テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第3話:夜明けの足音東の空が、ほんの少しだけ紫がかった灰色に変わり始めていた。
夜と朝の境界線。世界が一番静かで、一番孤独な時間。
冷え切った身体を抱きかかえながら、部屋の中に戻った。温かいお茶を淹れる気力もなくて、そのまま床に座り込む。
生きる意味なんて、やっぱりどこにも落ちていなかった。明日が素晴らしい日になる保証なんてどこにもないし、自分の苦しみが魔法みたいに消えることもない。
けれど。
ほんの少しだけ明るくなり始めた空を見ながら、ふと思った。
「とりあえず、今日をやり過ごすだけでいいや」
立派に生きる必要も、誰かの期待に応える必要もない。ただ息をして、朝が過ぎて、夜が来るのを待つだけ。それすら辛いなら、ずっと布団にくるまっていたっていい。
完璧に直らなくていいし、元気にならなくてもいい。
ただ「死にたいほど辛かった夜を、一つ超えた」ということだけを胸に抱えて、私はゆっくりと目を閉じた。とりあえず、今日のところは、これで合格ということにしておこう。
コメント
1件
遥斗さん、第3話拝見しました……。 夜明け前の、あの色のない空の描写が、心にすごく静かに染みました。床に座り込んでお茶すら淹れられない、その冷たさがリアルで。「完璧に直らなくていい」「今日をやり過ごすだけでいい」って、諦めじゃなくて、一つの優しい答えだと思いました。 重い夜をちゃんと描いてくれる作品、好きです。また読みにきますね🌙