テラーノベル
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あの日、私は蝉が鳴く声が轟くあの場所で、天使に恋をした。
入水に失敗して、とぼとぼと川辺を歩いていた時、その子はいた。
力強く光り輝く太陽が、その子の髪に反射して、きらきらと艶めいていたのを、鮮明に覚えている。
熱を帯びた白い肌に、澄んだ青色の瞳がよく映えていた。その青い瞳が私を捉えた瞬間、息が詰まった。
とても綺麗で、眩しくて、私の目に映る君が天使に見えたのである。
その子の声を聞きたくて、その子のことが知りたかった。
思わず私は声をかけてしまった。
「_君」
呼び止められた少女は、少しだけ目を丸くしてこちらを見た。
風が吹く。 白いワンピースの裾が揺れる。 遠くで子供たちの笑う声がした。
夏だった。
焼けるような日差しの下だというのに、彼女だけが妙に涼しげな顔をしていて、まるでこの世界の温度に馴染めていないみたいだった。
「何か御用ですか?」
澄んだ声だった。
鈴の音みたいだ、なんて。柄にもない感想が頭を過る。
私は笑った。いつものように、軽薄で、人好きのする笑みを貼り付けて。
「いやあ、あまりにも美しい人がいたものだから、つい声をかけてしまってね」
本来なら、こんな台詞はいくらでも軽く吐ける。 相手が呆れようが、警戒しようが、どうでもよかった。
けれど彼女は違った。
「……変な人ですね」
困ったように笑うその顔を見た瞬間、胸の奥が僅かに軋む。
おかしい。
私はこんな感情を知らない。
他人に興味などなかった。
誰かを知りたいと思ったことも、隣にいてほしいと願ったこともない。
なのに。
「変、かあ。よく言われるよ」
気づけば、もっと話したいと思っていた。
その声を聞いていたい。視線を向けてほしい。ほんの少しでも、この夏の記憶の中に私を残してほしい。
_ああ、本当に。
恋というものは、こんなにも呆気なく人を狂わせるらしい。
なぽりんたん☯️
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コメント
1件
読了しました。ののさん、第2話もとても綺麗でした。 入水に失敗して川辺を歩いてるところから始まるのがもう……重いのに、そこに現れた天使みたいな女の子。白いワンピースに青い瞳、鈴の音みたいな声。対比が美しすぎて切なくなる。主人公が「こんな感情を知らない」って戸惑ってるのも、すごく伝わってきた。 恋に落ちる瞬間って、ほんと呆気ないし狂わせるものだよね。続き、気になります。