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漆黒の雲が広がる夜空。かつて光り輝いていた星々は、まるで何かに飲み込まれるかのように沈黙していた。
パン工場の跡地には、焼け焦げた瓦礫と、乾いた風だけが吹きすさんでいる。
「…ジャムおじさん、バタコさん、チーズ……」
その場に立ち尽くす影が、震える声で仲間の名を呟く。かつてのヒーロー、アンパンマンだった。
彼の頬を流れるのは雨ではなく、決して拭い去ることのできない涙だった。
それは数日前のことだった。
アンパンマンはいつものように、町の人々にパンを配りながら、平和な日々を過ごしていた。
ばいきんまんも相変わらずドキンちゃんと悪巧みをしては、アンパンマンに敗れる日々。
何もかもが、いつも通りのはずだった。
だが、その日…すべてが変わった。
ばいきんまんは、新たな兵器「ダーク・バイオエネルギー」を開発し、アンパンマンを倒すための最終作戦を実行したのだ。
いつもならば、アンパンチ一発で解決するはずだった。しかし、それは違った。
「アンパンチッ!!」
拳を振りかざした瞬間、アンパンマンの体が重くなった。まるで、何かに吸い込まれるような感覚。
「な、なんだ…これは……!」
次の瞬間、アンパンマンの体を黒い光が包み込む。力が、抜けていく。頭が、くらくらする。
「…おまえの力は、もう通じないぞ!ア~ッヒャヒャヒャ!」
ばいきんまんの狂気に満ちた笑い声が響く中、アンパンマンは地面に倒れ込んだ。
その背後で、パン工場が燃え上がっていくのを、彼はただ見ていることしかできなかった。
―― その日、アンパンマンはすべてを失った。
数日後、彼は一人、瓦礫の上に立っていた。
ぼろぼろになったマントが風に揺れ、彼の瞳には光がない。
「…力が欲しいか?」
どこからか、低く響く声がした。
アンパンマンは顔を上げる。そこには、黒い霧のような存在が立っていた。
「おまえはもう、守ることも戦うこともできない。ただの敗北者だ…」
「違う…ぼくは……」
「おまえの正義では、もう誰も救えない。だが…力を求めるなら、与えてやろう」
黒い霧がアンパンマンの体を包み込む。
頭の中で、ジャムおじさんの優しい声が響いた。
「アンパンマン、君は正義のヒーローだよ」
「…違う、ぼくは……ヒーローなんかじゃない……!」
その瞬間、アンパンマンの瞳が赤く光る。
彼の顔は漆黒に染まり、体から黒いオーラが立ち上る。
こうして、「ダークアンパンマン」が誕生した。
「……ぼくはアンパンマン。でも、もう “正義” なんて信じない」
ーー闇に染まったアンパンマンの復讐が、今始まる。