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楊貴館のグルーミング室は
あたしのお気に入りの場所だった
午後の陽ざしが温かくなる頃
一晩酷使した体を
癒しに女達はやってくる
「ユカ様は
本当にすばらしい
肌をされていますわ 」
グルーマーのマダム純子が
お世辞を言いながら
香料入りの蝋を垂らし
あたしの脇毛を脱毛している
蝋を剥がす時は
少しヒリヒリするが
普通にカミソリで
剃るよりずっと滑らかになり
しかも繰り返すと
毛根が死滅し
永遠に生えてこなくなるらしい
学園では大勢の子供と
手早く入浴してサッと
T字カミソリで
剃るだけだった
学園生活とここは
月とすっぽん
地面と宇宙ぐらいの
違いがあった
そしてあたしは
ここの贅沢な生活に
あっさり馴染んでしまった
男と寝る以外は
自分の体をすみずみまで
手入れするのが
あたしは好きになった
ここのグルーミングルームは
どこの一流エステよりも
最高級の材料を使い
オーナーのミスヨーコは
できる限りの贅をつくし
あたし達を甘やかした
だってあたし達は
商品だから
誰よりも美しく
官能的でなければいけない
つるつるになった
ワキの仕上げに
汗浸みでうっすらと着色した
色素をホワイトニングする
真珠のような脇を
なめまわしたいという
客が以外に多いことに
最初は驚いたけど
そこは
あらゆる趣味嗜好に
答えるのがここだ
脚も同様に
つるつるにしてマダムが言った
「さぁ仰向けになって
下のおぐしも整えましょうね」
うっとりとマダムが
あたしの陰毛に
トリートメントを塗る
「本当にここの毛も何て
柔らかいのでしょう
子猫の毛並のよう
でも少しカットして
幅を整えますね 」
「別に整えなくてもいいのに」
あたしは全裸でぶっきらぼうに
言った
ここに来てから
何かにつけて裸同然で
ウロウロするのも慣れてきた
本当に我ながら
自分の順応性に感心する
「つるつるのアソコは
男は一目見ると欲しくて
しょうがなくなるのよ
肛門まで綺麗に脱毛するべきね
あたしのように 」
セリナさんがガウン姿で言った
あたしのベッドの後ろで
雑誌を読んでいる
「誰か肛門って言った?」
あたしの横で同じく裸で
グルーミングを受けている
亜嵐(アラン)が
体を起こして聞いた
「肛門って言葉に
反応してんじゃないわよ!
ゲイ野郎! 」
セリナさんが
冷ややかな視線で言った
「ひっどい!
誰?このサド女をここに入れたの!」
今あたしの横で憤慨している
亜嵐はスラッと背が高く
なんと男娼だった
豊かな黒髪に巻き毛が
目にかかるととてもセクシーで
長い睫に片耳にはピアス
男とは思えないほど中性的で
彼が日本人なのかどうかも
良くわからなかった
女王様のセリナさんと
男娼の亜嵐は
どちらもこの館の
No1の実力者だった
クォーターのセリナさんと
並ぶとその身長で迫力があり
顏を合わせるといがみあってるけど
二人とも恐ろしく美しく
そして
恐ろしく口が悪い
「あん!お尻にはさわらないでマダム」
「大丈夫ですか?アラン様」
マダム純子が
アランにオイルをたらし
マッサージしながら
心配そうに言った
「うん
大丈夫だけど
夕べの客が・・・・
その・・・・
思ったより大きくて・・・
僕 口で受けるって言ったんだけど 」
アランが低いため息をついて
うっとりと目を閉じた
「聞いてくれなくて・・・・ 」
「まぁまぁそれじゃ
カモミールの軟膏を
患部に塗りましょうね
夜には痛みも引きますわよ 」
さすがここの
女達の体調の世話を
一気に受けているマダム純子は
眉一つ動かさず
アランの卑猥な
会話にも動じず対処する
「あ 僕のココの毛は
ハート型に整えてね 」
セリナさんが舌打ちし
なにやらウクライナ語で
ぶつぶつ言った
あたしはそれを
日本語に訳さなくても
アランをこけおとしたに
違いないと確信した
にぎやかなグルーミング
室のドアが開き
一人の女の子がセリナさんに
雑誌と手紙を渡した
「ユカ!大島の若旦那から
手紙がきてるわよ 」
アランがパッと反応した
「大島といえばっ!
船の上から
手紙をよこしてくるなんて
ああっ幸雄もどうしてるのかな 」
「・・・今頃は・・・
太平洋の上ね・・・・ 」
あたしは手紙を受けとり
目を閉じて
彼を思い出していた
ここに初めて
連れてこられた時
じいさんドクターは
さんざん犯された
あたしの診察をしながら
無遠慮なく指を入れてきて
ミスヨーコにあたしの体を
説明していた
たいへんよい
買い物をしたと・・・・
女の体は言うにおよばず
多種多様だ
あたしは
「下付き」
と言って
同じ女性器でも
膣位置は体の下方にあった
故に腰の角度で
締め付けの強度を調整できるため
男性の射精を
自由自在に操る術を
なんとなくだけど「売り」を
やっていた時に身に着けていた
そして
ここへやってきてからは
さらにその技に磨きがかかった
しかし
信一郎にはなるべく膣の圧迫を
緩めて挑んでいた
だって坊やは少しの摩擦で
イってしまう
どの男性も若いうちは
早漏というコンプレックスを
抱いている
抱かれる時には本能的に
心のスイッチを切り替る
ここに来てから
学んだテクニックだ
快感で男を身もだえさせながらも
心の中ではある場所に避難する
傷つかないように
壊れないように・・・・
自分の美貌と
もって生まれた男を
喜ばせる熟練の技術で生き抜いた
生き抜くためにそうした
そう・・・・
ジョージがそうしてきたように
そうしてきたのに・・・・・
* * * * *
「手荒だと思ったり
やめてほしくなったら
いつでも言ってくれ!
だが一つになるまでだ
その後は止められそうにない! 」
「信一郎様・・・・」
彼があまりにも切羽詰った
表情で言ったので
あたしは
首に手を回し脚を開いて答えてしまった
彼が侵入しやすいように
腰を浮かし体の裂け目に導いた
「ああっユカ!
ああっユカ! 」
3突きで彼は果てた
重ねた心臓がハンマーで
打ち付けるみたいに
跳ねてる
ごろんと横になって
息をあらげ彼はこう言った
「気持ち良かった?」
あまりにもひた向きで
愛されて育った典型の人・・・
人を疑うことなど
まったく知らないまっすぐな瞳
その瞳で見つめられると
自分がとても汚れているように感じる
と同時にこの人を
大切にしたいという感情と
ボロボロに傷つけて
やりたいという
感情がごちゃまぜになる
優しさを求めるには
彼はあまりにも飢えていて
不器用だったけど
本人は愛をかわすことに
果てしない喜びを見出して
いるようだった
彼は私に痛くないかと
せいいっぱい気を使い
あたしはそれをとても
愛しく感じてしまっていた
三度目のSEXの途中
坊やは思いもかけぬスピードで
こなれてあたしの良い所を
さがし突いた
おもわずあたしは
のけぞって叫んだ
彼は驚き
申し訳なさそうに
たちまち体を離した
「ごっごめん!傷つけてしまった!」
「やめないで信一郎様」
もうすぐの所で
引き返されてしまい
あたしは驚きと
共にひるんでしまった
あたしの言葉に刺激され
喉を締め付けられたような
声を出して彼はクライマックスを
向かえた
あたしを残して・・・・
そしてつかの間の静寂のひと時
あたしの胸に顔をもたせ
目を閉じて彼が聞いた
「女もイクのか? 」
好奇心でまっすぐな瞳に
見つめられ
童貞を導くことを楽しんでいる
自分を発見した
大切にされているのが
あまりにも心地よくて
答えてしまった
称賛の目で彼を見つめて言った
「男が上手な時だけ・・・」
「・・・へぇ・・・ 」
彼の耳がほのかに赤くなった
そして彼の顔から率直な
好奇心が消え
なにやら硬い決意が顏に
浮かび上がっていた
「どうすればいいか教えてくれ」
そして彼はあたしの股間に
顔を埋めた
彼は全力を尽くした
:*゚..:。:.
.:*゚:.。
ユカへ
君と初めてあってから
もう1か月が
過ぎようとしてるなんて
時間の流れは
なんと早いのだろう
俺は今
揺れる太平洋の
沈む夕日を眺めながら
デッキでこれを書いているよ
明日の午後はフィリピンの港に
入港する
俺の海の女神
君に謝らなければいけない
初めて君を抱いた時
俺はぶしつけにも
君によかったかと聞いた
でもあれから
俺も色々
船の男衆に聞いたりして
その・・・・
学んだんだ
色んなことを
俺の初体験は
とてもお粗末なものだった
それなのに君は嫌悪の
表情一つ見せなかった
夢を見て情けなく
震える俺を胸に抱いて
慈しんでくれた
あんな風に余裕がない俺を
愛してくれた
そこに1泊停泊して
さらにシラスの大群を追って
南に向かう事になる
この手紙はそこで
君に送るとする
今はまだヤツらの大群には
お目にかかっていないけど
心配することはない
じきに大漁に恵まれる
なんたって
俺には海の女神がついている
初めてあのラグーンで
君を見た時
俺は最初ラグーンをつたって
海からやってきた人魚かと思った
でもすぐ違うとわかった
君には足がついていた
さらに君は
月明かりに照らされて
うっすら輝いていたので
海の女神だと思った
冗談ではなく実際
ここの連中は楊貴館の
レディー達をそう呼んでいる
謝りたいのじゃなく
そうだ
俺は君に心から感謝したいんだ
そして俺は気づいた
ユカ
俺は君を愛してる
日本に帰ったら
一目散に君に会いに行くよ
隣で三助じいさんが
酔っぱらって潰れている
そろそろ彼をそっと吐かせて
寝かせてやるとしよう
それじゃユカ
君に夢で逢えますように
信一郎
:*゚..:。:. .:*゚:.。
「はぁ~・・・
海の男ってなんてロマンチック・・」
となりでアランが
ため息をついた
それで初めて
彼があたし宛の信一郎様の
手紙を盗み見していたのに気付いた
「とても魅力的ですわ!ユカ様
早くお返事を書かないと!
間違いなく彼は
上客になりますわね! 」
同じく横で
はしゃいでいるマダム純子が
あたしに言った
「手紙なんかより
鞭で叩いた方が早いわよ!」
セリナさんが辛辣に言った
「これだから嫌だ!
男をいたぶらないと
濡れない女なんて!」
アランが手首をフリふり言った
「あんたも鞭で叩いてやろうか?」
セリナさんが立ち上がった
「僕に手をだしてごらん!
アンタの頭をケツにつっこんでやる!」
一人はガウン姿
一人は裸の取っ組み合いが始まった
マダム純子は
エステ器具が壊されないように
イソイソと片づけ始めた
あたしは賑やかな
グルーミング室を後にした
ラグーンのある
中庭をフラフラ歩いていた
彼の手紙を持って
前方から土手を洗う
波の音がする
水面に光が踊っている
反射され顏に光がかかる
切れぎれに息を
吸いこむと水の匂いがした
あたしはラグーンの畔にたたずみ
しゃがみこんだ
湿気と新鮮な空気が
あたしの顔と髪に吹き抜けた
親子のイルカはやってきて
いなかった
冷たい風に頭を冷やされ
もう一度信一郎の手紙を
読み返してみる
彼はあたしを愛していると書いた
それは彼の体の中に
あたしが目覚めさせた
感情・・・・
かつて自分にも
覚えがあった
あたしの初体験の相手
牟田さん・・・
彼に初めて優しくされて
あたしは有頂天になり
彼と結婚したかった・・・
それは強い感情だし
心地よいものだった
彼を愛していると思っていた
でも 今ならわかる
それは愛ではない
「・・愚かな人・・・」
風にふかれるまま
手紙をそっと手のひらから離した
手紙はヒラヒラと
ラグーンの水面に沈んでいった
不意に下腹部に痛みが走った・・・・
足の間に指を入れてみる
指の先は血で濡れていた
よかった
月のものがきた
これで暫くは男を相手にしなくてすむ
冷たく吹きつける風に
あたしは自分を抱きしめた
愛とはただ一人のもの
すべてを受け入れるもの
そして・・・
こんなにも切なく
この身を引き裂く
「ジョージ・・・・」
その名前を吐きだし
涙が頬をつたった
生理も一週間も過ぎると
体は徐々に
休んでいた機能を動かしだす
体の不純物をすべて洗い流し
リセットされたあたしの子宮は
また次の排卵をするために
約2週間かけて準備に入る
ようするに
今から1週間は
比較的安全日だ
この期間は稼ぎ時という事になる
憂鬱な気持ちをおさえながら
今は楊貴館のダイニングルームで
朝食を食べていた
ここにきてからクセになった
心と身体が離れてしまう感覚
体はここにあるのに
心だけがどこかに行くような感覚
私は意思の力で
無理やり心を体に戻した
テーブルを囲むのは
10人を超す女達であり
セリナさんと
亜嵐はこの席についていなかった
きっとまだ寝てるのだろう
静かで良い事だ
「ユカ ソーセージいかが?」
小柄で小太りで
愛嬌のある丸顔のミリーがあたしに
ソーセージの大皿をずらしてくれた
夜通し仕事をしていたのであろう
髪はボサボサ
下着姿でだらしがなかった
ミリーはロシア人で
ここに出稼ぎに来ている
もっとも驚いたのは
自分から進んでここで
働いている人がほとんど
だということ
あたしのように
男が作った借金の形に仕方が無くここに
いるのは本当に稀だった
「ありがとう ミリー」
あたしは礼を言い
ソーセージを
よそって彼女に笑いかけた
「ニェ ・ザ・ シュトー 」
ジェスチャーから
彼女がどういたしましてと
言ってる事が分かった
言葉が通じなくても
稀な職種だからだろうか
みんな
仲間意識がみんな高く
いつの間にかあたしは
学園よりここが
居心地がよくなっていた
「いい肌にきれいな顏」
ミリーの隣の
彼女があたしに言った
さとみという女だった
少しこの仕事をするにしては
歳をとっているような気がする
「それにおっぱいもいい形」
右となりの金髪のレディも
あたしを品定めするような
態度で言ってきた
「ありがとう
あなたの乳首もとても綺麗」
金髪レディはフフンと鼻を高くして
ほほえみ
トーストにかじりついた
あたし達は自然と朝食の場で
お互いの体を褒め合い
称えることによって
相手に敬意を払い
お互いの客は取り合わない
という暗黙の了解が出来上がっていた
ここでは
本当にあらゆる趣味嗜好の客に
答えるように
多種多様な女が揃えられている
これだけ色んな女がそろうと
圧巻だけど
朝も早いほとんど
みんなすっぴんの
その顔を見回すと
夜の蝶も昼間は
ごく普通のどこにでもいる
地味な女性となんら変わらない
ような気がしていた
女の臭気で窒息しそうな
ダイニングに
オーナーのミスヨーコが入ってきた
「モーニン!みんな」
みんなそれぞれに
ヨーコに挨拶する
彼女の今日の装いは地味だけど
お金がかかっている
クリーム色の
ツーピースにタイトなスカートは
生地の質が良い
彼女のお尻の形の良さを
ぴったりとアピールしている
緩やかにカールした
髪は艶やかだが
なんと彼女もすっぴんだった
なので笑うと
年相応のシワが見えた
あたしはそれを見て
この人もサイボーグで
はないのだと安心した
王者のようにみんなの顔を
一つ一つ確認しながら
あたしに視線を止め
近づいてきた
「もう体調は大丈夫なの?ユカ」
「ハイ」
あたしは彼女の顔を見れずに
答えた
「そう・・・・
なにかあったら
マダム純子になんでも
相談しなさいね 」
そして耳元で囁いた
「大島様が来月いらっしゃるそうよ
それまでに体調を整えてね
ピルを使うといいわ 」
あたしの顎を優しくなでる
「よくやったわ・・・
彼は貴方に夢中だそうよ
あたしのかわいい子・・ 」
まるで蛇に睨まれた蛙のように
あたしは背筋が凍り
身動きできなくなった
みんなの
注目を一斉に浴びてる
あたしは顏が赤くなるのを感じた
あたしから
手を離すとミスヨーコは踵を返し
女達の注目を集めようと
声を張って言った
「今日は新しい子を
連れてきたの
今日からみんなの仲間入りよ
仲良くしてあげてね 」
新しい話題に
みんなの注目は外れた
ほっとして体の緊張がとけた
そしてみんなの興味は
入口にいる新参者に
注目が行っていた
あたしも
入口に頼りなげに
たたずむ女を見た
信じられなかった
向こうもあたしに気づき
口が綺麗に英語の
「O」の字になった
でもすぐに状況を把握し
感情を隠した無表情になった
マダムが女を紹介した
「今日からみんなと
一緒に働いてもらう
ユウコよ 」
あたしとユウコはお互い
見つめ合った
あたしは驚き
呑み込んだはずのソーセージが
登ってきて吐きそうになった
それをヨーコさんが見て言った
「まぁユカ!孕んだの? 」
口元にハンカチを
当てて言った
視線はユウコから離せない
「まさか 違います」
ユウコの痛いぐらいの
視線を感じる
顏を上げ苦々しげに口元を歪める
おもしろがっているふうでもあった
彼女の眼はなんとなく
ぼんやりしている
唖然として
声も出なかったが
思考を停止した頭の中に
浮かんできたのは
ゼビアスでジョージを
取り合っていた頃のユウコとは
まるで別人だった
すっぴんの彼女は
しっとりした肌の柔らかな
胸と張った腰の女だった
あの頃よりも太っている
そして全身シャネルで武装し
髪を天井につくほど逆立てて
あのショーパブゼビアスを我が物顔に
闊歩していたユウコとは別人だった
ユウコも私がいるのでショックを
受けているのに違いないのに
そんなそぶりは微塵も見せずに
女達に挨拶し和やかに
朝食を食べた
その際一切こちらは向かずに
そっちがその気なら
それでもかまわない
あたしは残りのソーセージを
噛みしめた
ユウコがあたしに話しかけようと
チラチラ盗み見しているのは
以前から気が付いていた
決まって彼女は
あたしがセリナさんや亜嵐達と
一緒にいる時に
そばで一人で
読書したりしているが
じっとこちらの話に
耳を傾けている
そしてついに彼女がそうしたのは
信一郎様がやってくる
二日前の事だった
「知りたい事があるの」
ユウコが螺旋階段の
踊り場であたしにキッパリと言った
「あなたのことは嫌いだし
それはお互い様だろうけど
どうしても腑に落ちないのよ」
なんとも傲慢な言い方に
思わずハラが立ったけど
そこをぐっと抑えた
「あたしも色々言いたい事が
あるんだけど」
ユウコが眉を片方上げて言った
「何? 」
「何でここにいるの?」
あたしは辛辣に聞いた
「ハッ!」
彼女が吐き捨てる
「それはあたしが聞きたいわ
ジョージはどうしたの? 」
「あたしの質問に答えるべきよ
先にあたしが聞いたんだから! 」
彼女を焼き殺せる
ぐらいの目つきで睨んだ
彼女は眉をひそめた
「決まってるじゃない!金よ!
あたしは望んでここに来たの!
ここならどこの風俗よりも
高額な手当で働けるわ
そして・・・・・ 」
彼女が頭を振りピンを外したから
茶色の髪が肩に滑り落ちた
「世界中の金持ちが集まる・・・」
うっとりとユウコは
無造作に自分の髪がいかに
艶やかなのかを確かめるように
眺めながら手櫛ですいた
その間も興味深々で
あたしを観察するのはやめない
「一流の服を身に着けて
一流の男をものにする
これって女として生まれて
最高の贅沢じゃない?
そしてゼビアスのNo1は
ジョージだった
最初のころは・・・・
あなたをどこかの金持ちの
お嬢様だと思っていたわ
あなたはジョージに夢中だったものね」
「あのときはね」
と言いかけて言葉を飲み込んだ
「でももう今は違うわ」
彼女は
そうでしょうねと
うなづきわたしをじっと見る
「ホスト遊びには
金がかかるものよ
私は大阪中の
ホストクラブで遊んでいたわ
あの頃は私の経営するキャバクラも
流行っていたしね 」
彼女は続ける
「でも 経営が傾きかけた途端
慎二は掛け売りであたしを遊ばせたのよ
その借金の額は私が気付けば
恐ろしいぐらいに膨れ上がっていたの
しばらく逃げてはいたけど
慎二は執念深い男よこのままでは
あたしは何処か知らない国へ
売りとばされてしまうわ
だからミスヨーコに連絡したの
助けてもらうためにね
ここで働いて借金を
返しながらあわ良くば
パトロンを見つけようって考え
でもあなたを見てびっくりしたわ
同じ質問をするわ
どうしてこんな所に?」
彼女が体を動かすと
羽織っているガウンの
ビーズがシャラシャラ鳴った
あたしは目の前のラグーンを
見つめて言った
「似たようなものよ」
彼女の目が暗くなり
鬱々と光った
「そうなの?
ジョージは貴方を
気に入ってたわ借金したの? 」
「ジョージがね 」
私に顏を戻して見つめる
その顔は驚愕の
表情が浮かんでいた
「あきれた!
惚れた男の借金の肩代わりに
ここで別の男に抱かれているの?
彼はホストよ
ショージはそのこと知ってるの? 」
心臓の音が早くなってきた
ユウコに痛い所を突かれて
だんだんハラが立ってきた
「どうだろうとあなたに
関係ないでしょ!
金輪際
私のことはほっておいて!」
「借金を返し終わっても
あなたはしょせん娼婦なのよ
ジョージと一緒に
なれるわけないじゃない
それならあたしと一緒にここで
良い男を捕まえた方がいいわよ
身請け代を出してくれるぐらいの
金持ちの男をね
こんな所すぐに出て行ってやる! 」
ユウコが面白がって言う
あたしを上から
下までじろじろ見ている
まるで値踏みするようだ
「ちょっと見ない間に
沢山男と寝たのね
全身色気が漂っているわ
ミスヨーコが貴方を
可愛がってる理由が良くわかる」
「あなたは以前の派手さはないわね」
あたしも負けず劣らず
きつい眼差しで睨んだ
思い出した
彼女のこういう所が嫌いだったのだ
蛇のように執拗に責め寄ってくる
でも彼女は自分で
目的を持ってここへ来た
そこがみじめな
あたしとは違うところだ
強者なら誰しもが持ちうる
サディストとしての
快感を彼女は楽しんでいた
あたしの怒りは増すばかりだった
でも無理にそれを抑え込んだ
もう彼女に話すことは何もない
「ジョージを想って
一人でやる時には言ってね
良い薬があるのよ
一吸いでぶっ飛べる! 」
「死んでもいらないわっ!」
ユウコがケラケラ笑う
カッとなったあたしは
殴りかかってやろうと思った
「あたしにもくれる?」
セリナさんが
右手の螺旋階段から優雅に降りてきた
妖艶な薄笑いを浮かべている
きっと仕事を終えたばかりなのだろう
今の話どこまで聞かれた?
セリナさんの歩き方には特徴がある
まるで1本のロープの上を
猫が歩くようにしなやかに
脚を交互に前に出して
腰をリズミカルに振りながら歩く
今はユウコの前に立っていた
「あなた女王様タイプね 」
「あら ありがと 」
ユウコは張り合うように
ツンとして言った
「女王は二人とはいらないのよ」
セリナの目の奥に
意地の悪い光が宿っている
ユウコが執拗な蛇だとしたら
セリナはいつでも殺すことが
できるのを楽しんでいる
しなやかな豹を思わせる
ユウコにむかって妖艶に笑う
「知ってる?
ここの裏手の山の頂上に
炭火焼小屋があってね
そこに男が一人住んでるの 」
セリナさんが率直に尋ねた
「いわゆる世捨て人よ
村の人間とは接触せずに
鶏や鹿などを狩りし焼かずに
生のまま食らうの
夜は夜ごとあちこちの峰で
月に向かって全裸で吠えまくる
まさに野獣(ビースト)ね 」
彼女はかすかな微笑みを浮かべて
ユーコに顏を向けた
目を輝かせゆっくりと
ユーコの周りを回ってる
彼女を見てまるで野生の
ピューマのようとあたしは
改めて思った
「でも
その男が一年に一度だけ
山から下りて来るのよ
ここで垢を落としにね
身長は1メートル90以上の巨体で
風呂なんか入らない
彼は毛皮を身に着けているから
体中動物の血と糞尿の
匂いがきつすぎてみんな避けて
通るらしいの 」
「それは大変ね 」
ユーコの目は
油断なく動いていたが
表情は強張っていた
「問題は
匂いではないのよ
誰もが彼の相手をするのを嫌がるの
「大きすぎる」ってね 」
口の中が不意に乾いてきた
続きを聞きたく
ないような気さえする
「ある日あてがった女が
その男を相手にした時に死んだそうよ
死因は「子宮内破裂」
発見された時は
二人の交わっている部分からは
血が噴き出して部屋中
ぐっしょりになってたんだって 」
セリナさんはそっけなく言った
なにげない顏で続ける
「でもまだ男はその死んでいる
女相手に腰を振っていて
血まみれで床に倒されて
上半身はだらんとしているのに
突き上げられて
女は人形のようにガクガク
揺さぶられてたんだって
あら?怖がらせちゃったかしら? 」
眉を片方あげる
心底面白がってる
「い・・・今の話とあたしに
何が関係あるのよ? 」
この時点で女王に
刃向かおうとする
ユウコはあっぱれだが
声の響きには張りがなかった
「それが昔話ではないのよ
ちょうどその男が山から
下りてくるのが今月らしいの
みんなが嫌がる客は
新人が相手するって
決まりなのよ
お気の毒様
でも安心して
肛門に指をつっこんでやれば
早く終わると思うわ
これは優しいあたしからの
アドバイス 」
セリナの輝くとび色の瞳が
ユーコの体を眺めまわし
股間を軽く手のひらで
ポンポンと叩いた
ながいことその場に
立っているせいか
今の話を聞いたせいか
頭がクラクラしてきた
ユーコの顔もあたしと一緒で
真っ青に違いない
「えっらそうに!
何よ! 」
ユーコは力を振り絞って
踵を返し去って行った
セリナさんは
ユーコに叫んだ
「それから薬!
欲しい時は言うわ
必ずちょうだいね 」
あたしはゾクっとした
セリナさんの女王として
時折見せる反抗者に対する余裕
かかってくるのなら
容赦はしない
力の差は歴然としている
何しろこっちは生粋のサディスト
だから
階段のお踊り場に
再び静けさがよみがえった
間が耐えられなくて
あたしはすかさず言った
「今の話・・・・
本当? 」
弱々しくたずねた
口をへの字にして彼女は言った
「あら!本当よ
100年前のここらへんの実話!
ということは
ここもそれぐらい
歴史があるってことよね 」
セリナさんは
おもしろそうに笑いながら
まるで他に暇つぶしな物が
転がってないか
あたりを見回していた
助けてくれたのだろうか・・・・?
「あの・・・・・
ありがとう・・・・ 」
あたしは言った
彼女は肩を小さくすくめた
「あたしもジョージはもう
忘れた方がいいと思うわ 」
その声の優しさに絶望を感じた
彼女はニスを塗ったような
艶やかな毛先をゆらし
またあの猫のような優雅さで去って行った