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新しい作品の投稿まで時間がかかりそうなので良ければ過去に付けてた夢日記の内容を脚色したのでも読んでってください。
物語は突然始まる。
そこは閉鎖的な洋館と和館が混ざりあったような場所だった。
僕は幼い少女の姿で、幼い少年と何かから隠れるように暗い襖の中に身を潜めている。
気が付くと僕と幼い少年だけがそこで生き残っていた。
余りにも自然に生き残っている、という考えがあったから記憶には無いけれど恐らくここでは命を懸け無ければいけない何かが起こっていた⋯いや、起こっているのだろう。
なるべく物音を立てないように気をつけながら少年⋯以下からゆうと書き記す。
「⋯ゆう、行こう」
「う、うん。 僕が先に行くね⋯」
声をかけ気を付けながら隠し通路があるので、襖の壁の奥の方へと四つん這いでくらい中を進んでいく。
右、左へと曲がり角で曲がってようやくぼんやりと明かりが見えてきたのでそのままずりずりと四つん這いで進んでいく。
暗い通路を抜けると3畳あるかないかくらいの広さの部屋にたどり着く。
その部屋は一面木造りで、ぼんやりとオレンジ色をした電球の光に優しくてらされている。
少し埃がかかった、それでも綺麗な紅色の振袖に金色の糸で裾から上へと花と龍の刺繍がされている。
僕⋯以下かららいむと記す。
「ら、らいむちゃん⋯これって⋯」
「⋯うん、探してたものだよ」
そう言って小さな手足ではキツいが、着物などを掛けておく道具⋯衣桁からその振袖を引っ張って降ろす。
「けほ、けほっ⋯」
その衝撃で埃が宙を舞って咳き込んでしまう。
目的のものが見つかった僕らは次に行く場所は決まっている。
先程通ってきた道は、忘れてしまったので何かから追われることも忘れてバタバタと足音を立てて調理室へと向かう。
向かう途中で、また先程とは違う襖の隠し通路を通る為にバタバタと音を立てながら向かっていたらふと空間が冷えた気がして、鳥肌が立つ。
今思えば第六感と言うやつだろう。
それでもこの肌がピリピリと冷える感覚は知っている。
つい、振り返ってしまうと立てた音に気がついた何かが通路の奥からこちらへと向かってきている。
何かものかなんて、説明はできない。
本能的にビリビリとこれはダメなやつだ、と近付いたら怖いことに、それこそ⋯死ぬ、と直観的に感じるもの。
実体はあるけどなくて、顔も、姿もこの目で見たはずなのに思い出せない⋯そんなものとしか僕は言えない。
ただひとつ言えることがあるなら⋯何かはとても大きい。
それこそ少年少女が余裕で通れるような襖の奥にある隠し通路が通れないぐらいには。
閑話休題
僕はゆうに声を荒らげて先に行くように急かす。
「ゆう!! 先行って!!」
「で、でもらいむちゃんが!」
「僕ひとりだと、場所が分からなくて調理室に行けないから!」
「⋯!」
そう言うとゆうは振袖を引き摺りながら先に隠し通路に入っていく。
僕はそれに安堵して、ギリギリまで粘って粘って襖を閉める。
中は完全に光が閉ざされて、手探りで隠し通路への入口を探す。
何かは部屋まで入ってきたのか、身体が本能的な恐怖で震えて蹲ってしまいそうになるが探すのを辞めずにいたら見つけられた。
隠し通路へ入ると同時に何かが襖の扉をばん!と音を立てて開ける。
悲鳴をあげてしまいそうになりながら、恐怖からくる涙をこらえてゆうが曲がり角前で待っているのでそこへと向かう。
「っ、! ⋯は、⋯っ! はぁ⋯っ、は⋯っ⋯」
「らいむちゃ、」
「ゆう、っ⋯は、はやくっ、早く行かなきゃ⋯」
若干パニックになりながら、ゆうに先へ進むように急かす。
ゆうは僕を心配しながらも少し早足で四つん這いながらに進んでいく。
ただ、身体の震えが止まってない僕にとっては早くて、途中途中足がすくんでしまったり腕に力が入らずべしゃ、とその場に崩れ落ちてしまうがいわゆる火事場の馬鹿力と言うやつだろう。
無理矢理起き上がってゆうに置いていかれないようについて行く。
通路を抜けると、4階へと向かう階段を上る。
あの何か、はどうやらルールから外れた例外らしく通路を通り抜けて階段付近まで着いてくることは出来たがどうやら上の階には行けないようで僕もゆうも階段の中間地点で腰が抜けてしまう。
「は、⋯⋯⋯っ、⋯⋯らいむちゃん、⋯⋯ぼく立てない⋯⋯」
ゆうより年上なのに役に立てないのが悔しくて、辛くて無理をして立ち上がる。
「⋯っ、⋯⋯案内、して。 僕が、⋯っ、連れてく⋯から⋯」
そう言ってゆうの脇の下から腕を回して肩を組むように立ち上がらせる。
力が入らない人間は、思っているよりも重くて震える脚で無理をしながら階段を上る。
「右に向かって、⋯そのまま真っ直ぐ。」
「うん⋯」
ゆうの言うことを聞きながらゆっくりと調理室へと向かっていく。
道中何か、にすれ違いそうになって物陰に隠れることしか出来なくハラハラしたがやり過ごすことができたらしく無事とは言えないが調理室に着くことが出来た。
「っ、ゆう⋯これ⋯」
「ひっ⋯?! ら、らいむちゃん⋯」
調理室の扉を開けられないようになにかないかと探していたら、ここに放置されていたらしいここの参加者たちの死体がそのまま置かれていた。
何も考えずに、無心で死体のひとつを引きずって扉の前へと置く。
触れた死体は変に生々しく冷たくて、気持ちが悪い。
そのまま我慢していた恐怖がぶり返したのか腰が抜けて息を取り乱してしまう。
「は、⋯っ、? ⋯はぁ⋯っ、う⋯っ、⋯ 」
「らいむちゃん⋯! ⋯ゆっくりいきすって⋯、!」
足元から冷える感覚がして、恐怖で涙がこぼれる。
ゆうはだいぶマシになったのか息を取り乱している僕を落ち着けようと優しく抱きしめてくれる。
人の温かみに涙が溢れて抱き締め返して肩へ顔を埋める。
暫くそのままでいたら、段々落ち着いてきて少し恥ずかしくなる。
「⋯ごめん、ありがとう。」
「ううん、らいむちゃん、⋯燃やそう?」
そう言うゆうに僕は頷き返してコンロに火をつけて振袖を火に近づける。
燃やし始めると、何だかぼんやりとしてきて頭の中で映像が流れてきているような気がしている。
ふわふわとした感覚に飲まれて目を瞑る。
「約束、守ってくれて⋯燃やしてくれてありがとう。」
詳しい内容は覚えていない、ただ、ただひたすらに悲しくて悲しくて涙が溢れる。
ゆうも同じで一緒に涙を零していた。
無意識のうちにお互い手を繋いでいて、気が付いたら振袖は全部燃えていた。
不思議なことに燃えた跡はなくて、灰とかも落ちていなくて⋯まるで最初からなかったように消えていた。
何を話せばいいかわからなくてゆうと繋いでいる手をひたすらに握り返すことしか出来なくて、ふとゆうが口を開く。
「かえろう。」
「⋯、そうだね。」
そう言って、調理室を出るともう何かがいる気配もなく階段から1階までほぼ無言で何も話さず、けれど手だけは離さずに歩いていく。
「⋯、きっと僕らはこのことを忘れられない」
「そうだね、⋯忘れちゃいけない」
もう出口は近く、この館を⋯彼女の、あの振袖の持ち主の夢を抜け出して現実へと戻るのだろう。
それは何だか悲しくて、寂しい。
そう思っていると、ゆうも同じように思っていたのか⋯最初にあった時よりも遠慮なく、素直にものを言えるようになっていた。
「⋯寂しいけど、また会えるよ」
「⋯会えるかな」
「会えるはずだよ⋯だって、ぼくたちこんながんばったんだよ」
ご褒美があったっていいじゃん、と泣きそうな顔でゆうは言った。
ここで目が覚めました。
起きた時僕自身も顔を涙でべしょべしょにしてたのはここだけの内緒です。
夢でも、あんなに体が震えることってあるんですね⋯
閲覧ありがとうございました。