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『消えたステージ、君の隣』
第2話 ” 秘密 ”
授業中。
黒板を写すフリをしながら、
ユナは隣を何度も見てしまっていた。
本当にハヌルだ。
横顔も、
低い声も、
長い指も。
全部、画面越しに何十回も何百回も見てきた、あのイハヌルそのままだった。
でも、違った。
テレビの中の彼は、
もっと眩しくて、
もっと完璧だった。
今のハヌルは、どこか壊れてしまいそうな雰囲気をまとっていた。
「……そんなに見る?」
突然、小声で言われる。
ユナの肩が跳ねた。
「み、見てない!」
「見てた。」
ハヌルは少しだけ口元を緩める。
その笑顔に、
ユナの心臓が一気にうるさくなる。
” やばい。 “
” ほんとにやばい。 ”
すると前の席の女子たちが小声で騒ぎ始めた。
「絶対あのイハヌルだよね?? 」
「でもなんで転校?」
「芸能界辞めたって噂あったじゃん」
その瞬間、
ハヌルの表情がスッと消えた。
空気が冷える。
ユナは思わず口を開いた。
「……静かにして。」
クラスメイトが驚いて振り向く。
普段あまり強く言わないユナが、
珍しく怒ったからだ。
「本人の前でそういう話、失礼だから。」
しん、と教室が静かになる。
ハヌルは少し目を見開いた。
そして授業が終わり、
休み時間。
ユナが机に突っ伏していると、
頭上から声が落ちてきた。
「なんで庇ったの、」
顔をあげると、
ハヌルが立っていた。
近い。
近すぎる。
189cmあるせいで、
立っているだけなのに圧がすごい。
「……別に。」
「可哀想だったから…。」
ハヌルは数秒黙る。
その後、ふっと笑った。
「変わってるね。キムユナ。」
” 名前呼ばれた “
その事実だけで、
ユナの顔が熱くなる。
すると突然、
廊下の方が騒がしくなった。
「え!?」
「記者じゃない??」
「うそ、!学校まで来てる!!」
窓の外を見ると、
校門前に人だかりができていた。
カメラ。
マイク。
スマホを向ける人たち。
ハヌルの顔色が変わる。
次の瞬間。
ガタッ__
彼は立ち上がると、
そのまま教室を飛び出した。
「ハヌル!」
気づけばユナも追いかけていた。
階段を駆け下り、
人気のない旧校舎裏へ。
そこでようやく、
ハヌルの背中を見つけた。
彼は壁に手をついて、
苦しそうに息をしていた。
「……大丈夫?」
ゆなが近づく。
するとハヌルは、
低い声で言った。
「俺、もうああいうの無理なんだ。」
初めて見る弱った姿だった。
テレビでは絶対見せなかった顔。
ユナは胸が締め付けられる。
「……なんで急に消えたの?」
静かな沈黙。
風邪だけが通り過ぎる。
やがてハヌルは、
ゆっくりユナを見た。
そして__
「俺が消えた理由、」
「知ったら多分後悔するよ。」
その目は、
なぜか泣きそうだった。
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