僕の兄は人気者だ。
昔からそう。兄さんだけが光を浴びて、僕は兄さんの影を吸って育った。
僕だってなりたくて兄さんの影になっている訳じゃない。どうせなら、兄さんみたいになりたかった。
最初はあった兄さんへの憧れも嫉妬に変わった。
僕は兄さんが羨ましくてしょうがなくなった。
兄さんは言う
「カナダの穏やかなところが好きだな。ずっと仲良くいような。」
「…ありがとう兄さん。僕も兄さんが大好きだよ。」
脇役が居なきゃ主役は立たないんだよ。
――――――――――――――――――
「カナダ、アメリカ、今日は大事な客が来るんだ。絶対に失態を犯さないように。」
「わかった。父さん。」
…はぁ、今日も兄さんと比べられると思うと憂鬱だ。
みんなは僕と兄さんがどれだけ違うか、見て分からないのか?
「ようこそ、日本。」
「イギリスさん。今日は招いて下さりありがとうございます。」
「「…」」
「久しぶりですね。アメリカさん、カナダさん。」
「お久しぶりです。日本さん。」
「久しぶりだな!日本!」
に、兄さん!?そんな、いきなりタメ口なんて…
いや、兄さんにしてはよくやってる方か…
「ふふっ。相変わらず元気ですね。」
「お前は相変わらずちっこいな。弱っちいからかw」
「ちょっ!」
…その場が凍りついた。
兄さんはやっぱり兄さんだった…仕方ない。
「驚かれましたよね、日本さん。すみません、兄のジョークは唐突なんです。」
「…あっはは。気にしないでください。」
ふぅ…何とかなった。
今くらい大人しくしてくれないかな…兄さん。
「…すまんカナダ。助かった。」
「…うん。」
な、なんだろう…胸が高鳴る。今までにないくらい…
兄さんは、僕が居ないと何も出来ないんだなぁ…
ふふっ
―――――――――――――――――
兄さん、今何してるんだろう。
後ろを振り向くと、何やら困ったような兄さんがいる。
仕方ない、助けてあげようかな。
「兄さん、どうしt」
「あ、いい所に。ロシア!」
え?
「なんだ、アメリカ。」
「これ、どうすればいいんだ?こうじゃないし、こうでもないだろ。」
「ん…あぁ、これはこうすんだよ。」
「なるほど!Thankyou!」
「はいはい。」
何で、僕じゃないの…?僕が居ないと何も出来ないんじゃないの?
…何でこんなに嫌なんだろう。
いや、弟として、兄さんを支えたいんだよ。僕は。そう、そうなんだよ。
「って、カナダ。そんなところで突っ立って何してんだ?」
「あ、え、はっ?あ、あぁだっ大丈夫。うん、なんでもない。」
「そ、そうか…?まあ、ゆっくり休め。」
…確かに、疲れてるのかも。ゆっくりしてようかな。
―――――――――――――――
「あ!日本。ちょっとこっち!」
「コミーチャイナ。コレ見てみ?」
「親父!これをどうすればいいんだ?」
「ロシア!」
…何で。何で僕を呼ばないの。何で僕を頼ってくれないの。何で何で何で何で何で何で何で何で何で…
あぁ、兄さん。何で他の人と仲良くするの。
やっぱり嫌だ。兄さんは弟である僕を頼るべきなのに。
…そうか、選択肢を絞ればいいんだ…兄さんが僕以外に嫌われてしまえば…
「なあ、カナダ?さっきから挙動不審じゃないか?」
「と、父さん…」
いい所に来たな…父さんからにしよう。
―――――――――――――――
「なあ、親父ぃ。こr」
「アメリカ、私はこれからお前と距離を取ろうと思う。」
「え」
「お前のこれまでの失態。そして、私に隠していた各国とのいざこざ。」
「や、ちょっ」
「反省するまで、距離を置かせてもらいます。」
ふふ。そうだ、もっとやれ。兄さんを孤立させるんだよ。僕以外を頼れないように。
「すみませんアメリカさん。少しそっとしておいて下さい」
「アメリカ、お前には失望した。話しかけないでくれるか?」
「アメリカ、近づかないでくれアル。」
「イオ、ちょっとアメリカが苦手になっちゃったんね。」
「おい、みんな…どうしたんだよ?」
…仕方ないなぁ。行ってあげよう。
「兄さん。」
「あっ、カナダ…お、お前もっ…俺が…きらっ、嫌いになったのか…?」
「ふふっ、兄さん。大丈夫だよ。僕は兄さんを嫌いになったりしないよ。」
「うぅっ、ふ、あぅ」
泣いちゃった。安心したのかな?
ふふっ。
「兄さん。僕は兄さんの味方だよ。安心して、僕だけ頼ってればいいんだよ。」
「っ…うん。うん。」
―――――――――――――――――――
「カナダ、これ…どうすればいいんだ?」
「あぁ、これはこうするのが一番いいかな。」
「わかった。ありがとう。」
「うん。」
兄さんは可愛いなぁ…あれからすっかり大人しくなっちゃって。
うーん…でも、何か足りないかも。もっと、もっとこうさ…
僕は兄さんをもっと愛したいんだけど…
「あ、フランス。こんな俺なのに仲良くしてくれてありがとうな。」
「大丈夫だよ、アメリカ。ジュは君の味方だよ。」
「ありがとな、これからもよろしく。」
「あぁ、またね。」
え?何でフランスが…?完璧に孤立させたはず…
ふざけないでよ。
「ねぇ、兄さん。何で僕だけを頼ってくれないの?」
「え…だってそれは兄弟だし当たり前じゃ…」
「兄さんは僕が居なきゃ何も出来ないんだよ!僕だけを頼ってればいいんだよ!」
僕は声を荒らげた。久しぶりに大声を出して喉が痛む。
「それは!お前の面倒見がいいだけだろ!どうしちまったんだよ!」
は?何言ってんだよ。兄さんは僕にそんなこと言わない。
(肩を掴む)
「兄さん!」
「何だよ!俺が悪いって言いたいのか!?確かにお前を頼ってた…けど……俺が、悪い…?違う…違うはず…!」
「兄さん、違う。違うんだよ…。兄弟ってよりかはもっと…」
僕は言葉を呑み込んだ。兄さんに嫌われては元も子もない。
「…くそっ!」
衝動的に近くにあった本を床に叩きつけた。
「お前、ちょっと頭冷やしてこい。」
兄さんはそのまま部屋を出た。
終わった。兄さんに嫌われた。
――――――――数週間後…
あれから兄さんが口を聞いてくれない。
同じ部屋にいても、見向きをしてくれない。
「どうしよう。このままじゃ…」
このままじゃ、僕は耐えられずに…
「なあ、カナダ。」
「に、兄さん?どうしたの…?」
「やっぱり、お前が居ないと…ダメみたいだ。」
「兄さん…!僕も、兄さんと話せなくて辛かった。」
「…!嬉しい。」
兄さん…!やっぱり僕が居ないと、何も出来ないんだよね。
「2人だけの世界を作ろう兄さん。面倒なものは全部捨てて。」
「あぁ。」
「僕以外を頼っちゃダメだよ?」
「もちろん。」
――――――――――――――
あぁ、幸せだな…
僕ら以外に誰も居ない、素敵で狭い世界。
…でも時たま考える。本当にこれで良かったんだろうか。兄さんだって望んでいないんじゃないか?
まあ、もういいか。兄さんを独占できるなら…
――――――その後…
「なあ、カナダ。最近他のやつのこと考えなくなったよ。 」
「…それでいいよ。兄さんには僕だけいれば十分だから。」
「そっか。」
僕の兄は可愛い。
僕が居ないと何も出来ない。
これからもずっと僕を頼ってね。
「壊れるほど近くに居ようね。」
――――――――THE END
コメント
7件
んばァァ最高最高😘💗
スみっコさんTERRORもやってたんですか...!?!?🇨🇦🇺🇸最高すぎます...😭🫶❤️
兄弟愛を感じる…💕 フォロ失です