」
南雲も嫌な予感は重々承知していた。
だが、予感がするからと言って手を止める訳にもいかない。
南雲は祈るように、大吾に向けて通告する。
「ちょっと久しぶりに火山が見たくなったんですわ」とか言ってくれる事を願って。
なんと言うか細い願いだろうか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
大吾は無言でホグバリオンを構えていた。
切っ先は、もちろん帝竜バルナルドに向けられている。
「逆神大吾。どういうつもりであるか? 余は既にナグモとの講和に応じておる。つまり、卿と争う理由はもはやないはずである」
『逆神さん! 大吾さん!! 何をするつもりですか!?』
戸惑う帝竜と南雲監察官。
大吾は「へへへっ」とゲスな笑いを浮かべながら答えた。
「いやね、ちょいと稼げるって事情になれば、人は上乗せを望むものじゃないですか! 帝竜の爪でもちょびっと斬れば、ね? 買い取ってくれるんでしょ?」
最悪の発想だった。
だが、諸君。思い出していただきたい。
逆神大吾はだいたいこんな人間である。
むしろ、初登場時からまったくブレていない。逆神家ってみんなそう。
『大吾さん! ヤメてください!! そんな非合法な素材、うちじゃ買い取りませんよ!!』
「じゃあ、闇市でも探しますわ。一刀流!! 『雷神降臨斬』!!」
『やーまーねぇー!! この人、ハーブでもキメてるの!?』
『逆神くんがお父さんの事嫌いなの、分かるなー』
逆神大吾、聞く耳持たず。
ホグバリオンで増幅された剣技は、全盛期からかなり衰えた力の分を補って余りある威力を見せる。
「グオォオォォォッ!! 余はこの逆神がだから嫌いなのだ! 以前封印された時も、そして今回も! 全然、まったく、余の話を聞いてくれない!!」
帝竜バルナルド、金色のブレスで大吾の飛ぶ煌気斬撃を相殺する。
「げへへっ、良い感じの牙も生えてるじゃねぇの! それも頂いてしまおうじゃないか! 『幻想身』!! はーはははっ!!!」
大吾が100人に増えた。汚いビール腹のおっさんが。100人も。
これまでに使われて来た『幻想身』の中で、間違いなく最悪の絵面である。
「グォオォォォッ! 幻竜のような真似を!? 帝竜バルナルドを見くびるでないわぁ! 『狂竜の爪』!!」
「残念! そっちは全部幻だよ!! 本体の俺は! 天井に張り付いてんだぁ!! その角、もらったぁ!! 一刀流! 『撃墜』!!」
ガギンッと音が響き、帝竜の角が折れる。
そして本来ならば賞賛すべきホグバリオンの切れ味なのだが、この場合はそれが事態の悪化に拍車をかけていた。
「お、おのれぇ……! だが、この者に本気の反撃をしても良いものか……。ナグモとの約束に反することにはならぬか。ぐぅぅっ。余はどうすれば!!」
帝竜バルナルド頑張れ。頑張れ、頑張れ、バルナルド。
もはや声援は全て、悩める古龍の王に向けられている。
『山根くん! ちょっとこっちは任せる!』
『えっ!? 帝竜さん見捨てるんすか!? ひどいなぁー、ナグモ!!』
『やーめーろーよぉー!! この状況だとバルナルドさん、本当にそう思うかもしれないだろ!? 呼びに行くんだよ! この騒動を止められる人を!!』
『へーい。そんじゃ、自分は適当に大吾さんをサーベイランスで撃っときます。嫌がらせ程度にしかならないでしょうけど。急いでくださいねー』
逆神大吾。
まさかスカレグラーナの地で探索員を脅かす最後の存在になろうとは。
だが、前述の通り、南雲に彼の暴挙を止める手立てがない。
正式な手続きを取っている間に、下手をすると帝竜バルナルドが素材剥ぎ取られた挙句、封印されてしまうだろう。
南雲は王都ヘモリコンにあるサーベイランスを起動させる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
逆神六駆は幸せな夢の中にいた。
そこにはお金と言う概念が存在せず、明日の献立に悩む必要もなく、次月の定期テストに怯える事もない。
彼の求めた桃源郷だった。
『逆神くん! 逆神くん!! 起きてくれ!!』
「……今、僕史上でも相当上位の良い夢見てたんですよ?」
最悪の寝起きだったが、その最悪は簡単に更新されるので安心して欲しい。
『君のお父様が急に帝竜の住処に現れて、せっかく纏まった講和条約をしっちゃかめっちゃかにしてるんだけど!! どうにかして、逆神くん!!』
「ええ……」
楽しい夢の世界から地獄の現実へ。おはようございます。
「ああああっ!! ホグバリオンがない!!」
『お父様が振り回してるよ!! 既に帝竜の角が折られてるよ!!』
「一応確認なんですけど、親父が何かやった責任って、南雲さんに向かいます?」
『うん。そうだね。でも、その前に逆神くんのところを経由してくるかな』
状況を把握するには充分な会話だった。
「今すぐ、親父をぶち殺しに向かいます。案内してください。5分で行きます」
今まさに、スカレグラーナで行われる最後の血戦、お金でお金を洗う薄汚れた闘いの幕が上がろうとしていた。
コメント
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**はる。** 第195話読了!もう大吾さん、完全に別案件すぎて草🤣「話を聞いてくれない」って帝竜に言わせるの、ズルいわ。コーヒーババロアの雑談から一転、まさか親父が単独奇襲かますとは思わなかった。六駆の「今すぐぶち♡♡♡に行く」で爆笑。親子相変わらずだな!バトルとギャグのバランス、今回もめちゃくちゃ効いてた。次どうなるか気になりすぎる🔥