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「えっ?
青葉さんの?
って、来斗の彼女のお兄さんなんですかっ?」
本人たちの間で、付き合ってることになってるのかは知りませんけどね……。
真希絵の興味はもう息子の結婚の方を向いてしまったようで、盛んに大吾にカンナのことを訊いている。
大吾に写真を見せてもらい、
「まあー、綺麗なお嬢さんっ。
ほんとうに来斗なんかと、いいのかしらっ」
と真希絵は浮かれはじめる。
「あかり、なにか冷たいものっ。
ほら、なにしてるのっ、大吾さんにもっ」
はいはい、今、淹れようと思ってましたよ。
……やっぱ、この店、カフェにしようかな。
雑貨屋とカフェ、併設のとこ多いもんな、と思いながら、注文をとる。
「なにがあるんだ?」
と大吾に訊かれた。
「大抵のものはできますよ。
毎日、暇なんで、自分でいろいろ作って飲んでいるので」
「……この店の経営は大丈夫か」
薄暗い店内を見回し、大吾は青葉と同じようなことを言う。
「その辺のものを買い占めてやろうか」
いえいえ、結構ですよ、とあかりは大吾にアイスコーヒー、真希絵にグリーンティ、日向にカルピスを淹れてやった。
自分もカルピスを飲む。
「ほう。
器の形も変わっていて、コースターも夏らしい。
お前はなかなかセンスがいいな」
「ありがとうございます」
店の商品とは無関係なところで褒めていただきまして……。
そこで、大吾はアイスコーヒーを一口飲んで言った。
「うん、ここはカフェにしろ。
俺もいつでも来れるし」
……そろそろ誰かに言われるかなと思ってましたよ。
そのまま、大吾と真希絵は話し込む。
「そうなんですか。
寿々花さんに頼まれて、青葉さんの代わりに。
いろいろご面倒おかけしましたね」
としんみり真希絵は大吾に言い、謝っていた。
日向は店の隅に置いていた布でできたおじいさんのお人形と、ポケットに入れていた戦隊モノの人形で遊んでいる。
「それで、俺が付き合おうと言っているのに、お宅のお嬢さん頷かないんですよ」
「まあ、そんなもったいないお話を」
こら、親。
勝手に話を進めようとするな、と思うこちらを見て真希絵が言う。
「だって、あかり。
子どもたちの結婚した相手の家とのお付き合いって大変らしいわよ。
だったら、一軒にまとめていいただいた方がいいじゃないの。
来斗は妹さんと結婚するかもしれないんでしょ?」
……本人たち、海辺で尋問しただけなのに、もう結婚まで話が行っている。
「お母さん。
大吾さんのお母さん、寿々花さんと見た目も性格もよく似てるらしいよ」
あら、と言ったきり、母は黙った。
「大丈夫です、お母さん。
私はちゃんと娘さんを守ります」
と大吾は真希絵の手を握る。
「ありがとう、大吾さん」
今にも、じゃあ、この方にしなさい、と言い出しそうだった。
「あかり」
と大吾がこちらを振り向いて言う。
「お前が青葉を忘れられないのなら、お前の記憶の中の青葉を俺とすり替えろ」
「え」
「あの頃の青葉の写真とかあるか」
「えーと……これだけですが」
とあかりはスマホを取り出す。
「まさかあんな急にいなくなると思わなかったので。
二人でちょっと出かけたときに撮ってもらった写真が一枚だけ」
「どうして、ちょっと出かけて後ろがオーロラなんだ」
さすがはフィンランドだな、と大吾は呟いている。
二人の後ろには緑色の煌めくカーテンのようなオーロラと森が写っていた。
「よし、これを俺だということにしろ」
「え」
「毎晩、これは俺だと記憶に刷り込むんだ」
「嫌です」
それ、余計に青葉さんが刷り込まれそうですし、と思ってあかりは言う。
「大丈夫だ。
すぐ、すり替わる。
すり替わらなくとも、青葉はいつか、俺の愛の力に負ける」
いつ、何処から湧いてきたのですか、その愛。
「青葉見てたら思うだろ。
記憶なんていい加減なものだ。
俺にしとけ。
恋愛ドラマや漫画だって、途中で相手役が交代することもあるだろ?」
あかり、と大吾は今度はあかりの手を握って言う。
「斬新な発言の多いお前といると、無心に地面を掘り起こさなくとも考えがまとまりそうな気がする。
そうだ。
お前と一緒にフィールドワークに行くのも悪くないな」
大吾はあかりをまっすぐ見つめて言った。
「あかり。
今からふたりで呪いの村に行こう」
「……あのー、なんの研究してるんですか? 大吾さん」