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甘々日常就寝編
夕飯の時間。
キルアの家のリビングには、温かい料理の匂いが広がっていた。
テーブルには、
キルア、×××、そしてキルアのお母さん。
お父さんは今日は仕事で遅い。
×××はまだ足が万全じゃないため、椅子に座るのもキルアが少し手伝っている。
「はい、気をつけて」
「ありがとう……キルア」
そんな二人を、ニコニコしながら見ているお母さん。
しばらくは普通にご飯を食べていたが——
突然。
「ねぇ、×××ちゃん」
「……?」
お母さんが、少し真剣な顔で聞いてくる。
「キルアにね……お風呂で、変なことされてない?」
「ぶーーーーっ!!」
キルア、即むせる。
「なっ!?!?!?!?」
「ちょ、ちょっと母さん!?!?」
×××は一瞬きょとんとしてから、慌てて首を振る。
「ち、違います!なにもされてないです!」
「キルア、ずっと壁見てました……」
「えっ……」
「天井も……」
「ちょっと!!言うな!!!」
耳まで真っ赤なキルア。
お母さんは少し安心したように頷く。
「そっか……ならよかったわ」
そして、少し考えるように指を顎に当てて——
「でもねぇ……」
にこっと笑う。
「夜は一緒に寝たほうがいいんじゃない?」
「………………え?」
「………………え?」
キルアと×××、同時に固まる。
「だって、まだ足も不安定でしょ?」
「夜トイレ行くときとか、誰かいたほうが安心だし」
「キルアが一緒なら安心でしょ?」
「ち、ちょ、ちょっと待って!!」
キルアが慌てて立ち上がる。
「そ、それは……!!」
「い、いきなり同じ部屋とか……!!」
×××も顔が真っ赤。
「わ、私も……その……」
でも、お母さんは余裕の笑顔。
「大丈夫よ〜。何もする子じゃないって知ってるし」
「ね?」
×××は少し迷ってから、小さく頷く。
「……キルアが一緒なら……安心、かも……」
「え!?!?!?」
キルア、心臓が跳ねる。
「そ、そんな簡単に……!」
「俺……緊張するんだけど!!」
「ふふ、可愛いわね」
お母さんは楽しそうに笑う。
こうして——
その日の夜、二人は同じ部屋で寝ることになった。
⸻
夜・キルアの部屋
布団は二つ並べて敷かれている。
ちゃんと距離はある。
……はずなのに。
近い。
意識すると、めちゃくちゃ近い。
キルアは布団に正座状態で固まっていた。
「……寝ないの?」
×××が小さく聞く。
「ね、寝る!!寝るけど!!」
「心の準備が!!」
「……ふふ」
×××は少し笑って布団に入る。
しばらく沈黙。
時計の音だけが聞こえる。
すると——
「……キルア」
「ん?」
「一緒にいてくれて……ありがとう」
「……夜も、安心」
キルアは少し黙ってから、照れた声で答える。
「……当たり前だろ」
「俺、ずっとそばにいるし」
その時。
「……あ」
×××が小さく声を出す。
「トイレ……行きたい……」
「え!?い、今!?」
「……ちょっと」
キルアはすぐに立ち上がる。
「じゃ、じゃあ一緒に行く!!支える!!」
「ありがとう……」
二人で廊下をゆっくり歩く。
手をそっと支え合いながら。
戻ってきたあと、また布団に入る。
今度は、さっきより少し距離が近い。
「……キルア」
「ん?」
「……おやすみ」
「……おやすみ、×××」
胸がドキドキして、なかなか眠れないキルア。
でも——
隣から聞こえる×××の寝息に、少しずつ安心していく。
(……守るって決めたんだ)
(ずっと、そばで……)
こうして二人の“初・同室の夜”は、
甘くて、少し緊張して、
とても優しい時間になったのだった。
深夜。
キルアの部屋は、カーテン越しの月明かりだけが静かに差し込んでいた。
二つ並べた布団の上で、二人は眠っている——はずだった。
けれど。
×××は、突然、はっと目を覚ました。
「……っ……!」
心臓が強く跳ねる。
呼吸が少し乱れる。
——夢を見ていた。
交差点。
迫ってくるトラック。
泣いている小さな男の子。
「危ない……!」
「守らなきゃ……!」
夢の中の×××は、必死に走っていた。
怖いのに。
足が震えているのに。
それでも、体が勝手に前に出て——
——ドンッ。
そこで、目が覚めた。
……夢だとわかっているのに。
体はまだ、あの時の恐怖を覚えている。
×××は、布団の中でぎゅっと毛布を握りしめた。
(……また、見ちゃった……)
最近、何度も見る夢。
事故の瞬間。
助けなきゃ、という気持ち。
そして——
本当は、すごく怖かったこと。
「……っ……」
喉が詰まる。
涙が、じわっと溢れてくる。
でも。
(……キルア、起こしちゃダメ……)
×××は必死に声を殺す。
布団の中に顔をうずめて、小さく、小さく泣く。
「……っ……ひっ……」
音を立てないように。
震えないように。
我慢して。
——でも。
それでも、隠しきれなかった。
⸻
「……×××?」
低くて眠そうな声。
×××の心臓が、跳ねる。
(……ばれた……)
キルアは、ゆっくり体を起こしていた。
半分寝ぼけたまま、×××のほうを見る。
「……泣いてる?」
「……ち、違……」
慌てて顔をそらす×××。
でも、声が震えてしまっている。
キルアはすぐにわかった。
「……夢、見たんだろ」
×××は、しばらく黙っていた。
でも——
小さく、頷いた。
「……うん……」
キルアは、そっと近づく。
布団越しに、×××の手を包む。
「……どんな夢?」
しばらく沈黙。
そして、×××は、ぽつりぽつりと話し始めた。
「……事故の……夢……」
「また……トラックが来て……」
「男の子がいて……」
声が震える。
「……守らなきゃって……思って……」
「でも……」
ここで、言葉が詰まる。
キルアは、黙って聞いていた。
手を離さずに。
「……でも、本当は……」
×××の目から、また涙がこぼれる。
「……すごく……怖かった……」
ぽろっ。
ぽろっ。
「……死ぬかもって……思った……」
「足、動かなくて……」
「頭、真っ白で……」
今まで、誰にも言わなかった本音。
ずっと隠していた気持ち。
「……でも……怖いなんて……言えなくて……」
「守れたんだから……よかったって……」
「……自分に言い聞かせて……」
×××は、ついに泣き崩れる。
「……私……弱いよね……」
その瞬間。
キルアは、×××を強く、でも優しく抱きしめた。
「……弱くねぇよ」
低く、はっきりした声。
「……そんな状況で……人を守ろうとしたんだぞ」
「怖くて当たり前だろ」
×××の頭を、そっと胸に引き寄せる。
「……俺だったら……もっとビビってた」
「逃げてたかもしれねー」
「……×××は……すげぇよ」
×××は、キルアの胸に顔をうずめて、泣き続ける。
「……でも……夢で……また怖くなって……」
「……忘れたいのに……」
キルアは、背中をゆっくり撫でる。
「……忘れなくていい」
「無理に強くならなくていい」
「……怖いなら……俺に言え」
「一人で抱えんな」
×××は、少しずつ落ち着いていく。
涙も、ゆっくり止まっていく。
「……キルア……」
「ん?」
「……起こして……ごめん……」
キルアは、ふっと笑う。
「……起こされてねーし」
「彼女が泣いてんのに……寝てられるわけねーだろ」
そして、額をそっと合わせる。
「……もう大丈夫だ」
「俺がいる」
×××は、安心したように、小さく頷く。
「……うん……」
キルアはそのまま、×××を包むように抱きしめる。
離さないように。
「……今日は俺が離さねーから」
「夢、見ても……すぐ起こせ」
「……約束」
「……約束」
やがて、×××の呼吸は穏やかになり、
再び、眠りに落ちていく。
キルアは、その寝顔を見つめながら、心の中で誓う。
(……もう、二度と……)
(あいつを一人で泣かせねぇ)
静かな夜。
二人はぴったり寄り添いながら、
今度こそ、穏やかな眠りにつくのだった。
to be continued…