行動を制限するための鎖がじゃら、と音をたてる。
幾ら身動ぎをしても外れそうのないそれに軽く舌打ちをする。
潔癖症の彼にとって誰が使用したかもわからない錆びた手錠は不快でしかなく、更にカビ臭い地下牢に捕らえられているのなら尚更だ。
先程の丁重に扱えという言葉が嘘のように、味方最大の脅威と言わしめる彼__ゾムは、乱雑に牢へ押し込められていた。
今思えば、全てが不可解だった。
予想よりも少ない敵兵、あからさまな自爆特攻、早すぎる降伏宣言。
その全てが自分達の気の緩みを誘う行為だとしたら、相手は中々の策略家だ。
何故気付けなかったのかとゾムは血が滲むほど、冷たい床に爪を立てた。
「クッ……ソ、狸が、」
武器を取り上げられたゾムにとって唯一の武器は己の拳のみだが、両手を封じられているこの状況では何の抵抗も意を為すことは無い。
ゾムもそれを承知で、頭の回らないこの国のトップが彼等に通信を繋げてくれる事を期待した。