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小さい頃の話だ。
ある日突然、空き家だった隣の家に人が越して来た。
いつの間に人が住めるようになっていたのかは知らないけれど、その引っ越してきた人は人当たりの良さそうな男性だった。
「隣に越してきた者です、」
インターホンから聞こえてきた声は、優しくて、俺より少し低かった。
お母さんがドアを開けるのについて行くと、そこに見えたのは長い黒髪のお兄さんだった。
『おにーさん、名前なんて言うの?』
こら、とお母さんからの牽制が聞こえたけれど、無視して返事を待つ。
目を見開いたお兄さんがこっちを見て
俺の前にしゃがんで教えてくれた
「…悠佑って名前やで、これからよろしくなぁ♪」
それから数ヶ月が経って、今では幼馴染と言っていいほど仲良くなった。
『お母さん、あにきの家行ってくる!』
インターホンも押さずに、もう見慣れてしまったドアを引く。
『あにきー?』
「お、りうらやん」
あの時は、悠佑くんとか、悠くん呼びだったけど
今はもう、あにき呼びになっていた。
『今日のご飯何ー?』
「今日はロールキャベツやで、りうらんちが好きなやつ♪」
『え!あにきも作れるの!?』
「当たり前やろw」
度々、あにきの家に泊まりに行くこともあった。
俺もあにきを信用していて、あにきもきっと俺のことを信用してくれていたと思う
泊まった時は、朝一緒に起きて、ご飯を食べて。
あにきは俺より後に学校に行くから、あにきに準備を手伝ってもらって。
『あにき、ん!』
「んふっはッw今日もなw」
最後に、冬の間はマフラーをきゅっと結んでもらう。
「ほら、頑張って行ってこい!((ポンッ」
『いってきますっ!!』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あんなに、信用していたのに。
数年経ったら、あにきはいなくなった。
厳密に言えば、引っ越して行った。
もちろん、行かないでって泣いて縋ったけど
これはもう変わらない事実で。
今はもう、そう思っていたことも忘れていた。
現在俺は大学2年。
あれから何年もの月日がたっている。
友達もいて、放課後にふらっとカラオケやら出掛けることも多い年頃で、もう立派な大人と同じ。
……あの頃の「あにき」と同じくらい。
そう思って、いつも通り友達と街中をぶらぶら歩き次はどこ行こうかと話していた時
目の前に綺麗な金髪の入った長髪が映りこんだ
『…え』
思わずその人の腕を掴む
何か言っている友達には目もくれずに、目の前のこの人に釘付けになる
「っちょ、誰です…か……」
『…悠、佑ッ、?』
『……俺の、……好きな人っッ、』
「…お前、まさか」
「りうらか?」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『あにきー、起きてよ〜…』
「…ん、ぅーん、…」
『ほらほら、ご飯だよ、』
「ぁい、」
あの日、俺が見つけたのは間違いなくあにきだった。
悠佑、俺の大好きな、運命の人。
『あにきほら、ネクタイ忘れてる!』
「おわ、そうやった」
きゅ、と慣れた手つきでネクタイを締め、ジャケットと上着を羽織る。
俺はクローゼットからマフラーを取り出して、あにきの首に強引に巻き付けた。
「お”い急に…!w」
『寒いんだから付けていかないと、w』
扉の前で少し長めのフレンチキスをして、名残惜しく離れる。
『…頑張って行って来てね、♪』
「おん、行ってきますっ、!」
少し頬を染めて外に足を踏み出す彼は、あの時よりも輝いて見えた。
Fin.