天内や黒井さんが生きていても、灰原が生きていても、傑は離反する。
五条は気づいてしまった。傑は望んでいないんだ。呪術師として生きて行く事なんて。
『君になら出来るだろう。』
『悟。』
『君は、五条悟だから最強なのか、最強だから五条悟なのか。』
『もし私が君になれるのなら、此の馬鹿げた理想も、地に足がつくと思わないか?』
————でも。
もし、五条悟と言う存在と出会わなかったら?
置いて行かれたら寂しい事は、五条が一番知っている。
傑は、『俺達最強。』では無く、『五条悟は最強。』だと言いたいんだろう。『最強。』に、もう、自分は含まれていないと。
確かに、傑が僕になれる事は無い。でも、僕だって傑になれる事は無いんだ。だから、『俺達最強。』なんだ。五条がどれだけそう伝えても、きっと、傑は離反する。
五条悟と言う存在が近くに居る事が、傑は辛いんじゃないか、と。
五条のやろうとしている事。其れは、神隠し事件の任務の時の、呪霊の術式を使って、五条悟と言う存在を、五条悟に関する記憶を、全て消し去る事だった。