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翌日の日曜日。


俺は地下秘密基地に下り、リビングにあるテレビをつけ地震情報を確認していた。


こちら福岡ではダンジョン・カンゾーの覚醒以降、地震はピタリとおさまった。


まぁ当然だわな。


あの地震はダンジョンによる ”デモンストレーション” が主なのだから。


これで余程のことがない限り、カンゾーが原因で地震が起きることはないだろう。


とはいえ、これから起動するであろうダンジョンは2つも残っており、警戒を怠るわけにはいかない。


その内の1つ、京都にあるダンジョン・イナリの方は使用者権限を取得することができた。


つまり福岡のダンジョンのように、ある程度はこちらで制御することが可能ということだ。


さらにはダンジョン間にリンクを組んだことで、京都の状況がこちら (福岡) に居ながらにして把握でき、問題が起きたときにはすぐに対応できるだろう。


そして、知的生命体であるダンジョン同士連携が組めるということは意外とメリットが大きい。


考えてみてくれ、


これからいろいろな人間がいろんな思惑を抱えてダンジョン内に侵入するのだ。


――問題がおきないわけがない。


そういったときに、客観的観点から意見をくれる存在というのは必要なのだ。


はい、こいつダメー! はい、この人種ダメー! はい、人間の男はすべてダメー! などなど、


短絡的に判断することは少なくなるだろう。






ダンジョンからの情報を元に、自衛隊や公安が速やかに避難誘導していけば大きな混乱は避けられるはずである。


とはいえ、地震の頻度はこれから増していく。


京都には世界遺産をはじめ重要文化財なども多い。


それら仏閣や古い建物などへの被害は免れないだろう。


灯籠や石碑なんかは軒並み倒れてしまうだろうしね。


京都では人的被害よりも、むしろそちらの方が深刻だとおもう。


――文化庁もこれから大変だぁ。


それより心配なのは東京だな。


東京は日本の首都でもあるし。地図で確認してみると、


ま――見事に重要な部分がダンジョンの勢力範囲内に含まれているのだ。


それに福岡や京都と比べて、地震の頻度がかなり高い。


お構いなしにガンガン揺らしているという感じだ。


まあ、東京はもともと地震が多い地域ではあるんだけどね。


ではどうして、その地震がダンジョン起因によるものだとわかるのか?


――ズバリ震源の深さにある。


今回起こっている多くの地震なのだが、震源の深さが通常で起こる地震のおよそ半分なのである。


それで一目瞭然というわけ。


通常で起こる地震での震源の深さが10㎞~50㎞と言われているのに対し、ダンジョン性の地震では全てが10㎞以内と浅いのである。


話を戻すが、その地震で揺れる度に各交通機関が麻痺しているんだよね。


地震による直接被害も然ることながら、物流を中心とした経済にまで影響が出はじめている。


ダンジョンが覚醒を果たすまでには、まだ50日近くもあるというのに、少々やり過ぎではないだろうか。


消防庁や内閣府の防災担当も動いてはいるようだけれど、具体的な方策もあがらず、まさにお手上げ状態である。


さてさて、この先どうなってしまうことやら。


京都のダンジョンであるイナリが定期的に呼びかけているようだが、東京のダンジョンはまったく反応しないという。


肝心のダンジョンと接触できない以上、我々はしばらく様子見となる。






そして何事もなく一週間が過ぎていった。


といってもこちら (福岡) でのことで、ダンジョンが目覚める東京や京都では地震による被害が拡大しつつあるのだが……。


ここ老松神社では明日からの2日間【秋の例大祭】が執りおこなわれる。


神事を盛り上げるため、こども神輿の準備や夜店の手配など、お祭りの方は氏子さん達がしっかりと取り仕切っているようである。


茂さんの方は例祭神事に忙しく、ほとんど顔は出せないだろうということだ。


紗月 (さつき) も今朝から巫女姿で境内をあちこち飛びまわっている。


明日は助勤巫女として友人が一人手伝いに来てくれるそうだ。


参道である石階段の両脇には赤い提灯がズラリと並んでおり、期間中は祭りの雰囲気を盛り上げてくれるだろう。


これを点灯させたら、遠くからでもかなり目立つだろうな。


”から○い上手の高○さん” 夏祭りでの名場面が思い出される。


あちらは階段脇にランタンだったけど……、


ベビーかすてらの夜店も出てるといいな。






そういえば健太郎のヤツどうしたのだろう?


京都から帰ってきて、ここでカレー食べて別れたのはいいけど、それっきりとんと音沙汰がない。


まあ、基礎となる土台作りは終わってるから、その後どうするかは本人次第なんだよね。


師匠といえども親ではないし強制なんかはできない。来ないなら来ないで仕方がないのだ。


いろんな準備で慌しい境内を巡っていると、


「あっ、いたいた師匠~~~。もうくったくたっすよぉ。ちょっと聞いてくださいよ」


一週間ぶりに健太郎がきた。


「お前なー、久しぶりに顔見せたと思ったら愚痴を言いにきたのか?」


それで祭りの準備を二人で手伝いつつ話を聞いていくと、


退院後にするはずだった保険金の受け取り、両親のお墓や仏壇を準備しての法要、遺品の整理、更には高校への復学手続きなど、後見人である祖母と共に昨日まで奮闘していたという。


そうだったのか……。


生きていくと決めたからには、そりゃあ色々とあるわな。


学校も通うんだな。あまり目立たないように頑張れよ。


身体障害者手帳も役所へ返上。


自分が立って歩く姿を見て、再検査してくれた病院の先生もビックリしていたそうだ。


母方の祖父母も涙を流して喜んでいたらしい。


そうかそうか良かったなぁ。


「これもみんな師匠のお陰っす。ありがとうございます!」


「おいおいどうしたー、熱でもあるんじゃないか?」


「師匠、それは酷いっす! マジな気持ちなんすから」


「そうか、感謝してるならしっかりと生きろ。自分に負けるな!」


「はい、あざーす! それと腹減ったっす、飯はまだすかー?」


――相変わらずである。


姿を見せないと思ったら前向きにやってたわけか。


また、みっちり鍛えてやるから覚悟しとけよ~。






「こんにちはー。お祭りですか? 準備が大変そうですね」


神社境内で作業の手伝いをしていた俺に、横から話し掛けてきたのは自衛隊の坂井隊長だ。


今日は装備なしの迷彩服姿だ。


「はい、秋の例大祭ですね。明日から2日間おこなう予定です」


「それは楽しみですね。うちの者にも声を掛けておきましょう」


「おお、それは是非に! ……それでダンジョンの探索の方は順調に進んでますか?」


周りに聞こえないよう、最後の方は声を抑えながら話した。


「いや~、それがなかなかどうして。攻撃がとおらないんですよ」


「そうなんですね……。 時に、コレってどうされてます?」


小指の先ぐらいの鉄のサイコロを坂井さんに見せる。


「ああコレ、よくダンジョンに落ちてますよね。見つけたら一応回収かいしゅうはしています。うちの隊員が机の上に積んでますよ。かわいいとか言って……」


「…………」


「それがなにか?」


「いいですかよく聞いてください。これは魔力が含まれているダンジョン・スチール (迷宮鉄) と呼ばれるものです。正確には覚えてませんが、5%程の割合で鋼やステンレスなどに混ぜて刃物を作ってください。切れ味が格段に向上しますよ。対モンスター戦には欠かせないものです」


「えっ、…………」


坂井さんの目が点になっている。


無言のまま、その場で ”回れ右” をすると自衛隊キャンプのある方へ走り去っていった。


――やれやれ。

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