失礼します…。
そう呟き、星川さんの体に触れた。
…ファイルの通り、頭部には殴打の痕が見える。けど、内出血も起きてないから死因とは言えなさそうだ。
失血死ではないってさっき言われたばっかだし、えっと…あとは、鳩の餌が付いてるくらいか。
…次にやることと言えば。
少し気が引けたが、倒れている遺体を社長と共に起こしてみた。
加賀美 「…酷いですね、これは。」
葛葉 「はい…」
星川さんの顔がよく見える、すごい苦しそうで、なんか…変な汗かいてるかも。焦ったのか、何かしらで。
あとガムテープが口に貼られている。結構ガチガチで、呼吸するのも難しそう。この感じだと、窒息死が有力かなー。
加賀美 「…窒息か過呼吸辺りですかね」
葛葉 「まぁそれが妥当じゃないっすか?」
2人ではぁと重いため息を吐いて、その場に立ち尽くした。
ある程度の証拠は集まった。あとは色々物を考えてみるだけだ。アリバイも聞くべきな気がするけど…
そう考えていたら、大きく校舎内にその音が鳴り響いた。
もう裁判?捜査の量が大分少なかった。そんな簡単に犯人が分かるのか? 凶器とか、死亡時刻とか、全然分かってないのに。
…でも、行くしかないんだ。
加賀美 「…じゃあ、また後で。」
葛葉 「はい、また。」
少しだけ引きつった笑みで柔らかく手を振った彼に、こちらも雑に手を振った。
慣れだろうか、緊張しない。なんというか、犯人が許せない。今回ばっかりは、明確な殺意を持っていたはずだ。クロは。
…許さない、許せない。今すぐに、突き止めてやる。すぐに。
実際、今の所怪しい人物は1人しか居ないんだから。
早歩きで自分の部屋へと向かい、ドアノブを捻り、ベットの横の壁に手をついた。
するとすぐ、フッと足元の感覚が消えて、地下へ落ちていった。
…あぁ、いや、でも、やっぱりちょっと怖いわ。
そんな気持ちを、離れていく天井を見ながら抱いた。
ボフッと大きなクッションに身を包まれて着地をしたら、すぐに地に降りて目の前の扉を捻った。
…裁判場は、とても明るい黄色や、星で埋め尽くされている。これもきっと、星川さんの色だ。
葛葉 「……ヤバイよな、普通に考えて。」
自分はなんでこんなことをしてるんだろう。
そう疑問を抱きながら、自分の裁判の位置へと足を進めた。
カグ 『では、裁判を始めてください。』
その声と同時に、裁判は始まった。
だが皆、言葉を詰まらせて、裁判場はとても静かだ。
……皆、犯人が分かってるということだろうか。
なら、俺が……
叶 「ねぇ、犯人って夜見さんでしょ?」
言葉を発そうとした時に、その落ち着いた声が響き渡った。
…え、え?ん?あ、…おぉ、叶、早いな凄ェわ。
混乱した頭を整理し、そう彼を雑に褒めることで自分を落ち着かせた。
夜見 「…えぇ〜?なんでですか?」
叶 「だって、おかしいじゃん。色々。」
「ね、葛葉」
葛葉 「え?あ、うん」
いや急に振らないで欲しいマジで。いや、そうだとは思ってたけどよ。
葛葉 「体育館で人を殺せたのは、マジックショーの用意をしてた夜見さんだけだからな?」
叶 「そうそう、分かってんじゃん」
夜見 「えぇーいやいやいや!私じゃないかもしれないでしょ?」
「だってさぁ、死んだ時間分かんないんだよ?」
それはその通り。
死んだ時間を考えるにあたって必要な情報は、
笹木 「う、うち、14時くらいの時に一緒におやつ食べてた!」
不破 「あ、僕多分そのちょっと後に会いましたわ」
…この2人か。
加賀美 「…じゃあ、殺されたのは14時半ほどから15時前ということですか?30分で犯行が出来るとは思えませんが…」
……。
夜見 「その時間なら私、冬雪の部屋に居たから、犯行は出来ないよー。ね!冬雪!」
葉加瀬 「うん、それは事実だよ!」
とのことらしい。嘘をついているようには見えないし…信じるしかないか。
また、最初から考えなくちゃいけなくなった。
弦月 「じゃあ見る場所を変えて、凶器とか考えますか。」
長尾 「うーん、でもあそこに凶器っぽいのあったか?」
三枝 「はい!ナイフが落ちてました!結構小さいし、血がついてる部分から見ても凶器なんじゃないかなーって!」
椎名 「そうやなぁ、それっぽい気ぃするわぁ」
剣持 「…でも、変じゃないですか?」
椎名 「何が?」
剣持 「そんな小さいナイフでやるくらいなら、一思いにグサッとやった方が早いじゃないですか。心的にも。」
月ノ 「あー、確かに…。時間もかかりますしね。」
剣持 「だから、凶器は別のものだと思います。例えば……」
長尾 「はっw 鳩ぉ〜?」
笹木 「なんや剣持、疲れてんじゃないのぉ?w」
剣持 「違ぇよ!w 鳩って意外と凶暴なんですよ?クチバシでつついてきたり、ダニとか撒き散らしたり。」
夕陽 「気持ち悪っ。あでも、それならあの小さい傷も納得するかも。」
三枝 「鳩につっつかれたってこと?」
剣持 「遺体にも鳩の餌がめっちゃついてたし、餌を食べようとしたら人間が下にいたとしたら、そりゃびっくりして攻撃もするでしょうね。」
葛葉 「…えーでも、死因にはならないんじゃないすか?それなら」
剣持 「うん…失血死にはならないとも思いますよ、ダニにアレルギーとかがあったら話は別ですけど。」
叶 「死因ね…。失血死じゃないなら、呼吸困難じゃない?」
不破 「あー、ガムテープガッチガチでしたもんねぇ」
弦月 「…もしかしたら、パニックになって呼吸困難になったのかも。」
椎名 「あー…ありそうやなぁ。」
長尾 「え、でもさぁ」
「そこ分かったとこで、時間はどうしようもなくないか?(笑)」
コメント
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先ほど一気読みしてきました! こういう話大好きです! 最推しの1人の甲斐田さんが死んだ時はガチで悲しかった… 他の推しが死なないと良いです.. 続き楽しみです!
続きありがとうございます😊 まじでおもしろいですー!