その後、屋敷のみんなに、ニキのことを紹介した。
皆ギョッとした顔をしていたけれど、やっぱり俺のことが怖かったようで、どこかほっとしていたような気がする。
ひとまず安心した。
ニキから引き離されたら、どうしようかと思った。
…まぁそんなことはありえないが。
屋敷の奴らは、化け物に捧げる生贄を見るような目でニキをみていた。
憐れむものや蔑むもの、感謝しニキに頭を下げるものまで居た。
「…よかったですね。」
「え?」
「お友達ができて、良かったですね。」
ただ1人、ニキを、俺の友達として見てくれるひとがいた。
布作面をつけており、顔は見たことがない。
しかし1度だけ、窓からの風で布がめくれた時、泣きぼくろが見えたような記憶がある。
写真に写っている、亡き母と同じ位置に。
「…おん、ありがとう。」
柔らかく微笑んで、ニキの元へ戻った。
「ボビーん家、庭だけじゃなくてやっぱ部屋もすごいのな…」
キョロキョロと天井や壁の装飾を見るニキに声をかける。
「ニキ、こっち座って。」
「うーーーわまた高そうなイス………」
「ええからはよ笑」
行動する度に慎重になるニキの姿は、普段じゃ絶対に有り得なくてなんだか愉快だった。
「……で、話って?」
そう、ニキを城内に入れたのは使用人たちに説明することだけが目的では無い。
「…俺な、20歳になったら死ぬんよ。」
ニキは、静かに話を聞いてくれた。
「なんか、年々体調悪なってくらしくて…17くらいになったら、もう歩くこともままならんくなるんて。」
バツが悪くなり、両手を合わせる。
「今まではその、友達も家族も、なんもなかったから平気やったんやけど…………」
ニキの顔が見れなくて、あちこちに目を逸らしてしまう。
「いまは、お前がおるから。」
「お前と会えんくなるのが、こわい。」
ついに目を瞑ってしまった。
あぁ、瞼をあげるのが怖い。
ニキの顔を見るのが、こんなにも怖い日が来るなんて。
「お前を残して死ぬのが……本気で嫌や。」
「ずっと一緒に、おりたい……………」
そっと勇気をだして、目を開ける。
ニキは、焦るでも、拒絶するでもなく、ただ穏やかに笑っていた。
俺の手を取って、愛おしそうに撫でてから、ニキは口を開いた。
「じゃあ、20歳になっても、21歳になっても、ボビーが頑固者のジジイんなって、おれが歯抜けのジジイになっても、ずっと一緒に居ようよ。」
あぁ、こいつはどこまでも眩い。
目が痛くなるほどに、輝いている。
「ずっと一緒に、居れるかなぁ…?」
恐怖で冷たくなった手で、ニキの手を握る。
ニキの手は、すごく暖かかった。
「俺、ボビーの体質克服したし、一緒にいればきっとどこまででも行けるよ。」
こいつと…ニキと一緒にいると、本当に行けるとこまで行けるような気がしてきて、勇気が湧いてくる。
「おん…………ありがとう……」
「最悪や…最近泣いてばっか…」
「いんじゃね?俺らまだ若いんだし笑」
14歳の青年ふたり。
と、神ひとり。
運命を覆す物語が、今始まる――!?
「って言っても現実味帯びねぇし、図書館とか行ってみる?」
「賛成。」
今、始まる?
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