―俺が取り返す。
唐突にその言葉が思い浮かんだ。
毎日が憂鬱だ。
そう感じるようになったのは、いつからだろう。
本当は気付いていた。
でも、気付かないふりをしていた。
気付いたところで気分が悪くなるだけだから。
気付く必要がないから。
でも、それにも限界が来たらしい。
毎日起きるのは辛いし、寝るのも辛い。
生きるのも辛い。
毎日毎日、その繰り返し。
憂鬱、という言葉で表して良いのだろうか。
いつの間にか、自分の周りからは何もなくなっていた。
でも、それもどうでもよかった。
どうすれば辛くなくなるのか。
それだけを考える日々。
手に取るように分かる周りの視線。
教室に入ると聞こえてくるひそひそと話す声。
カッターで刻まれた腕の傷。
何かにぶつかって出来た痣。
全部全部、どうでもよかった。
この辛さから逃げることに、必死だった。
ーおはよ!
今日もまたこいつから声がかかる。
…
hr. 「あれ?もふくーんっ、おはよ!」
こいつはなんなんだ。
どれだけ拒否してもしつこく纏わりついてくる。
「…おはよ、」
怒りを含んだ声で渋々その言葉を返す。
「うん、おはよ!」
正直言って、というか普通に邪魔だ。
こいつを目に入れるだけで腹が立つ。
「わかったから、もう行って。」
「うん!」
無自覚。どう拒絶しようが気付かない。
所謂天然、というやつなのだろうか。
まあ、天然というのは結局ただの馬鹿と同等だけど。
…それとも、全部気付いているけど無視しているだけの計算尽くし野郎か。
ーチャイムが鳴った。
どうやらぐるぐると思考を巡らせすぎていたらしい。2限目が終わったようだ。
ばしゃっ。
冷たい。なんだろうと横を見ると、くすくすと腹の立つ屈託の無い笑みを浮かべながら自分を見ている数人組がいた。
彼奴らの仕業のようだ。
別にそんなことはどうでもいい。
ただやけに腹が立った。
「やめろよ」
ふとそんな声がしてまた横を見る。
あいつの背中がある。どうやら数人組を睨みつけているようだ。
そそくさと教室の外に数人組は出ていった。
「大丈夫?っわ、めっちゃ濡れてんじゃん、」
「大丈夫だから、俺に話しかけないで。」
「…なんで?」
驚いた。今までなら「うーん…わかった」くらいで済ませていたはずなのに、今は食い下がってきている。
少し…いや、かなり面倒だ。
「なんでって…迷惑なの、」
「もふくんに風邪引かれたら困るのっ、 」
はぁ?それこそなんでだ。
「なんで?」
「だって、俺、」
言葉が止まった。どうやら言うのを躊躇しているようだ。俺なんかにどんな言葉を浴びせようと何ら気にすることでもないのに、なにを躊躇しているのだろう。
「何?」
君は、とくべつだから。君
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