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ひなの
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吾輩は猫
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#シリアス
吾輩は猫
162
最初に弦くんが向かったのは、駅のすぐ近くの本屋さんだった。
保「本屋?珍しいな」
鳴「いや、その…お前、好きだろ。本」
保「……え?」
今なんて?『お前好きだろ本』?つまり…
保「…僕のため?」
鳴「…他に何があるんだよ」
そう言ってぷいっと顔を背けた弦くん。耳、めちゃめちゃ赤いの見えてるで。
弦くんが僕のことを考えて連れてきてくれたのはめっちゃ嬉しい。すぐゲーム屋行くと思っとったのに。
保「ありがう弦くん!」
鳴「…お、おう。そんなにか?」
保「うん!…見てきてもいい?」
鳴「ああ。好きなだけ見てこい」
弦くんにそう言われても、僕はすぐには店に入らなかった。
鳴「…ん?どうした?行かないのか?」
保「……弦くんも、一緒に見よ?」
鳴「…分かった。行こう」
保「……!ありがとう!」
僕は弦くんと手を繋いだまま、店内に足を踏み入れた。
小1時間ほど経ったころ、僕たちは店を出た。僕は、好きな作家さんの新作と、前にミナさんにおすすめされた短編集を買った。
ちなみに、弦くんも僕のおすすめの本を買ってくれた。
保「次はどこ行くん?」
鳴「少し早いが、飯にするのはどうだ?12時とかだと混むだろ」
保「そうやね」
鳴「何食いたい」
保「せやなぁ……ラーメン食べたい!」
鳴「ラーメンか…こっちだ」
弦くんが僕の手を引いて、ラーメン屋さんに連れて行ってくれる。ちゃんと調べたんやろなぁっていうのが分かるくらい、足取りに迷いがない。
ラーメンは、めちゃめちゃ美味しかった。弦くんのおすすめらしい。
次に弦くんが向かったのは、ゲーセンやった。『いつか宗四郎とやってみたかった』と言って連れられたのは、太鼓の⚪︎人。
僕はウォーミングアップとして難しいを選んだ。弦くんも同じのを選んでいた。結果は…
僕はフルコンボを叩き出したものの、弦くんはクリアすら出来ていなかった。実は音ゲーだけは苦手なのを、僕にバレたくなかったらしい。
保「別に隠さんでええのに」
鳴「…だって、ダサいだろ。ボクゲームしかしてないのに、そのゲームすら出来ないって」
保 「ダサないよ、全然」
僕のその言葉に、弦くんが驚きで目を丸くした。
保「僕も弦くんも人間なんやから、出来ひんことくらいあるやろ。あと、弦くんはゲームしか出来ひんことないからな!」
鳴「宗四郎……」
弦くんは少し赤くなった目元を乱暴に手で拭うと、僕の目を真正面から見つめた。
鳴「宗四郎。どうしたら上手く出来るか、教えてくれ」
保「……!もちろんや!」
それから約1時間後。弦くんは簡単すらクリア出来ないところから、普通をクリア出来るところまで上達した。
保「わぁ…!やったな弦くん!」
鳴「ああ。お前が教えてくれたおかげだ」
保「いや、弦くんの才能やって!僕はほんまになんも…」
鳴「いや、お前の教え方が上手かったからだ」
僕たちは数秒間見つめ合ったあと、どちらからともなく吹き出した。
ひとしきり笑った僕たちは、ゲーセンから出た。まだ日は高い。
保「暑いなぁ〜…」
僕は襟元をパタパタさせながら言う。
鳴「そうだな。どこかに入りたいところだが…」
額に浮いた汗を拭いながら弦くんが言った。
不意に、周りを見ていた弦くんの視線が、ある場所で止まった。
保「…イ⚪︎ン?」
鳴「ちょっと、寄りたい」
保「分かった。行こ」
店内はエアコンが効いていて、涼しかった。弦くんがふと、僕の手を離した。
鳴「…ちょっと、その…1人で行動したい」
僕は弦くんの意図が分からなかったけど、僕も丁度したいことが出来たとこやったし。
保「分かった。僕も行きたいとこあるんやけど…」
鳴「じゃあ1時間後、またここに」
保「分かった」
僕はゲームソフトとかが置いてあるエリアに向かった。
理由?そんなん決まってるやろ。
弦くんにプレゼントするためや。付き合って1ヶ月はちょっと過ぎちゃったけど、弦くんやったら許してくれるはず。
僕は棚をじっくり眺める。
弦くん、ソフトはいっぱい持ってるやろうから、キーホルダーとかがいいんかな…いや、それよりヘッドセットとかの方がええかな…
幸い、お金は多めに持ってる(兄貴が⚪︎万円ほどくれた)。ヘッドセットも買えんことはない。頑張ればゲーム機も…いや、流石にいらんか。
保「何にしたらええんや…」
30分後、僕は店の外で頭を抱えていた。
弦くんがほしいものがいっこも分からん…どうしたら…
保「あ」
最初からこうしたら良かったやん。なんでこんな案も思いつかんかったんや…
僕は再びさっきの店に戻り、弦くんへのプレゼントを購入した。
〜さらに30分後〜
保「おまたせー!待った?」
鳴「いや、今着いたところだ」
1時間前に居た場所に戻って合流した僕たちは、あのカフェに行くことにした。弦くんが、あっちの方が都合がいいって言うたからや。
都合ってなんやろ…?
いつもの席に落ち着いた途端、弦くんが僕の方を向いた。
鳴「宗四郎」
保「何?」
鳴「これ…」
そう言って弦くんが鞄から取り出したものは、キレイな薄紫色の包装紙に包まれた、僕の手のひらより少し大きめの薄い箱だった。
保「…くれんの?」
鳴「ああ」
僕は、弦くんの手から箱をそっと受け取った。
保「…開けてもええ?」
鳴「ああ」
丁寧に包装を解く。中から出てきたものは…
保「…これって」
鳴「お前、前欲しいって言ってただろ」
僕がいっつも聞いてる歌い手さんのCDやった。前言うてたって、ほんま中学のときとかやのに。
弦くんは恥ずかしいのか、そっぽを向いている。
保「…ありがとう!めっちゃ嬉しい!」
鳴「そうか。…良かった」
僕の声を聞いて、弦くんがこっちを向いて、安心したように笑みを浮かべた。
鳴「そうだ。あとこれもやる」
保「?」
今度は大きい紙袋を渡してきた。袋には、あの有名店のロゴが入っている。
鳴「お前に似合うと思って」
中を見ると、服が何着か入っていた。
保「これ…弦くんが選んでくれたん?」
鳴「ああ」
一着取り出してみる。白地の服で、胸ポケットにあの国民的キャラクターがプリントされていて、背面には、筆記体で何やら書かれている。
保「なあ弦くん。これ、なんて書いてあんの?」
鳴「…自分で調べろ」
弦くんはまたそっぽを向いてしまった。ちなみに、チラッと見える耳は赤い。
帰ったら調べよ
保「あ、そや。僕も弦くんに渡したいもんがあんねんけど…」
鳴「ん?」
僕は鞄の中から、薄桃色の包み紙で包まれた箱を取り出した。
保「はい、これ」
鳴「…開けていいか」
保「ええよ」
弦くんは僕から箱をそっと受け取ると、丁寧に包み紙を剥がした。
鳴「これ…」
僕が弦くんに選んだのは、ヘッドセット。弦くんが持ってるのと被らんようなデザインで、なおかつ弦くんに似合いそうなやつ。
鳴「…くれるのか?」
保「当たり前や」
鳴「…!ありがとな、宗四郎!」
弦くんの表情がパッと明るくなった。こんな喜んでもらえると思わんかったわぁ…
保「あと、良かったらこれも」
僕はキレイにラッピングされた袋を取り出した。
弦くんは、僕から袋をそっと受け取ると、ゆっくりと紐を解いた。
鳴「……!」
僕が選んだものは、小分けのチョコレートだった。
保「ゲームしながらにでも食べてくれたらなぁ、思て」
鳴「そんな片手間で食べる訳ないだろ!…帰ったら、大切に食べる」
保「…!ありがとうな、弦くん!」
僕は弦くんにぎゅっと抱きついた。弦くんは少し驚いたみたいやけど、そっと僕の背中に手をまわしてくれた。
鳴「ボクの方こそ」
保「…なぁ弦くん。なんで急にプレゼントくれたん?」
抱き合ったまま、僕は弦くんに問うた。
鳴「…ちょっと過ぎたけど…1ヶ月、だろ。ボクたちが付き合って」
保「……!覚えとってくれたんや…」
鳴「…忘れる訳ないだろ」
ふふ、弦くん照れとるわ。かわええなぁ…
鳴「…宗四郎のこと、大好きなんだから」
保「っ……!」
あぁ、僕は幸せもんやな…こんな彼氏がおって。
ぎゅっと抱きつく力を強める。
これからも、ずっと一緒に居れたらいいな。
保「僕も大好きやで、弦くん」
コメント
5件
1010いいねはもらった!! 口角あがりすぎて天井に突き刺さっちゃった 助けて

思いやりに溢れた鳴海と保科の初デート。読んでいてほっこりしました!今回で最終話なのが寂しいですが、幸せな2人を見れて良かったです😆いいね、多めに押しときました。ひなのさん連載お疲れ様でした!次回作も楽しみにしてます!!!
ひなのさん、最終話お疲れ様でした!弦くんと宗四郎くんの初デート、本屋さんから始まるあたりがもうお互いをよく分かってる感じでにやにやしちゃいました。音ゲーで弦くんがめちゃくちゃ苦戦してるギャップ萌え…!二人ともお互いにプレゼント用意してたのが本当に尊くて、抱き合って「大好き」って言い合うシーンはもう最高でした。1ヶ月記念のプレゼント交換、覚えてた弦くんの不器用な優しさに胸が熱くなりました。幸せな二人をありがとうございます!