この作品はいかがでしたか?
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⚠🌞×🎻🛵
冷たく揺蕩う空気を鼻で吸って感じる。
手が冷えて冬の寂しさを感じる。
体が悴んで不自由さを感じる。
此処で眠ってしまゐたい。
…
「…藤士郎?」
どこから現れたのか、いつもと違って髪を下ろしている彼は静かに僕の手と自分の手を繋ぐ。
なぜ現世にいるのか、今日は仕事だと言っていなかったか、どうして手を握ってくれているのか。聞きたい事は山程あったが普段恥ずかしがって自分からスキンシップを取ろうとしない彼が手を握ってくれた喜びを噛み締めて手を握り返す、
「…晴君が、消えちゃう気がして」
普段ならおはよう、とかこんにちは、とか、挨拶を忘れない彼が突拍子もない事を言い出す事は結構ある。実はこれは恋仲となってから分かった事。でもそれはいつも面白可笑しい方向のものだったりわがままだったりする。例えばお菓子を食べたいから買ってきてだとか、晴君ってガタイいいくせに弱いよね、だとか。前者は許せるが後者は許せん。その弱いのにぐずぐずにされてる藤士郎はもっと弱いんだね、なんて言えば顔を真っ赤にして柔く体を叩かれる。
だからこそ今僕は困惑している。
「どうして?」
ここで「そっか、ごめんね。消えないから大丈夫だよ」なんて言えれば幾分かは良かっただろう、そうすれば彼の不安も少しは拭える。だがそれを僕の研究者魂、或いは本心が許さないのだ。僕の体の根深くにある興味と云う幼心が疑問をぶつける。
「…雪は、怖いんだよ」
また意味のわからない事を言い出す彼に首を傾げる。雪は滑るし車がスリップするし怖い、という意味では無いのは流石に僕だってわかるさ、でもそれならばどうして雪は怖いの?
「晴君、雪の中で寝たいって思ったでしょ、」
はて、そんな事思ったっけか、
…嗚呼そうか、思っていたなそういえば。
自分の中で自問自答とも言えぬ考えに至る。
「…うん、少しだけそういう事は考えたかな」
其れは、不安から来るものではない。只ふと此処で眠ってしまいたいと思っただけ。願うならば愛しい彼と共に。
「…、愛は死んだら続かない、」
「眠るなら死なないよ」
端から見ればどういう会話をしているのだろう、なんて疑問に思う人が多いだろうが、僕も藤士郎も互いの言いたい事はなんとなくわかっている。
眠ると死はイコールではなくニアリーイコール。仮死と死は別物だろう?
「僕、はさ、二人でこのまましあわせに過ごせたら、それでいいかなって思ったんだけど…」
どうやら、僕の愛が重かったみたい。彼も同じ事を考えているだろうと思っていた仮説が思い切り外れた。
藤士郎は何も変わらずこのまま平穏に過ごしたい。僕はずっと二人でしあわせに過ごしたい。
「ずっと、ずーっと、ね。」
「、?」
何言ってんだコイツ、とでも言いたげな視線を向けられる。恋人にその視線向けられるのはちょっと甲斐田でもショックカモ…、
「雪は冷たいし僕こんなとこで死ぬのやだ」
ちょっと意外。
雪の中で眠るなんて幻想的で素敵じゃないか、なんて、芸術的な藤士郎なら言いそうだが予想外れらしい。彼は難しいな。
「…それに、晴君が風邪引いちゃうでしょ、」
「僕が、」
嗚呼、嗚呼、嗚呼!
自分の不安よりも僕の心配が勝っているのか、喜びで胸が高まる、今すぐにでも彼を抱き締めたい、そのまま閉じ込めて仕舞いたい!
僕はなんて幸せ者なのだろう、この愛しき人に出会わせてくれて有難う神様、この人は絶対に離さない、這いつくばってでも、絶対にだ。誰にも彼の隣は譲らない、その紅い唇を今すぐ奪い取って仕舞いたい、
「晴君、今日は何の日か知ってる?」
愛しき彼は僕の考えを見透かしていたかの様に僕の口に紅を重ねて妖艶に微笑んだ
「
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ミ゛。(絶命)