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日は過ぎていった。星夏(せいか)は先輩である竣の商品開発の意見を出したりと竣の手伝いをしていた。
その間にも商品企画のプレゼンが行われ、テーマが「コラボのイヤホン」だった。
「そのテーマは自分に任せてください」
と言っていた怜視(さとし)。普段そんな自信もやる気も見せない怜視のその自信とやる気に
上司も怜視に任せようと思っていたが、一応「コラボ」ということなので、相手先のこともあり
企画が良かったとしても、先方に断られたらポシャるので、複数の人に代案を考えてもらっていた。
しかし、当初の予定通り、l怜視の案が第一として通り、怜視が先方に連絡をしたところ
「オッケー出ました」
とのことだったので、怜視の企画で進行することとなった。
「それにしてもよくあんなの知ってたね」
と夕彩が怜視に言う。
「あぁ〜…。ま、たまたまっすね。なんか前にチラッっと見たことがあって。
あんなポップコーン型のイヤホンなんて、印象に残りますよふつー」
そう、今回怜視がプレゼンしたのは「激痛!!ピアスちゃん」という
アニメ化もされたマンガに出てくるキャラクターがつけているという
ポップコーンを模したワイヤレスイヤホン。
耳に入れる部分はシリコン製で、耳につけたときに外に出ている部分がポップコーンになっている。
そしてワイヤレスイヤホンの特色である収納アンド充電ケース。
それがポップコーンのケースとなっている。というものだった。
「たしかに。ま、でもあれはいいね。アニメコラボグッズだから、アニメファンにも需要あるし
普通に可愛いから、女の子の間で話題になれば売れるし」
「っすよね。イヤホンでコラボって聞いた瞬間、自分案件だなって思いました」
「あ。一応私がサブにつくことになったから」
と先輩の青音羽(あおば)が言う。
「うっす。よろしくお願いします」
「うん。あ、で、先方さんとの打ち合わせの日程はどうなった?」
「あ、一応、空いている日の候補を5つほど教えていただけたら幸いです。と送ったところ
最短で明後日ならお越しいただけるということだったので
一応明後日に、対面で、今回の企画の概要と商品の詳細についてお伝えする場を設けようかと」
「オッケー。じゃ、資料まとめてって感じかな」
「了解です」
と怜視の企画も動き出した。竣の企画、いや、そもそもドリンクの企画というのは
基本的に半年から、長くて1年以上かかる長期の商品企画である。
コンセプトは定まっているとはいえ、様々なタイプの組み合わせを試し
社内での評価を確認し、さらには社外で一般の方への試飲で反応、評価を経て
改良したり、そのまま商品としてGoを出したり、と様々な過程を経てようやく店舗に並ぶ。なので
「塩地ー。もし途中でいい感じの、狙えそうな企画の話があれば、全然そっち優先してくれていいからな」
と竣に言われていた。
「でも、一度携わったら最後までやり抜きたいです」
と言う星夏に
「それは自分の企画通して一人前になってから言うんだなー」
と揶揄うように言った。竣の優しさである。
「わかりました。ありがとうございます」
と言いながら竣の商品開発を手伝った。そして怜視にとっては重要な2日後。
「…」
会議室の一室が静寂に包まれていた。
「…えぇ〜っと…。どーゆー状況なのこれ?」
と小声で怜視に聞く青音羽。
「いや…。えぇ〜っと、代理、の方、らしいです」
怜視と青音羽の前にいたのは、前髪が、怜視と青音羽の方向から見て右側が黄色、左側がピンクで
サイドと後ろ髪はその反対で、右側がピンク、左側が黄色の髪をツインテールにした
両耳にピアスが多く、鼻と口にピアスをしたひょっとこの仮面を被った人だった。
「すいません、結愛は性別公開してなくて、私みたいに仮面被ってるわけでもないので
メールなどの文面ではやり取りできるんですが、人前には出れなくてですね。
すいません、めんどくさい設定で」
とひょっとこの面のせいでくぐもった声で言いながら、ひょっとこの人がペコペコ頭下げる。
「あ、いえ。性別公開してないのは存じ上げていたので。あれですよね?女性だから男性の描写がいい加減とか
男性だから女性の描写にリアリティーがないとか言われないため。ですよね?」
と怜視が言う。すると
「おぉ〜。よくご存知で」
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とひょっとこの仮面をしているので表情は変わらないが、少し驚き、感心している様子のひょっとこの人。
「ほんと、よく知ってたね」
と青音羽にも言われて、ギクッっとなる怜視。しかし表情を崩さない。
「…あれですよ。お引き受けしてくださって、これから一緒にお仕事するんですから
お相手の方のことはある程度把握しておかないと、と思って調べただけですよ」
「いや、私も調べたよ?年齢性別非公表ってことも調べたら出てきたし
作品についてもいろいろ見たけど。…そんな情報どこに書いてあった?」
と言う青音羽になんて返していいかわからなかったので
「えぇ〜。今回のお仕事のお話なのですが」
と強引に話を進めた。
土曜日。星夏は高校のときからの親友2人とランチに向かった。
「おまたせぇ〜」
先にいた1人と合流する。
「おぉ〜星夏ぁ〜。おつぅ〜」
「空頼賜(ソラシ)おつぅ〜」
彼女は一州茗楽(イスミラ) 空頼賜(ソラシ)。星夏と同じ黄葉ノ宮高校出身で、同じ大学にも行った親友の1人。
「虹観はー…」
「まだ来てないっぽいね」
「おー…。先店入っとく?」
「そうするか」
ということで先にお店に入っておくことにした。
「いやぁ〜。割とひさびさ?」
「んん〜…。先月会って以来…か、な?」
星夏と空頼賜ともう1人の親友3人は月に最低でも1回は女子会を開いているのだ。
「そっか。最近星夏、割と忙しそうだったもんね?」
「忙しくはーないんだけども。…まー、割と忙しいか」
「んだそれ」
と話していると、星夏がお店に入ってきてキョロキョロしている人を見つけ
「あっ」
っと別に声など出さなくてもいいのに、小さく声が出て
そのキョロキョロしている人に向かって小さく手を振る。
するとキョロキョロしていた人が星夏を発見し歩いてくる。
「おぉーまたぁ〜」
「待ったわ」
と言う空頼賜。
「ごめんやん」
と言いながら空頼賜の横に座る。
「あ、荷物こっち」
と星夏が手を出し
「おぉ〜。さんくすぅ〜」
とバッグを星夏に渡す。
「にしてもさすがショップ店員だけあって、空頼賜も虹観(にか)もオシャレだねぇ〜」
「そお?」
「そんなことぉ〜…ま、あるか」
と自画自賛する虹観。彼女は遠空田(とおくだ)虹観(にか)。
虹観も空頼賜と同様に星夏と同じ黄葉ノ宮高校出身で、同じ大学にも行った親友の1人。
「自画自賛かよ」
「いやぁ〜。ま、アパレルの店員としては?ありがたく受け取っておかねば」
「まあ、たしかにそうか」
「じゃ、とりあえず注文しときますか」
と言って3人であれこれ話し合いながらメニューを見ながら注文を済ませた。
注文をした料理や飲み物が届いて3人で食べ進める。
「最近忙しそうだけど、前言ってた星夏の企画が通ったの?」
と空頼賜が言う。
「ぐっ…」
という星夏の反応に
「これは違うねぇ〜」
と言う虹観。
「なんだ、違うのか」
「いや…。先輩の商品開発の手伝いをしてて」
「へぇ〜。なんの商品?」
「ま、詳細は言えないけど、ドリンク系」
「へぇ〜。出たら教えて?星夏の関わったやつとして買うから」
「まあぁ〜、出るのだいぶ先だけどね」
「あ、そうなん?」
「そ。ま、出る前日に教えるわ」
「頼んだー」
なんて話をして、メインを食べ終え、サイドメニューと飲み物でゆっくりする3人。
「空頼賜はー?」
唐突に話を振る虹観。
「なに急に。話の流れが見えなすぎてなんの話したいのかわからん」
「それな」
「いや、推し?いや、被害者?」
「被害者って言うなよ」
「いや、相手がアイドルとか芸能人ならまだしも、一般人に対してあの行為は、ねぇ〜?」
「なんだよ」
「相手のポツッターとかニャンスタ(ニャンスタグラム)の投稿見て、近くに行って
相手がいなかったら同じ店入って同じメニュー頼んでーとか、もはやストーカーの域でない?
ってなると、相手はもう被害者よね」
「親友に対して言うセリフかよ。てか相手ホストだし。元だけど」
「ホストだって一般人っしょ。元ならなおさら。ね?星夏」
と言われた星夏は、自分のグラスを見て考え事をしており、自分の名前を呼ばれて
「ん?あ、ごめん。なに?」
と上の空だった。
「どしたん?悩み事かい?」
「いや…。空頼賜のストーカー相手ってなんて名前のホストクラブにいたんだっけ?」
「サラッっとストーカー相手って言うなよ。「Run’s On1y」って店の元ナンバー5」
「…だー…よ、ね?」
「ん?」という顔をする空頼賜と虹観。
「いやさ?最近そこのホストクラブのナンバー1って人と会ってね?」
「一希さん?」
「即名前出んのすごっ」
「そう、一希さんって人」
「マジか。あの人稼いでる額エグいからね」
「どんくらい?うん千万(ぜんまん)?」
と虹観が冗談のように言う。すると空頼賜は首を横からに振り
「桁が違う」
と言う。
「…は?」
「億?」
と言う星夏に、深く頷く空頼賜。
「え、ガチ?」
と驚く虹観。
「「Run’s On1y」にいるプレイヤーはレベチ」
「それはレベチだわ。何百万でいいからくれないかなぁ〜」
と言う虹観。その後もホストの話、空頼賜のストーカーの件についてあれこれ話した。
「じゃ、次のカラオケ、誰が1番に歌うかを決めるゲームをしたいとぉ〜思います」
「いえぇ〜い」と手を叩く虹観。
「最終なぁに?ゲーぇ〜ム!」
「またそれかい。楽しいからいいけど」
「じゃろ?今回はー、Super Visualのメンバーの1人と誰が回答を多く合わせられるか勝負ねー」
「うわぁ〜。知らねぇ」
「私も知らない」
「私もそんな知らないからフェアということで」
ということで「最終なぁに?ゲーム」を始めた。
日本が誇るアイドル的人気のスーパーボーイズグループ「Super Visual」のMyPipeチャンネルで
「今流行りの「最終なぁに?ゲーム」をやってみた!」という動画があったので
その動画を再生し、お題だけを確認して3人で書き始める。
簡単に「最終なぁに?ゲーム」を説明すると、いわば連想ゲームである。
あるお題について連想し、連想したものについてまた連想する。
たとえばお題が「お酒」だとしたら「ビール」と連想する。そこにジャンルというものが加わる。
たとえばジャンルが「飲み物」だとしたら「ビール」の後に連想するものも飲み物にしないといけない。
ビールなら炭酸だから「炭酸」、「炭酸」といえば「四ツ葉サイダー」や「ラムネ」「ソラ・オーラ」など。
もしジャンルが「指定なし」だとしたらなんでもあり。
「ビール」といえば「枝豆」とか、「枝豆」といえば「大豆」
「大豆」といえば「豆乳」ーという感じで続ける。
最初にお題、ジャンルとともに回数も指定される。5回だとしたら5回連想する。
そして最終的に辿り着いた回答が合っているか?というゲーム。
個人戦、チーム戦とあり、個人戦は今回星夏たちがやるように、誰かの回答に合わせるというもの。
そしてチーム戦は2人1組、3人1組となり、チームメイト同士で回答が合うか。というもの。
特に決まったルールはなく、発祥もどこからかわからないゲーム。
なので、人によっては「最終なぁに?ゲーム」なんだし。ということで
最後の答えが合っているか否かでゲームを進めたり
連想ゲームで最後が合うわけないということで、途中経過が合っていても(順不同)ポイントとなり
最後の回答が合っていたら5ポイントなどの高得点など、独自にルールを作って楽しんでいる。
星夏たちは途中経過にもポイントを入れるタイプでいつも楽しんでいる。
今回もいつも通り、途中経過にもポイントを入れて、Super Visualの動画の続きを再生して
そのメンバーとの回答がどれだけ合っているかを競い合った。
「はいぃ〜。空頼賜がカラオケ開幕担当ねぇ〜」
結果、空頼賜がカラオケで最初に歌う担当となった。
「いや、知らんて」
「びょーどーびょーどー。でもこのゲームいいよね。
うち(虹観が働いているアパレルショップ「Junk Junkie Junkest」)に新人さん入ったときは
このゲームで盛り上がって仲良くなるんだよね」
「あ、それうち(空頼賜が働いている「Dressing the heart hands」)もやってるわ」
「お、やっぱ?ガッツリ競わずに過程を見て「なんでこれからこれになんの?」みたいな話して
その人の雰囲気とか好きなものとかを掴むいいキッカケになるんだよね」
「めっちゃわかる」
「星夏のとこではやってないの?」
「うちはやってないなぁ〜。入ってくる子がノリいい子とは限らないし」
「あぁ〜。ハラスメントになるのかな?
そーいえばうちに入ってくる子とか、割とみんなノリいい子多いからなぁ〜」
「ま、アパレルはね。私んとこもノリいい子の割合高めだし」
そんな話をし、お会計を
「空頼賜ー、なに歌うの?Super Visual?」
「いや、曲聴いたことはもちろんあるけど、歌えるほどは知らんのよ」
などの話をしながら済ませ、カラオケへと移動した。
空頼賜が開幕を飾り、星夏がカラオケで熱唱している頃
恋斗は家でテレビを見ながらあくびをしながらトランプをいじっていた。
別にマジックの練習をするわけでもないのにトランプの角の部分を弾いていく。
そのズズズズというのがビビビビというのか、密度の高いトランプを弾いている感覚と音が好きなのである。
しばらくそうしてテレビを見てからようやくマジックの練習を始める。
MyPipeでマジックを見ながら、自分でやるとしたらどうやるか。とタネを考えながらやってみる。
「…にしてもこの人の“考えてること読む取る”マジック…。どうやってんだろ…。
ほんとに仕掛けがわかんない…。…あれができたらなぁ〜…」
と呟きながらもトランプマジックやルービックキューブを使用したマジックや
小道具を使用したマジックの練習を行っていた。
怜視はというと、自分の企画が通ったのはこれが初めてではなかったが
今回は特に気合いが入っており、仕事のない土曜日でも
デザインを任せているデザイン会社「Mina Designer studio」の
怜視の案件の担当の丘瀬(おかせ)優歌(ゆか)にメールをしていた。
送られた当の優歌はというと、家族とお昼ご飯を食べた後
リビングでソファーに座ってテレビを見ており、途中で寝落ちし、ソファーを占領しており
「母さん、姉ちゃん邪魔なんだけど」
「普段仕事で疲れてるんでしょ?寝かせておいてあげなさい」
「…へえぇ〜い」
と弟に言われていて
会社のパソコンと同期しているスマホのメールを確認する素振りは一切なかった。
夕方に起きて、スマホを確認する。すると高校時代からの親友からLIMEが来ていた。
メールなど確認せずにその親友からのメッセージを確認する。
その親友とは、優歌の高校からの付き合いの矢本新朝(にあ)で
新朝「今日飲み行かん?」
とのメッセージだった。
「…いつもいきなりすぎんだよなぁ〜」
と呟きつつも
「ま、行くけど」
と言ってソファーから跳ねるように降り、洗面所に行きながら、キッチンで料理をしている母に
「お母さん、ちょっと飲み行ってくるー」
と言う優歌。
「はいはい。夜ご飯はいらないのね?」
「あー…。ちょっと残しといて。夜食にするー」
「はいはい」
洗面所で髪を濡らし、ドライヤーをかけ、髪をまとめて
部屋に行って着替えて軽くメイクをして、もう一度リビングに顔を出して
「んじゃ、行ってくる」
と言って家を出た。待ち合わせ場所の居酒屋へ行くと、すでに新朝がいて、優歌見つけると手を軽く挙げた。
中に入り、テーブル席の新朝の向かいに座る優歌。
「おつー」
「おつー。てか、いつも突然すぎんのよ。前日くらいに言ってよね?髪色のポテンシャルとかあるんだから」
「あーね。ま、とりま頼んで乾杯でもしましょうや」
ということでお酒を頼んで
「乾杯」
「乾杯」
と乾杯した。そしてしばし他愛もない会話をした後
「あ、そうだ。弟がさ?最近さ、生意気にもカフェを溜まり場にし始めてさ?」
と新朝が話し始める。
「へぇ〜。カフェを溜まり場って、オシャレっていうかなんというか」
「だから生意気なんだよ。しかも最近ちょっと話題のカフェなのよ」
「へぇ〜。新朝の弟って高1よね?」
「そそ。優歌の弟も高1だよね?」
「そそ。だから覚えてた。うちの(弟)も高校に上がった瞬間、髪ピンクに染めてさ」
「ピンク。ガチ?」
「ガチガチ。真っピンク」
「すごいな。てか許されるんだ?」
「ま、コーミヤ(黄葉ノ宮高校)だからねぇ〜」
「あ、コーミヤか」
「新朝の弟ってどこ高なん?」
「猫(猫井戸高校)」
「あぁ〜猫か。じゃ、髪色派手にもできないね」
「そ。ほんとは達磨(達磨ノ目高校)とかコーミヤ行きたかったらしいんだけどね。倍率高くて弾かれたらしい」
「あら残念。でもそっかぁ〜。カフェを溜まり場にねぇ〜。さすが高校生って感じだね。流行に敏感」
「いや、うちのは流行に敏感とかじゃなくて、同級生がそこの子だからってだけなんだよね」
「あぁ〜。なるほどね?いいなぁ〜。私らにもそんな場所あったらよかったのにね?」
「ま、だいたいファミレスかカラオケ、それかワックだったな」
「懐かしぃ〜」
「でさ、そのカフェがさ?「moody cat home cafe」?だっけな?っていうんだけど知ってる?」
「知ってるもなにも、そこ(moody cat home cafe)のロゴデザインしたのうち(Mina Designer studio)だよ」
「マジで?」
「マジマジ」
「もしかして」
と新朝は優歌をまじまじと見る。
「あぁ〜いやいやいやいや」
と首を振る優歌。
「残念ながら私では、ない。同僚が作って、私は「お。いいんじゃん?」くらいしか言ってない」
と言って何気なくスマホを見る優歌。するとメールが来ているのにいまさら気づく。
「すごいわ。話題のカフェのロゴを作ってる会社に友達がいるって状況がすごいわ」
「あ、ごめん。1通メール返す」
「ん。ま、それ普通電話で言うセリフだけどな。仕事?」
「んー?そー」
メールを読んでいるため返事が上の空になる優歌。
「休日にまで仕事に追われるって大変だな」
「まー…」
メールを読み終え、高速で返事を打ち込み
メールを返し終えてスマホをテーブルの上に、画面を下にして置く優歌。
「でも社会人なんてそんなもんっしょ」
なんて話していた。
メールを送った当の怜視はというと
もうすでに数回リピートしているアニメをテレビで流しながらマンガを読んでいた。
「…」
マンガから顔を上げて、なにを見るでもない、ただ空間を見て
「…幸せすぎる…」
と二次元にまみれて幸せを感じていた。
ふとスマホに手を伸ばし、画面を見る。するとメールの通知があり、一瞬
仕事…
と思って顔が曇り、眉間に皺が寄りかけたが、自分が送ったメールへの返信だと気づいてメールを確認する。
MDstudio丘瀬
From:MinaDesignerstudio-Okase@hmail.com
宛先:MinaMeetNice-P-Ario1@hmail.com
ご質問の件ですが、現在、原作を元に、こちらで3Dモデルを作成し
工場で、まずはプラスチックでサンプルを作っていただいている最中です。
サンプルが上がり次第ご連絡させていただきますので
申し訳ないのですが、もう少しお待ちいただけたらと思います。
よろしくお願い致します。
との内容だった。
「…ま、そうだよな…」
と納得したが
「…あぁ〜…早く完成品をこの手にしたい…」
と悪役みたいなセリフを吐いていた。
星夏、空頼賜、虹観の3人はカラオケで熱唱したりゆっくり雑談したりした後
話題になっていた「moody cat home cafe」で自慢の紅茶を楽しんで
コンビニでお酒やおつまみ、お菓子やスイーツなんかを買って
一人暮らしをしている虹観の家で家飲みすることにした。
星夏も空頼賜も虹観の部屋着を借りて、くつろぎモードで
「かんぱぁ〜い」
「「かんぱーい」」
と乾杯した。
「虹観ってなんで一人暮らしし始めたんだっけ?」
と聞く星夏。星夏も空頼賜も虹観も、みんな東京生まれ東京育ちで実家は東京もある。
なので星夏も空頼賜も実家から仕事へ行っている。
「んー?単純にめっちゃ寝てたかったから」
とポテイトチップスを食べながら言う虹観。
「…そんな理由だったっけ?」
「そんな理由だった気がする。虹観が一人暮らし始めたって言って星夏と来たじゃん」
「来た来た」
「んでそんときもなんで一人暮らししたん?実家から通えばよくね?って聞いたけど
覚えてないくらいめっちゃバカバカしい理由言われた気がするし」
「バカバカしいとはなんぞ。髪セットしてメイクしてって時間が増えるのだぞ?」
「いや、寝る時間確保したいゆーてたがな」
「いや、ガチで朝の睡眠時間は夜の睡眠時間の倍くらいの価値あるからね?」
「いや、朝の睡眠時間も夜の延長だろ」
と言う空頼賜に
「たしかに」
と笑う星夏。テレビを見ながら笑いながら
他愛もない話もしながら、おつまみを食べながらお酒を飲んでいた。テレビ番組がコマーシャルに入ったとき
「あ、そうだ。私最近さ?マジックバー、バーに行っててさ?」
と星夏が不意に言う。
「バーバー?バーバーってなんだっけ?」
と空頼賜が言いながらスマホで「バーバー」を検索する。
「バーバー、バーバーっておばあちゃんの呼び方じゃないん?」
と虹観が言う。
「あ、バーバーって床屋だって。美容院じゃないやつ」
「え!?この世に美容院以外に髪切るとこあんの!?」
と驚く虹観。
「出た。虹観の世の中知らなさすぎ病」
「え。知らなくね?」
「あれだよ。赤と青と白のクルクル回ってるやつのやつ」
と人差し指を回しながら空頼賜が言うと
「あぁ〜!あれね!」
とわかった虹観。
「でもたしかに東京じゃ見ないかも」
と言う空頼賜。
「あぁ〜…。…た、し、か、に?」
と自分の記憶を探りながら言う星夏。
「ほらぁ〜」
とポテイトチップスで指指すようにしてポテイトチップスを持った手を突き出す虹観。
「いや、でもさすがに床屋くらいは知ってるよ」
と言う空頼賜に「うんうん」と頷く星夏。
「マジ?」
「「マジ」」
とハモる星夏と空頼賜に
「仲良しかよ」
と言う虹観。言われた星夏と空頼賜はお互い肩を組んで
「「仲良しだよ」」
と言う。
「おぉ〜」
と感心する虹観に
「虹観もな?」
と言う空頼賜。虹観は
「えぇ〜?いいんすかぁ〜?」
と嬉しそうにする。
「で?そのマジック見せてくれる床屋に通い始めたんだっけ?」
と空頼賜が星夏に言う。
「違う違う。バー。B(ビー)A(エー)R(アール)のBAR(バー)」
「あぁ、バーね。いや、普通のお酒飲むバーっていえばいいのに」
「その手があったか」
「でもなに。星夏1人で新規開拓するようなタイプじゃないでしょ」
「それな」
「いや、私でなくてね?会社の友達に紹介?してもらって」
「あぁ〜。紹介制の会員制のバー?悪いけど私好きじゃないわぁ〜」
「わかるわぁ〜」
「いや、一緒に行っただけで、会員制じゃ…なかったと…思うけど」
「じゃ、星夏の紹介とかなくても行ける感じ?」
「行けるーんじゃない?たぶん」
「マジックバーってことはマジック見せてくるやつ?」
と言う虹観に
「見せてくるって、言い方」
と笑う空頼賜。
「だってそうじゃね?」
「いや、マジックバー&バーっていうとこで」
「あ、だからバーバーって言ったのか」
「そう」
「&(アンド)くらい言えし」
と笑う虹観。
「まー、そうね?でも最近「マジ?」のこと「マ?」って言うじゃん。「アンド」くらい許せし」
「最近でもないけどね」
と言う空頼賜。
「虹観のアパレルなんてそんな子ばっかでしょ」
「うん。めっちゃ言うね。でも私言うけどね、「ジ」くらい言えよって」
「言うんだ?」
「言うね」
「私も言うわ」
「空頼賜も言うの?」
「言う。二文字ごときを略すのキメェから」
「キメェ」
思わず笑う星夏。
「で?そのマジックバーバーはどこにあんの?」
と聞く虹観。
「略してるやん。真新宿の祭都鈴(まつり)町のほう」
「ガチ?そんなとこ行ってんの?」
「同期の友達が新規開拓するタイプでさ?見つけたんだって」
「へえぇ〜。で?星夏は気に入って通ってんの?」
「通ってるってほどじゃないけどー…。なんかねー、あそこ行くと仕事が捗るんよね」
「なにそれ。マジの魔法じゃん。全国の会社員行きたがるじゃん」
「たしかに。私も行きたい。イケメンいる?」
「イケメンー…ま、いるーかな?てかそう。そこさ?結構そのぉ〜…。あっ、「Run’s On1y」か。
そこのホストさんが来てるみたいでね?そこで一希さん?と会ったんだよね」
「マジ?」
「お、じゃあ、空頼賜のストーカー被害者も来るかもね」
「ストーカー被害者言うな。でも今んところ行ってるって情報ないしなぁ〜」
「そんなとこまで知ってんだ?ストーカー怖ぇ〜」
などと盛り上がって、星夏と空頼賜はそのまま虹観の家で夜を明かした。